ダンプ・サイト ~秘密組織に入った俺は王都の平和を陰から守る~

あねものまなぶ

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王国騎士団潜入(下)

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王国騎士団 訓練場

王国騎士団の全体訓練に潜入していた矢先に、マルコリーさんも恐れる女隊長に怪しまれてしまった。

「貴方、見ない顔ね」
「うっす、新入りであります!」
マルコリーさんかrは、何か聞かれたら新入りだと答えれば良いって聞いている。
その通りに答えてみたはいいけど、相手の反応はどうだ?

「そうなの? 私の方にはそんな情報は来てないけど...」
ちょっとっ!
予想以上に管理体制が優秀じゃありませんかっ!

マズい、これはまずい。
このままでは俺が騎士団員じゃないことがバレる。
ここは、話を逸らすしか...。

「た、隊長殿は自分に何か御用でありましょうか!」
「え、えぇと...そうね。見慣れない剣筋の人が見えたから気になったと言うか...」
おやおや、たどたどしい喋り...もしや、ここに突破口がありそうな感じ。

「な、成程であります! お見苦しい物を御見せしてしまい、申し訳ありません! 今後とも、精進してまいります! 大変、申し訳ありません!」
捲し立てるようにして、謝ってみる。
俺の推測が正しければ...。

「そ、そんなに謝らないで。君の事を責めてるわけじゃなくて...その騎士団のみんなが使っている剣術じゃないものがあったから、気になっただけ。新人なら納得かな?」
「そうでありましたか!」
「うん、訓練頑張ってね」
巡回に戻っていく女隊長。
なんとかやり過ごしたけど、隊長と話していたからか、目立ってしまった。
潜入捜査としては、マズいだろうなぁ。

あ、マルコリーさんもダニエリーさんも俺に向かってウインクしてる。
という事は、あの対応で問題なかったらしい。
当面は、周りに合わせて剣をぶんぶん振りまくっておこう。



その時、訓練前に聞いた団員全員の声の揃った返事よりも大きい音が聞こえる。
体の芯に響いてくる重低音、これは...爆発音だ。
訓練場の目の前の建物のさらに奥にあるこれまたデカい建物--騎士団本部から煙がモクモクと上がっている。
どうやら、騎士団本部に異常があったようだ。

「おぉ、流石だ」
異常事態が発生したにも関わらず、戸惑うことなく、しかし、眼差しを鋭くし待機する団員達。
彼らは隊長たちの指示を待っているようだ。
女隊長はテレパシーの魔法だろうか、何かの報告を頷きながら聞き、待機してる団員に指示を出す。

「本部に異常事態が発生。1班はこの場に待機。2班は本部の周辺を固めろ。3班は私に続けっ!」
「はいっ」
おぉ、爆発音に負けない大きな音。
もしかして、依頼にあった不穏分子ってのがこの事態に関係してるのか?
お、マルコリーさんが俺に合図を送っている...という事は、一旦、合流するという事か。

女隊長を先頭に、本部になだれ込む団員に紛れて、先輩達に合流。
最後尾から脇道にそれる。

騎士団の白い制服は目立つため脱ぎ去る。
「マルコリーさん、これってもしかして...」
「あぁ、依頼にあった不穏分子って奴だろうな」
マルコリーさんは次の行動を考えているのか腕を組み、目を瞑っている。

「ダニエリーさん、俺達はどうします?」
「そうねぇ、依頼では不穏分子の捕縛ってあったから...理想としては騎士団よりも先に捕まえたいわね...騎士団に捕まったら間違いなく幽閉だろうし。それはクライアントの本意ではないはずよ」
成程。
騎士団よりも先に捕まえるとなると、かなり厳しい気がする。

「よっし、方針は決まった。騎士団への潜入は完了。これから、騎士団の後を付けて、あいつ等よりも先に犯人を捕縛する」
取りあえず方針は分かった。
だが、俺には気になることがある。

「あの、今から言ってもあの女隊長さんが先に捕まえちゃうんじゃないっすか? だって、もうそろそろ本部についてると思いますよ。今から行っても間に合いませんよ」
そう、どう考えても騎士団の方が先に着く。
という事は、犯人も騎士団に捕まる。

「それについては、ダニエリーが」
「お? ダニエリーさんがなんかするんですか?」
俺の言葉にうふふと微笑んでいる。

「私の魔法を使って、騎士団本部の中に直接移動しましょう。と言う訳で、二人とも準備はいいかしら?」
成程、ダニエリーさんは移動魔法、俗にいうテレポートを使えるらしい。
それも、本人を含めて3人も運べるとなると、魔法使いとしては最上級の腕前という事になる。
ますます、ダンプサイトという組織が気になるが、それよりも依頼達成が先。

「おう、俺は捕縛用の武器とか要らないからな。準備はオッケーだ。ジェスターは武器はいるか?」
「いえ、さっきの訓練で使ってた剣があれば十分かなと」
「そういや、女隊長に絡まれてたな。剣を振るのも慣れてるようだし、ここに来る前は何かやってたのか?」
「まぁ、金を稼ぐために害獣討伐を少し...」
魔法の準備が完了したのだろう、ダニエリーさんの足元には紫色に淡く光る魔方陣が広がっていた。
大人が3人乗ってもまだ足りる程度には大きい。

「二人とも、準備できたわ。移動先は、爆発があった本部2階になっているわ。追加情報として、2班、3班が本部に到着。突撃の機会を伺っているようよ。チャンスは今ね?」
「そんじゃ、怪しい奴が居たら捕まえてダニエリーの魔法で帰還。騎士団と出くわしたら頑張って逃げよう!」
作戦とも言えない作戦だが、やることは分かりやすい。
俺達は、ダニエリーさんが作った魔方陣の上に乗り、騎士団本部に移動した。
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