40 / 76
4章 疑惑
40話 転機⑦
しおりを挟む
レシア「シヴァ、しっかりしろ。」
クラスタ「ふふふ、どれだけ呼び掛けても無駄だ。お前の声はコイツには届かない。」
ナーダ「レシア、何か様子が変だよ。」
レシア「シヴァ…まさか。」
シヴァは生気の無い表情をしており、ぎこちない動きで襲いい掛かってきた。レシアは攻撃を受け止めて払い除ける。
レシア「やっぱりそうだ。ナーダ、シヴァはもう…」
クラスタ「ふふふ、気付いたか?そうだ。魂縛り、使者を操る秘伝の技だ。」
ナーダ「死者…じゃあ?」
レシア「そうか…あの一撃で事切れてしまっていたのか…」
痛みも何も無いのか、少々斬られても全く怯む事無くシヴァは襲い掛かって来る。死者を無理やり動かしている所為なのか、動きは単調でぎこちない。
レシア「どんだけ攻撃してもキリがない…動けない様に足を切り落とすしか無いのか。」
ナーダ「そ、そんな…」
クラスタ「お前にそんな事が出来るかな?アサシンだった頃のお前ならいざ知らず、今のお前が知り合いを再び殺そうと言うのか?」
レシア「くっ…出来るっちゃ出来るけど。出来ればしたくないのも事実か。」
レシアはルーンソードの気弾を連発し、シヴァを吹っ飛ばす。それでもシヴァはゆっくりと起き上がりこちらへ向かって来た。
クラスタ「さあ、大人しく殺されてしまうが良い。いけ、シヴァ!」
レシア「…仕方ない。足でも首でも落としてやるしか無い。」
その時、シヴァの動きが止まった。
クラスタ「ん?どうなっているんだ?」
ナーダ「シヴァさん…」
シヴァ「……レ…レシ…ア……」
レシア「…!?シヴァ。」
ナーダ「生き返ったの?」
シヴァ「ナーダ…これで俺を…」
シヴァが何かを投げつけてきた。それは小さなルーン鉱石だった。純度が高いのは少し見ただけでも分かる。鉱石は光り輝き、ナーダに向かって行った。そして、ナーダの首から下げているペンダントに吸収されていった。
レシア「あのペンダントは…ルーン鉱石?俺と同じヤツじゃないか。」
ナーダ「うん。前にレシアにプレゼントした物だよ。あれから私も同じのを見に付けてたの。」
レシア「そうだったんだ…」
クラスタ「どういう事なんだ?シヴァ、奴らを殺すのだ!」
ナーダ「分かる…ルーンの力が共鳴してる。」
レシア「共鳴?そ、そうか。ナーダはルーンナーの修行をした事があったんだよな。」
ナーダ「ちょっとだけ…だけどね。」
シヴァ「その力で俺を…俺はもう…死んで……」
ナーダ「…分かりました。」
ナーダは杖をシヴァに向ける。杖の先とナーダのペンダントが同時に光り輝く。
レシア「何が起こるんだ…」
ナーダ「ルーンは魔除けの力もあるの。この力がクラスタの技を打ち破って、シヴァさんを救ってくれるのが分かる。」
シヴァ「……」
ナーダ「ルーンクラッシュ!」
杖から光が弾け飛び、シヴァを包む。光は輪を作り上げシヴァに吸い込まれる。そしてすぐにシヴァが大きな光に包まれた。
クラスタ「な…何なんだこれは。」
シヴァ「…あり…がとう……」
レシア「シヴァ!」
光が収まった時、シヴァは地面に倒れていた。
レシア「シヴァ、今度こそ逝ったのか…安らかに眠れ。」
ナーダ「シヴァさん…」
クラスタ「く…」
レシア「クラスタ、今度こそ終わりだ。もう逃げ場は無いぞ。」
クラスタ「逃げ場が無いだと?ふふふ、甘いな。逃げ場は作る物なのだ。霧隠れ!」
クラスタは霧に包まれて姿を消した。
クラスタ「今回は見逃してやろう。次は本気で戦わせて貰う。」
ナーダ「どこ…?」
レシア「……クラスタの気配が遠ざかっていく。逃げたのか。」
暫く辺りを窺ったが、クラスタの気配は完全に消え去ってしまっていた。
レシア「…ふう。何とか終わったな。」
ナーダ「そう…なの?私は気配とか分からないの。」
レシア「まあ、実践を重ねた者にしか分からないのかもな。」
ハンターの長であったシヴァが死に、レシア達に隠れる場所はもう無くなったのかもしれない。それでもやるべき事が朧気ながら見えて来ていた。
レシア「あの時にシヴァが言い掛けた言葉…【ダーク・アサシンの正体はブラックの】ってヤツだが。」
ナーダ「でもそのブラックって人は違うんでしょ?」
レシア「そうだな。つまりブラック本人では無いが、ブラックの関係者って事だ。」
ナーダ「関係者って言っても幅が広くない?」
レシア「さらに言えばシヴァの憶測が合っている、という条件付きだしな。でもそれを信じるとしたら、ブラックに聞けば良いって事だ。」
ナーダ「そのブラックって人の居場所は知っているの?」
レシア「ああ。アサシンを引退して形式上は一般人に戻っているが、様々な情報を持っている。一定以上のアサシンであれば、居場所は皆知っている。実際にバダグとブラックの会合に付き添いで行って、会った事もあるしな。」
ナーダ「じゃあ顔も知ってるんだ。」
レシア「勿論だ。あの時はヤツは既に引退してたから、今の俺の状況を知っているかは分からないがな。」
シヴァに向かって手を合わせた。
レシア「シヴァ、後は俺に任せろ。ゆっくり休め。」
ナーダ「俺、じゃなくて俺達でしょ?」
レシア「…そうだな。さっき使用したルーンクラッシュは普通の人間には効果無さそうだけど、魔物にならダメージを与えられそうだったし。戦力アップだな。」
ナーダ「やった。」
レシア「よし、ブラックの住んで居るビルへ向かおう。」
クラスタ「ふふふ、どれだけ呼び掛けても無駄だ。お前の声はコイツには届かない。」
ナーダ「レシア、何か様子が変だよ。」
レシア「シヴァ…まさか。」
シヴァは生気の無い表情をしており、ぎこちない動きで襲いい掛かってきた。レシアは攻撃を受け止めて払い除ける。
レシア「やっぱりそうだ。ナーダ、シヴァはもう…」
クラスタ「ふふふ、気付いたか?そうだ。魂縛り、使者を操る秘伝の技だ。」
ナーダ「死者…じゃあ?」
レシア「そうか…あの一撃で事切れてしまっていたのか…」
痛みも何も無いのか、少々斬られても全く怯む事無くシヴァは襲い掛かって来る。死者を無理やり動かしている所為なのか、動きは単調でぎこちない。
レシア「どんだけ攻撃してもキリがない…動けない様に足を切り落とすしか無いのか。」
ナーダ「そ、そんな…」
クラスタ「お前にそんな事が出来るかな?アサシンだった頃のお前ならいざ知らず、今のお前が知り合いを再び殺そうと言うのか?」
レシア「くっ…出来るっちゃ出来るけど。出来ればしたくないのも事実か。」
レシアはルーンソードの気弾を連発し、シヴァを吹っ飛ばす。それでもシヴァはゆっくりと起き上がりこちらへ向かって来た。
クラスタ「さあ、大人しく殺されてしまうが良い。いけ、シヴァ!」
レシア「…仕方ない。足でも首でも落としてやるしか無い。」
その時、シヴァの動きが止まった。
クラスタ「ん?どうなっているんだ?」
ナーダ「シヴァさん…」
シヴァ「……レ…レシ…ア……」
レシア「…!?シヴァ。」
ナーダ「生き返ったの?」
シヴァ「ナーダ…これで俺を…」
シヴァが何かを投げつけてきた。それは小さなルーン鉱石だった。純度が高いのは少し見ただけでも分かる。鉱石は光り輝き、ナーダに向かって行った。そして、ナーダの首から下げているペンダントに吸収されていった。
レシア「あのペンダントは…ルーン鉱石?俺と同じヤツじゃないか。」
ナーダ「うん。前にレシアにプレゼントした物だよ。あれから私も同じのを見に付けてたの。」
レシア「そうだったんだ…」
クラスタ「どういう事なんだ?シヴァ、奴らを殺すのだ!」
ナーダ「分かる…ルーンの力が共鳴してる。」
レシア「共鳴?そ、そうか。ナーダはルーンナーの修行をした事があったんだよな。」
ナーダ「ちょっとだけ…だけどね。」
シヴァ「その力で俺を…俺はもう…死んで……」
ナーダ「…分かりました。」
ナーダは杖をシヴァに向ける。杖の先とナーダのペンダントが同時に光り輝く。
レシア「何が起こるんだ…」
ナーダ「ルーンは魔除けの力もあるの。この力がクラスタの技を打ち破って、シヴァさんを救ってくれるのが分かる。」
シヴァ「……」
ナーダ「ルーンクラッシュ!」
杖から光が弾け飛び、シヴァを包む。光は輪を作り上げシヴァに吸い込まれる。そしてすぐにシヴァが大きな光に包まれた。
クラスタ「な…何なんだこれは。」
シヴァ「…あり…がとう……」
レシア「シヴァ!」
光が収まった時、シヴァは地面に倒れていた。
レシア「シヴァ、今度こそ逝ったのか…安らかに眠れ。」
ナーダ「シヴァさん…」
クラスタ「く…」
レシア「クラスタ、今度こそ終わりだ。もう逃げ場は無いぞ。」
クラスタ「逃げ場が無いだと?ふふふ、甘いな。逃げ場は作る物なのだ。霧隠れ!」
クラスタは霧に包まれて姿を消した。
クラスタ「今回は見逃してやろう。次は本気で戦わせて貰う。」
ナーダ「どこ…?」
レシア「……クラスタの気配が遠ざかっていく。逃げたのか。」
暫く辺りを窺ったが、クラスタの気配は完全に消え去ってしまっていた。
レシア「…ふう。何とか終わったな。」
ナーダ「そう…なの?私は気配とか分からないの。」
レシア「まあ、実践を重ねた者にしか分からないのかもな。」
ハンターの長であったシヴァが死に、レシア達に隠れる場所はもう無くなったのかもしれない。それでもやるべき事が朧気ながら見えて来ていた。
レシア「あの時にシヴァが言い掛けた言葉…【ダーク・アサシンの正体はブラックの】ってヤツだが。」
ナーダ「でもそのブラックって人は違うんでしょ?」
レシア「そうだな。つまりブラック本人では無いが、ブラックの関係者って事だ。」
ナーダ「関係者って言っても幅が広くない?」
レシア「さらに言えばシヴァの憶測が合っている、という条件付きだしな。でもそれを信じるとしたら、ブラックに聞けば良いって事だ。」
ナーダ「そのブラックって人の居場所は知っているの?」
レシア「ああ。アサシンを引退して形式上は一般人に戻っているが、様々な情報を持っている。一定以上のアサシンであれば、居場所は皆知っている。実際にバダグとブラックの会合に付き添いで行って、会った事もあるしな。」
ナーダ「じゃあ顔も知ってるんだ。」
レシア「勿論だ。あの時はヤツは既に引退してたから、今の俺の状況を知っているかは分からないがな。」
シヴァに向かって手を合わせた。
レシア「シヴァ、後は俺に任せろ。ゆっくり休め。」
ナーダ「俺、じゃなくて俺達でしょ?」
レシア「…そうだな。さっき使用したルーンクラッシュは普通の人間には効果無さそうだけど、魔物にならダメージを与えられそうだったし。戦力アップだな。」
ナーダ「やった。」
レシア「よし、ブラックの住んで居るビルへ向かおう。」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


【前編完結】50のおっさん 精霊の使い魔になったけど 死んで自分の子供に生まれ変わる!?
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
リストラされ、再就職先を見つけた帰りに、迷子の子供たちを見つけたので声をかけた。
これが全ての始まりだった。
声をかけた子供たち。実は、覚醒する前の精霊の王と女王。
なぜか真名を教えられ、知らない内に精霊王と精霊女王の加護を受けてしまう。
加護を受けたせいで、精霊の使い魔《エレメンタルファミリア》と為った50のおっさんこと芳乃《よしの》。
平凡な表の人間社会から、国から最重要危険人物に認定されてしまう。
果たして、芳乃の運命は如何に?


【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】徒花の王妃
つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。
何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。
「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる