33 / 61
1章
33.
しおりを挟む
私は今、アズベリー領主館に来ている。コンドラに迎えられ他の使用人達も並んで頭を下げている。
「ただいま帰りました。長間留守をありがとう」
とりあえず当主らしく振る舞ってみた。
「ミーナ様、おかえりなさいませ。お元気そうでなによりです。エドワード様もようこそおいで下さいました」
挨拶もそこそこに執務室へと向かう
「で、何か問題でもありましたか?」
呼ばれたのだから何らかしらあった筈。そう思い早速話をする事にした。
「ミーナ様、国から連絡は頂いてますが、、、マース領主館は今後如何されるご予定ですか。流石に勝手に判断も出来かねます故、数日おきに様子は伺いに赴いてはおりますが」
・・・すっかり忘れてた。そう言えばそうだった。
「来月になれば社交シーズンに伴ってトーマスやヤックルが王都に滞在するからそのあいだは其方を使って頂きましょう。年明けの爵位の授与式が終われば国から屋敷を与えられるだろうし、それまでにゆっくり考えるわ。今居ている使用人の教育はよろしくね。あの2人の屋敷に勤めて貰う予定だから」
早々と指示を出した。うっかり忘れてたなんて言って仕舞えばコンドラの長いお説教が始まってしまう。
「お忘れで無かったのでしたらお忙しいでしょうから後の事はお任せください。ところでミーナ様は王家主催の新年の夜会は如何いたしますか」
やっぱりこの話もか。新年の夜会は各家の子供達も参加するいわば新年会の様なものだ。正直行きたくない。
「ちょっと考えさせて。まだ、公式の場に出るつもりはないのよね。」
憂鬱だ。叔父と行くにもどうせすぐにその辺に放置されて好奇心の目に晒されるだけだし、かと言ってずっと着いていては厄介に巻き込まれる可能性が高い。
「かしこまりました。」
この場での返事は回避出来たのでとりあえずよしとしよう。
他の報告は大した事もなかったのでサラッと終わらして屋敷の裏手の森にある両親のお墓参りに行く事にした。叔父も一緒についてくる。
敷地内に森とかあるのは多分我が家位ではないだろうか。城を除けば。森を少し入ったところに綺麗に整備された場所に其れはある。モーラスと王都の二箇所にお墓があり、此方に来るのは本当に久しぶりだ。
私は静かに花を添え、手を合わせた。
叔父も同じ様にしている。
両親が他界して間もなく2年になる。ここに来ると1人なんだとちょっと落ち込んでしまう。
顔をあげると叔父が此方を覗き込んでいた。
「良き仲間を見つけ、共に生きてくれる相手がきっと集まるだろう」
叔父なりに心配してくれている様で小さくお礼を述べた。
屋敷に戻り、コンドラに次のダンジョンアタックから戻ったら学園の入学テストの勉強をする為、ひと月程此方に滞在する予定である事をつげ、拠点に帰る事にした。
拠点までは叔父が送ってくれた。家の前で別れ、中に入る。如何やらみんな出かけている様だ。私は先程の事もあり、何となく動いていたかったのでそのままキッチンへ。ダンジョン様の食料を準備しようとひたすら色々作った。あれこれ考えながら料理しているとだんだん楽しくなってきてちょっと作り過ぎた気がする。最後に今日の夕食を作り片付け終わる頃、他のメンバー達も帰ってきた。
みんなでリビングに集まり食事をする。
メンバーだけの食事なんていつぶりだろうか。たわいもない話で楽しく過ごした。
次の日、明日の出発に向けて必要な荷物をまとめ、収納にしまい込む。今回、従魔達は戦闘に参加しない。昨日の食事の際、相手が私の事を完全に勘違いしているのだからそのままにしておこうと言う事になったのだ。人柄を観察する為でもある。私も基本はアルトに守ってもらう形をとり、敢えて戦闘には参加しない事になったからだ。
『主がダンジョンに行っている間、群に行こうかと思うのだが』
ジンがウルを連れて里帰りさせても良いかと聞いてくる。私は特に問題ないので許可した。但し、ウルは子供なのだから絶対に無理をさせない様に釘を刺す事も忘れずに行う。ガイヤとスカイはそのまま影に入ってついてくるらしく、特に何もいわない。ジン達が別行動なななる事をアルトに説明しておこうと部屋を訪れた。
「ミーナがわざわざ来るのも珍しいな」
アルトがちょっとびっくりしている。先程ジンから聞かされ事をそのまま伝えた。
「まぁ、別に構わんぞ。それはそうと、アイツは恐らく馬をもってないと思うから俺の馬を貸すつもりだ。黒白にまた頼んで置いてくれるか」
要は私と二人乗りで移動すると言う事だ。「了解」と軽く返事した
明日午前中に不足を買い足し、出発である。今回は戦闘にもほぼ参加しない予定だし、のんびりついて行く事にした。
翌日、時間の少し前にタントスが拠点に現れた。
「今日からよろしくお願いします」
代表して、アルトが対応する
「ああ、此方こそよろしくな。ところでタントスは馬は持っているか。ないのならとりあえずこちらを貸すが」
如何やら、馬は所有してないらしくタントスがアルトの馬に乗る事になった。
私達は馬に跨がりマースを目指す。
夕方、マースに到着した。今回宿を使わずにトーマスに泊めてもらう予定。先に手紙で知らせてある。色々と。
私達は馬から降りて門に並び順番を待つ。するタントスが此方に寄ってきた
「アルトさん、この馬ありがとうございます。大人しくて凄く乗りやすかったです。しかし、その黒い馬立派ですね、流石はAランクパーティのリーダーです。」
そう言いながら黒白を撫でようとして手を出したところで噛まれそうになって慌てて引っ込めている。馬鹿だコイツ。
「あぁ、コイツは気に入ったやつしか触れさせない。下手に手を出すと怪我するぞ、人間側が」
「びっくりした。やっぱりアルトさんは流石です。この馬も相手を見るけど、力なき子供ならちゃんとわかって載せたり触らせたりするなんて、規格外だし、羨ましい。今度もう少し慣れたらソイツにも乗らせてください」
本当にお馬鹿だ、タントスは。流石のロトも呆れている。
入場の順番になったので、とりあえず中に入り、トーマス邸に向かう。タントスには王都を出るときに領主館に泊まる事は伝えてある。勿論私の事情を除いて。
屋敷に到達したので、中に入るとトーマスが出迎えてくれた。
「ただいま帰りました。長間留守をありがとう」
とりあえず当主らしく振る舞ってみた。
「ミーナ様、おかえりなさいませ。お元気そうでなによりです。エドワード様もようこそおいで下さいました」
挨拶もそこそこに執務室へと向かう
「で、何か問題でもありましたか?」
呼ばれたのだから何らかしらあった筈。そう思い早速話をする事にした。
「ミーナ様、国から連絡は頂いてますが、、、マース領主館は今後如何されるご予定ですか。流石に勝手に判断も出来かねます故、数日おきに様子は伺いに赴いてはおりますが」
・・・すっかり忘れてた。そう言えばそうだった。
「来月になれば社交シーズンに伴ってトーマスやヤックルが王都に滞在するからそのあいだは其方を使って頂きましょう。年明けの爵位の授与式が終われば国から屋敷を与えられるだろうし、それまでにゆっくり考えるわ。今居ている使用人の教育はよろしくね。あの2人の屋敷に勤めて貰う予定だから」
早々と指示を出した。うっかり忘れてたなんて言って仕舞えばコンドラの長いお説教が始まってしまう。
「お忘れで無かったのでしたらお忙しいでしょうから後の事はお任せください。ところでミーナ様は王家主催の新年の夜会は如何いたしますか」
やっぱりこの話もか。新年の夜会は各家の子供達も参加するいわば新年会の様なものだ。正直行きたくない。
「ちょっと考えさせて。まだ、公式の場に出るつもりはないのよね。」
憂鬱だ。叔父と行くにもどうせすぐにその辺に放置されて好奇心の目に晒されるだけだし、かと言ってずっと着いていては厄介に巻き込まれる可能性が高い。
「かしこまりました。」
この場での返事は回避出来たのでとりあえずよしとしよう。
他の報告は大した事もなかったのでサラッと終わらして屋敷の裏手の森にある両親のお墓参りに行く事にした。叔父も一緒についてくる。
敷地内に森とかあるのは多分我が家位ではないだろうか。城を除けば。森を少し入ったところに綺麗に整備された場所に其れはある。モーラスと王都の二箇所にお墓があり、此方に来るのは本当に久しぶりだ。
私は静かに花を添え、手を合わせた。
叔父も同じ様にしている。
両親が他界して間もなく2年になる。ここに来ると1人なんだとちょっと落ち込んでしまう。
顔をあげると叔父が此方を覗き込んでいた。
「良き仲間を見つけ、共に生きてくれる相手がきっと集まるだろう」
叔父なりに心配してくれている様で小さくお礼を述べた。
屋敷に戻り、コンドラに次のダンジョンアタックから戻ったら学園の入学テストの勉強をする為、ひと月程此方に滞在する予定である事をつげ、拠点に帰る事にした。
拠点までは叔父が送ってくれた。家の前で別れ、中に入る。如何やらみんな出かけている様だ。私は先程の事もあり、何となく動いていたかったのでそのままキッチンへ。ダンジョン様の食料を準備しようとひたすら色々作った。あれこれ考えながら料理しているとだんだん楽しくなってきてちょっと作り過ぎた気がする。最後に今日の夕食を作り片付け終わる頃、他のメンバー達も帰ってきた。
みんなでリビングに集まり食事をする。
メンバーだけの食事なんていつぶりだろうか。たわいもない話で楽しく過ごした。
次の日、明日の出発に向けて必要な荷物をまとめ、収納にしまい込む。今回、従魔達は戦闘に参加しない。昨日の食事の際、相手が私の事を完全に勘違いしているのだからそのままにしておこうと言う事になったのだ。人柄を観察する為でもある。私も基本はアルトに守ってもらう形をとり、敢えて戦闘には参加しない事になったからだ。
『主がダンジョンに行っている間、群に行こうかと思うのだが』
ジンがウルを連れて里帰りさせても良いかと聞いてくる。私は特に問題ないので許可した。但し、ウルは子供なのだから絶対に無理をさせない様に釘を刺す事も忘れずに行う。ガイヤとスカイはそのまま影に入ってついてくるらしく、特に何もいわない。ジン達が別行動なななる事をアルトに説明しておこうと部屋を訪れた。
「ミーナがわざわざ来るのも珍しいな」
アルトがちょっとびっくりしている。先程ジンから聞かされ事をそのまま伝えた。
「まぁ、別に構わんぞ。それはそうと、アイツは恐らく馬をもってないと思うから俺の馬を貸すつもりだ。黒白にまた頼んで置いてくれるか」
要は私と二人乗りで移動すると言う事だ。「了解」と軽く返事した
明日午前中に不足を買い足し、出発である。今回は戦闘にもほぼ参加しない予定だし、のんびりついて行く事にした。
翌日、時間の少し前にタントスが拠点に現れた。
「今日からよろしくお願いします」
代表して、アルトが対応する
「ああ、此方こそよろしくな。ところでタントスは馬は持っているか。ないのならとりあえずこちらを貸すが」
如何やら、馬は所有してないらしくタントスがアルトの馬に乗る事になった。
私達は馬に跨がりマースを目指す。
夕方、マースに到着した。今回宿を使わずにトーマスに泊めてもらう予定。先に手紙で知らせてある。色々と。
私達は馬から降りて門に並び順番を待つ。するタントスが此方に寄ってきた
「アルトさん、この馬ありがとうございます。大人しくて凄く乗りやすかったです。しかし、その黒い馬立派ですね、流石はAランクパーティのリーダーです。」
そう言いながら黒白を撫でようとして手を出したところで噛まれそうになって慌てて引っ込めている。馬鹿だコイツ。
「あぁ、コイツは気に入ったやつしか触れさせない。下手に手を出すと怪我するぞ、人間側が」
「びっくりした。やっぱりアルトさんは流石です。この馬も相手を見るけど、力なき子供ならちゃんとわかって載せたり触らせたりするなんて、規格外だし、羨ましい。今度もう少し慣れたらソイツにも乗らせてください」
本当にお馬鹿だ、タントスは。流石のロトも呆れている。
入場の順番になったので、とりあえず中に入り、トーマス邸に向かう。タントスには王都を出るときに領主館に泊まる事は伝えてある。勿論私の事情を除いて。
屋敷に到達したので、中に入るとトーマスが出迎えてくれた。
10
お気に入りに追加
580
あなたにおすすめの小説
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
いじめられっこが異世界召喚? だけど彼は最強だった?! (イトメに文句は言わせない)
小笠原慎二
ファンタジー
いじめられっこのイトメが学校帰りに攫われた。
「ごめんなさい。あなた勇者にしては地味だわ」と女神に言われ、異世界に落とされてしまう。
甘いものがないと世界を滅ぼしてしまう彼は、世界のためにも自分の為にも冒険者となって日々のお金を稼ぐことにした。
イトメの代わりに勇者として召喚されたのは、イトメをいじめていたグループのリーダー、ユーマだった。
勇者として華やかな道を歩くユーマと、ストーカーに追い回されるイトメが異世界で再び出会い、運命の歯車は狂っていく。
王女の夢見た世界への旅路
ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。
無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。
王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。
これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。
※小説家になろう様にも投稿しています。
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
聖女の孫だけど冒険者になるよ!
春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。
12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。
ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。
基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる