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1章

33.

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私は今、アズベリー領主館に来ている。コンドラに迎えられ他の使用人達も並んで頭を下げている。
「ただいま帰りました。長間留守をありがとう」
とりあえず当主らしく振る舞ってみた。
「ミーナ様、おかえりなさいませ。お元気そうでなによりです。エドワード様もようこそおいで下さいました」
挨拶もそこそこに執務室へと向かう
「で、何か問題でもありましたか?」
呼ばれたのだから何らかしらあった筈。そう思い早速話をする事にした。
「ミーナ様、国から連絡は頂いてますが、、、マース領主館は今後如何されるご予定ですか。流石に勝手に判断も出来かねます故、数日おきに様子は伺いに赴いてはおりますが」
・・・すっかり忘れてた。そう言えばそうだった。
「来月になれば社交シーズンに伴ってトーマスやヤックルが王都に滞在するからそのあいだは其方を使って頂きましょう。年明けの爵位の授与式が終われば国から屋敷を与えられるだろうし、それまでにゆっくり考えるわ。今居ている使用人の教育はよろしくね。あの2人の屋敷に勤めて貰う予定だから」
早々と指示を出した。うっかり忘れてたなんて言って仕舞えばコンドラの長いお説教が始まってしまう。
「お忘れで無かったのでしたらお忙しいでしょうから後の事はお任せください。ところでミーナ様は王家主催の新年の夜会は如何いたしますか」
やっぱりこの話もか。新年の夜会は各家の子供達も参加するいわば新年会の様なものだ。正直行きたくない。
「ちょっと考えさせて。まだ、公式の場に出るつもりはないのよね。」
憂鬱だ。叔父と行くにもどうせすぐにその辺に放置されて好奇心の目に晒されるだけだし、かと言ってずっと着いていては厄介に巻き込まれる可能性が高い。
「かしこまりました。」
この場での返事は回避出来たのでとりあえずよしとしよう。
他の報告は大した事もなかったのでサラッと終わらして屋敷の裏手の森にある両親のお墓参りに行く事にした。叔父も一緒についてくる。
敷地内に森とかあるのは多分我が家位ではないだろうか。城を除けば。森を少し入ったところに綺麗に整備された場所に其れはある。モーラスと王都の二箇所にお墓があり、此方に来るのは本当に久しぶりだ。
私は静かに花を添え、手を合わせた。
叔父も同じ様にしている。
両親が他界して間もなく2年になる。ここに来ると1人なんだとちょっと落ち込んでしまう。
顔をあげると叔父が此方を覗き込んでいた。
「良き仲間を見つけ、共に生きてくれる相手がきっと集まるだろう」
叔父なりに心配してくれている様で小さくお礼を述べた。
屋敷に戻り、コンドラに次のダンジョンアタックから戻ったら学園の入学テストの勉強をする為、ひと月程此方に滞在する予定である事をつげ、拠点に帰る事にした。
拠点までは叔父が送ってくれた。家の前で別れ、中に入る。如何やらみんな出かけている様だ。私は先程の事もあり、何となく動いていたかったのでそのままキッチンへ。ダンジョン様の食料を準備しようとひたすら色々作った。あれこれ考えながら料理しているとだんだん楽しくなってきてちょっと作り過ぎた気がする。最後に今日の夕食を作り片付け終わる頃、他のメンバー達も帰ってきた。
みんなでリビングに集まり食事をする。
メンバーだけの食事なんていつぶりだろうか。たわいもない話で楽しく過ごした。
次の日、明日の出発に向けて必要な荷物をまとめ、収納にしまい込む。今回、従魔達は戦闘に参加しない。昨日の食事の際、相手が私の事を完全に勘違いしているのだからそのままにしておこうと言う事になったのだ。人柄を観察する為でもある。私も基本はアルトに守ってもらう形をとり、敢えて戦闘には参加しない事になったからだ。
『主がダンジョンに行っている間、群に行こうかと思うのだが』
ジンがウルを連れて里帰りさせても良いかと聞いてくる。私は特に問題ないので許可した。但し、ウルは子供なのだから絶対に無理をさせない様に釘を刺す事も忘れずに行う。ガイヤとスカイはそのまま影に入ってついてくるらしく、特に何もいわない。ジン達が別行動なななる事をアルトに説明しておこうと部屋を訪れた。
「ミーナがわざわざ来るのも珍しいな」
アルトがちょっとびっくりしている。先程ジンから聞かされ事をそのまま伝えた。
「まぁ、別に構わんぞ。それはそうと、アイツは恐らく馬をもってないと思うから俺の馬を貸すつもりだ。黒白にまた頼んで置いてくれるか」
要は私と二人乗りで移動すると言う事だ。「了解」と軽く返事した
明日午前中に不足を買い足し、出発である。今回は戦闘にもほぼ参加しない予定だし、のんびりついて行く事にした。
翌日、時間の少し前にタントスが拠点に現れた。
「今日からよろしくお願いします」
代表して、アルトが対応する
「ああ、此方こそよろしくな。ところでタントスは馬は持っているか。ないのならとりあえずこちらを貸すが」
如何やら、馬は所有してないらしくタントスがアルトの馬に乗る事になった。
私達は馬に跨がりマースを目指す。
夕方、マースに到着した。今回宿を使わずにトーマスに泊めてもらう予定。先に手紙で知らせてある。色々と。
私達は馬から降りて門に並び順番を待つ。するタントスが此方に寄ってきた
「アルトさん、この馬ありがとうございます。大人しくて凄く乗りやすかったです。しかし、その黒い馬立派ですね、流石はAランクパーティのリーダーです。」
そう言いながら黒白を撫でようとして手を出したところで噛まれそうになって慌てて引っ込めている。馬鹿だコイツ。
「あぁ、コイツは気に入ったやつしか触れさせない。下手に手を出すと怪我するぞ、人間側が」
「びっくりした。やっぱりアルトさんは流石です。この馬も相手を見るけど、力なき子供ならちゃんとわかって載せたり触らせたりするなんて、規格外だし、羨ましい。今度もう少し慣れたらソイツにも乗らせてください」
本当にお馬鹿だ、タントスは。流石のロトも呆れている。
入場の順番になったので、とりあえず中に入り、トーマス邸に向かう。タントスには王都を出るときに領主館に泊まる事は伝えてある。勿論私の事情を除いて。
屋敷に到達したので、中に入るとトーマスが出迎えてくれた。
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