上 下
22 / 61
1章

22.

しおりを挟む
ヤックルさんのところに到着。今は応接室でお茶を頂いている。実はロトマリアは同席を辞退した。話が重たいそうだ。先に宿に行っているからとヤックルさんに紹介してもらった宿へと行ってしまった。アルトは私の側に居てくれている。
ノックと共にヤックルさんと団長さんらしき人が入ってきた。
「初めまして。ミーナ様アルト様、オーロラの騎士団長でサルトと申します」
とても腰のひくい人だ。この方なら安心だ。
「初めまして。ミーナと申します」
「初めまして。アルトと申します。急にお邪魔してすいません」
挨拶を交わし、先程ヤックルさんに話した内容を伝える。ここに来る前に親子で話をした様だ。
「私としては父に是非、受けて貰いたいと思いますよ。ただ、本人は平民の分際でと少々尻込みしておりまして、この街ならなんら問題ないと思いますが」
なるほど、身分の問題か。私から一つ提案してみた。
「では、私より陛下に子爵位の授与を推薦いたします。これで如何でしょうか」
一応、領主である。このくらいの事なら出来る。
「そこまでして頂いては断る理由がございません。謹んでお受けいたします」
よし、商談成立だ。私達がムートンに帰る際、一緒に来て欲しいですと伝えると其方も了承してくれた。
「せっかくですので【紫】にムートンまでの護衛を指名依頼いたしましょう。どいか道中よろしくお願いします」
ニコニコ顔で此方に向き、話を振ってきたので了承した。
その後、門での事を団長に伝える。
団長は怪訝な顔で
「実はあの2人を含めて7名程、前の領主が随分甘やかしていた者でこれを機に人員の入れ替えをするのも良さそうです。ご報告ありがとうございます。早速、事を進める事にします」
ざまぁみろ。やってやった。ニヤリと笑うと横でアルトが苦笑いしている。
話も終わり、夕食わわご馳走になった。明後日、午後中には出発する為、此方の屋敷で待ち合わせする事にし、明日はこの街の領主館を訪れる事にした。ムートンからヤックルさんも戻ったら其方に引っ越ししてもらう。団長は今の家に留まることにするらしい。
明日は領主館で待ち合わせとの事で私達は宿に帰った。
宿に着き、今回は4人部屋との事で部屋に行くと珍しく2人が喧嘩をしている。
びっくりして入口に固まっていると後からアルトに押されて部屋に入室した。
「どうしたんだ、二人とも」
アルトが間に入って宥める。
些細な事だった。折角の海だから魚料理が食べたかったマリアに相変わらずの肉料理でロトがゴリ押ししたようだ。
「じゃあ、明日魚の美味しいお店をヤックルさんに聴いて一緒に行こうよ。私もお魚食べたい」
マリア、ミーナのおねだりに落ちる。その後、もふもふが触りたいとウルを取られたが機嫌は治った様だ。よかった。
翌朝、4人でまずはギルドへ。指名依頼を受理する。その後、領主館へと向かった。
ヤックルさんより先に着いた私は門番に事情を説明し、中で待つ事にした。ヤックルさんもすぐに到着。二人で内装と執務室を確認する。重要書類等、必要な物は目を通し、ヤックルさんに渡す。戻ったから順番に処理してもらう様お願いした。
此処での用事も済んだので屋敷前でヤックルさんと別れ、先程聞いておいた魚料理の美味しい店へと向かう。
昼食にしては少しボリュームがあったが大変美味しく、四人共に満足した。宿に帰りがてら街を観光。魚や海特有の食材を手に入れた。明日からまた、移動になる為、今日は早目に就寝した。

翌日、約束の時間にヤックルさんを迎えにいく。彼方は馬車での移動。御者さんと護衛が2名つく様だ。
私は馬車に乗る事になった。移動中に色々話をしておきたかったので丁度よい。
街の門を潜るところで団長さんと出会った。
「父の事、よろしくお願いします」
なんとも丁寧な人だ。何故か私はお駄賃におやつをもらい、オーロラを後にした。
馬車に揺られて3日無事にムートンに到着した。一行はそのまま、領主館へと向かう。屋敷に到着するとセスタスが出迎えてくれた。
「ヤックル様、ようこそお越しくださいました。エドワード様がお待ちです。此方にどうぞ。ミーナ様、エドワード様より至急お伝えしたい事があるとの事で執務室までお越し頂きたいのですが今、屋敷内にゲルニン男爵夫人、ハルト御子息、レイナ御令嬢がいらっしゃいます。くれぐれもご注意の上、お越しくださいとの事です」
叔母さま一家がいるとの事か。鉢合わせると面倒だな。
「アルトさん、祭の為来客が多いので別邸を使用する事にしたの。先に其方に向かっていてください。多分、屋敷内は面倒事ばかりなので」
苦笑いで了承してくれた。
アルト達はトーマスに任せる。セスタスはヤックルさんを部屋に案内後、此方に向かうとの事で私は先に執務室に向かう事にした。
二階で一旦別れ、三階に続く階段まで来た時に後ろから急に大きな声で話しかけられた。
「おい、そこの子供。そこより先は立ち入り禁止だぞ。認められた者のみが通れる様になっている。お前みたいな奴が足を踏み入れる事は許さん」
誰だ。我が物顔で言って来るのわ。其方に振り向くとハルトが立っていた。
「平民部勢がウロウロするな。目障りだ」
腕を掴まれそうになったので咄嗟に階段側へ逃げた。
「図々しい奴め、そこに入るなと言っただろう」
私を引き返そうと腕を伸ばしてきたが、結界に弾かれた。
「ハルト様、大丈夫ですか」
ハルトの護衛が声を掛ける。
「何故、私が弾かれるのだ。時期当主である私を許可していないとはどういう事だ」
弾かれた腕を摩りながら叫ぶ。
「大体なんでお前が入れるのだ。一体何をした」
答えるのか面倒だなと考えていりると上から声がした。
「ハルト、何度言ったらわかる。お前には此方に入る権利など無いのだから来るなと言っているだろう。そこの子は私が呼んだんだ。護衛も結界に触る前に止めないか。迷惑だ」
「叔父様、何故私にその様な事をおっしゃるのですか。私こそが時期当主に相応しいと聞き入っております。どうぞ理由をお教えください」
馬鹿かこやつは。私は無言のまま、叔父さんのところまで歩いた。
「お前に話す事などない」
叔父さんも私の到着ともに言い捨てて、その場を二人去る事にした。
執務室に到着し、すぐにセスタスも到着。一人で向かわせた事を謝罪されたが気にして無いと答えておいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新婚初夜に浮気ですか、王太子殿下。これは報復しかありませんね。新妻の聖女は、王国を頂戴することにしました。

星ふくろう
ファンタジー
 紅の美しい髪とエメラルドの瞳を持つ、太陽神アギトの聖女シェイラ。  彼女は、太陽神を信仰するクルード王国の王太子殿下と結婚式を迎えて幸せの絶頂だった。  新婚旅行に出る前夜に初夜を迎えるのが王国のしきたり。  大勢の前で、新婦は処女であることを証明しなければならない。  まあ、そんな恥ずかしいことも愛する夫の為なら我慢できた。  しかし!!!!  その最愛の男性、リクト王太子殿下はかつてからの二股相手、アルム公爵令嬢エリカと‥‥‥  あろうことか、新婚初夜の数時間前に夫婦の寝室で、ことに及んでいた。  それを親戚の叔父でもある、大司教猊下から聞かされたシェイラは嫉妬の炎を燃やすが、静かに決意する。  この王国を貰おう。  これはそんな波乱を描いた、たくましい聖女様のお話。  小説家になろうでも掲載しております。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~

石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。 しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。 冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。 自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!

アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」 ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。 理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。 すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。 「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」 ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。 その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。 最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。 2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。 3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。 幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。 4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが… 魔王の供物として生贄にされて命を落とした。 5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。 炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。 そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り… 「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」 そう言って、ノワールは城から出て行った。 5度による浮いた話もなく死んでしまった人生… 6度目には絶対に幸せになってみせる! そう誓って、家に帰ったのだが…? 一応恋愛として話を完結する予定ですが… 作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。 今回はHOTランキングは最高9位でした。 皆様、有り難う御座います!

処理中です...