上 下
21 / 61
1章

21.

しおりを挟む
翌日、往復10日程度の日程でオーロラに行くことをセスタスに伝え、出発した。
片道の行程が3日街への滞在が3日、1日は予備日だ。
馬でゆっくりいっても十分に余裕がある。初めて行く場所だけに景色を楽しみながら馬上を楽しんだ。
オーロラ地区に入ってからは海が近いせいもあって潮の香りがする。
やがて街道沿いに海が見え始めた。
「うわぁ、大きい」
ホントに小さい頃、海を一度見ただけで殆ど記憶にない私は馬上で大騒ぎ。
アルト達に微笑み見守られている。
「ミーナ、そんなにはしゃいだら落ちるぞ」
ロトに注意され、少し大人しくするも海に近いだけでうずうずする。
「オーロラには散歩が出来る海岸があるからそこにでも行けば良い。まずは街を目指そう。」
アルトに言われ、大人しく座って先を進んだ。
3日目昼前、オーロラに到着。今は街に入る為、門に並んでるとこ。
20分程で私達の順番が回ってきた。ギルドカードを見せる。色持ちのカードだといちいち騒がれても面倒なんで普段は普通に見える様にしている。
門番がカードを確認後、街への要件を訪ねてきた。やはり、領主があんな事になったせいか少しピリピリしている。
アルトが代表して門番と話をする。
「街のヤックルという方を訪ねる予定だ。とある方から紹介してもらった」
完結なや伝えると門番は怪訝な表情をする。
「あのお方は大変お忙しく冒険者なんぞ相手にしてる暇は無い。無駄な事をするなら帰ってくれ」
ほぉ、人の客人を勝手に追い返すか。ここの門番は一度人員の教育をしなおした方が良さそうだ。
「お前では話にならない。上の方を読んで貰おうか」
アルトもこの人と話をしても仕方がないと判断した様で上の人と対応を変れと促す。
「団長や副団長も今は忙しい。どうしてもというなら待たせてやっても良いが勝手な事をしたらすぐにでも牢にぶち込むぞ」
なかなか勝手な事を言ったものだ。とりあえず、門番の控室で待たせてもらう事にした。
部屋に4人だけになったところでロトが口を開いた
「なんだ、アイツは。態度が横柄過ぎるだろう。ミーナ、奴に言ってやったらどうだ」
ロトの言いたい事もわかる。しかし、今回は此方がお願いする立場の為、問題は出来たら回避したい。このまま、待つ事にした。
あれから2時間、いい加減待ち疲れた。お腹も空いてきたし、ぼちぼち我慢の限界だ。一旦部屋を出ようかと考えているとドアが急に開いた。先程の門番だ。
「忙しい中、副団長が来てくださった。丁寧に対応する様。万が一失礼などあった場合はわかっているだろうな」
どこまでも上からだ。流石に我慢の限界。アルトの袖を引っ張り、私が先頭で挨拶すると小声で伝えた。アルトも意図した事が解ってくれたので場を譲ってくれた。
「特にそこの子供。騒いたり暴れたりしたら容赦無いぞ」
覚えてろよ。こいつ。絶対、首にしてやる。
そんなやり取りをしていると副団長らしき人物が現れた。
門番は敬礼する。と、同時に私達に頭を下げる様に強制してくる。
「かまわん。此方達が何やら用があって街に入りたいところを門番の判断で拒否され、私を呼んだのは」
こいつもあまりな態度だな。私は一歩前にでた。
「初めまして。私、アズベリー領主のミーナ・リュー・アズベリーと申します。ヤックル様への取り付きをそこの門番に理由も何も聞かず拒否されたものですからこちらでかれこれ2時間程、待たせて頂きましたわ。貴方も理由も聞かずに同じ対応をなさるおつもりでしょうか」
腹が立っているのもあって嫌味たっぷりに攻撃してやった。
2人は青褪めている。
「も、申し訳ございません。すぐにお取り継ぎいたします」
慌てて2人揃って出て行った。
そしてすぐに戻って来ると、副団長が案内してくれるとの事。私達は後に続いた。
詰所を出る時先程の門番がいた為、お忍びの訪問の為、他言しない様釘をさし、ヤックルのところに向かった。
漁業組合事務所に到着。馬を預けて中に進む。副団長が受付に先に伝えていた為、直ぐに応接室に通された。副団長が後をついてくる。
「貴方には関係の無い事ですから同時同室する事は許可致しません。おかえりください」
はっきり追い返してやった。
青褪めたまま帰って行く副団長。後々、覚えておけ。心の中で叫んだ。
腰を下ろししばらくするとノックと共に男性が入室してきた。
「お待たせいたしました。私が組合長のヤックルと申します。本日はどの様な御用件でしたでしょうか」
「突然の訪問失礼いたします。私、【紫】リーダーのアルトと申します。こっちがロト、マリア、ミーナです」
アルトの紹介に合わせてお辞儀する。
「今回、エドワード様より此方の手紙をお渡しする様預かって参りました。ますば中身をご確認ください。この後、お話出来ればと思います」
アルトが手紙を差し出すとヤックルさんは「失礼します」と中身に目を通した。読み終わったのか顔を上げる。
「これはこれは。わざわざありがとうございます。貴女様がミーナ様でしょうか」
「はい、はじめまして。ミーナ・リュー・アズベリーです。叔父からの手紙はご理解いただけましたでしょうか」
「はい、確かに内容は確認いたしました。しかし私の様な者にこの様な大役が務まりますでしょうか」
「私といたしましては叔父のエドワードの意向に賛成いたしております。ヤックル様に是非お願いしたく、今回此方にお伺いいたしました」
ヤックルさん、少し思案する。
「実は私の息子がここの騎士団長をしておりまして、一度相談してからお返事したいのですがよろしいでしょうか」
「問題ありません」
「良ければ話し合いの席にご同席いただきたいのですが」
此方としては先程の門番、副団長の件を伝えるのに絶好のチャンスだ。同席する事にした。
その後、普段は冒険者ミーナとして過ごしているのでミーナと呼んで欲しいと伝え、手紙にも書いていたと教えて貰った。この後、今日は非番で団長が家にいるので夕食を是非にとの招待を受け、ヤックルさんの屋敷に行く事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新婚初夜に浮気ですか、王太子殿下。これは報復しかありませんね。新妻の聖女は、王国を頂戴することにしました。

星ふくろう
ファンタジー
 紅の美しい髪とエメラルドの瞳を持つ、太陽神アギトの聖女シェイラ。  彼女は、太陽神を信仰するクルード王国の王太子殿下と結婚式を迎えて幸せの絶頂だった。  新婚旅行に出る前夜に初夜を迎えるのが王国のしきたり。  大勢の前で、新婦は処女であることを証明しなければならない。  まあ、そんな恥ずかしいことも愛する夫の為なら我慢できた。  しかし!!!!  その最愛の男性、リクト王太子殿下はかつてからの二股相手、アルム公爵令嬢エリカと‥‥‥  あろうことか、新婚初夜の数時間前に夫婦の寝室で、ことに及んでいた。  それを親戚の叔父でもある、大司教猊下から聞かされたシェイラは嫉妬の炎を燃やすが、静かに決意する。  この王国を貰おう。  これはそんな波乱を描いた、たくましい聖女様のお話。  小説家になろうでも掲載しております。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~

石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。 しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。 冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。 自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!

アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」 ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。 理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。 すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。 「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」 ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。 その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。 最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。 2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。 3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。 幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。 4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが… 魔王の供物として生贄にされて命を落とした。 5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。 炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。 そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り… 「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」 そう言って、ノワールは城から出て行った。 5度による浮いた話もなく死んでしまった人生… 6度目には絶対に幸せになってみせる! そう誓って、家に帰ったのだが…? 一応恋愛として話を完結する予定ですが… 作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。 今回はHOTランキングは最高9位でした。 皆様、有り難う御座います!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...