上 下
158 / 163
第3章 神の悪戯

第153話 この世界で生きて

しおりを挟む
「兎に角、うちはこの世界には呼んだけど、この世界がここまでおかしくなったのは初めてなのよ」

「そうですか…まぁ俺達に危害を加えないのなら、別にどうでもいいんですけどね?」

 女神サナラスはクロウの質問に答えてくれたが、クロウ自身はぶっちゃけた話、自分とその周りにの者達、大切な人達が無事なら他はどうでも良いのだ。

 これ自体は前にもクロウは話しているし、それがクロウの評価を下げる要因になろうとも変えるつもりはない。

「え?」

「俺は別に勇者でもなければ復讐系の主人公でもない、ただの元日本人です、今は貴族だけどそれだって地球とは設定が全然違います」

 ヨーロッパではなくナーロッパに近いだろう、その世界にクロウは来てしまったが別に主人公になろうと努力した事はないし、なるつもりもない。

「貴族としての勤めがいずれ来るのならそれを全うしますし、上からの命令で戦えと言われたら戦います、でも」

「でも?」

「俺は主人公じゃあなくて良いんです、元々悪役ヴィランを演じようとしていましたから、そこに興味はないんです」

「興味がないんだ」

 小さい頃はクロウも世界を救うヒーローになりたいと思っていた事がある、それは異世界に行ってチート能力を手に入れて無双をするのではなく、困っている人達を助けて強い敵と戦う、そんな王道バトル漫画の様なおとこになりたかったのだ。

「はい、だからその後の物語は…魔王を倒した後の物語は自分達の人生として歩んで良いんですよね?」

「ええ、うちはただ、新しい刺激が欲しかっただけだから、今回のようなは事はうちとしては楽しくて仕方ないのよ」

 と、女神サナラスは楽しそうに答える、クロウとしては元々交通事故で死んだ身なのでここに転生させてくれた事は別に怒ってはいないし、

 悪役貴族を演じようと決めたのは自分自身だ、

 神様の理由も理解出来る
 例えるなら人生で遊べるゲームはたった1つだけでそれ以外は遊んではいけないと言われ、それを何千何万と同じ展開、同じストーリー、同じ結末を繰り返しやらないといけないの同じくらいつまらないだろう。

 だからこそ、新しい刺激が欲しくて死んでしまった魂をこの世界に連れてきたのだろう。

「まぁ退屈だからと言う理由で連れて来られたのに"つまらない"とか言われたら俺としては最悪ですけどね」

「転生者の人間が主人公達の中にいる、これだけでもいつもと違う展開になって面白いのよ?」

「主人公の性格はプレイヤーによって変わりますけど、その他のキャラクターは殆ど大差ないですからね」

 主人公はプレイヤーにとって自分自身に投影させる言わば人形、その為、想いによって作られたこの世界ではループするごとに主人公の性格はプレイヤーの性格に影響される。

 しかし主人公以外は投影されない、もしくはされ難い為、どれだけループしようともキャラクターの性格は殆ど変化しない

 殆どと言うのはプレイヤーがその他キャラクターに対する感情などにより多少なりとも変化があると言う事だ。

「そうよ、だからこそ貴方の様に悪役貴族として転生した人ならかなりの変化を楽しめると思ってやってみたのよ」

 と、女神サナラスは天城剣介がクロウ•チューリアに転生した理由を改めて教えてくれた。

「それで結果はさっき言った通りって事ですか」

「うん、だから貴方には感謝しているのよクロウ」

 その言葉に嘘偽りはないだろう、例えそれが悪意のある言い方だろうが、そうではなかろうが、変化を求めている女神サナラスにとってクロウや他のキャラクター達の変化はとても楽しい事なのだ。

「それじゃあうちは行くわ、この事を同じ転生者に話しても良いし、貴方の秘密にしても良いわ」

「良いんですか?俺みたいに素直に納得するとは思えませんが?」

「それも含めてうちは楽しむのよ、勿論プライバシーは守っているから安心してね?」

「…やっぱりここで殺そうかな?」

 と、クロウは女神サナラスを殺そうと考える
 よくよく考えたら女神サナラスは、女神でこの世界を見ている、つまりクロウとメイディとの性行為だって見ていてもおかしくない。

「見てないからね!?そう言うのはやっぱり嫌だと思いから本当に見てないからね!?じゃあこの世界を楽しんでね!?」

「あ!…逃げたか」

 女神サナラスは慌てて逃げていく、クロウはため息をついて生徒会室の椅子に座る、エムルがまだ帰ってこないが、そろそろ昼休みも終わる頃だろう。

「昼休みに聞く内容じゃないよこれ」

 学園生活も魔王が復活したせいで潰れて侵攻を開始するまでの間は騎士団達との修行の日々になる、貴重な時間が潰れたのだ。

「まぁ、この世界の謎を知れたから良しとするか」

 頭は痛いが、この情報は結構重要だ、リュークとエムルには話しておいた方が良いだろう。

「さてと、放課後俺の部屋に…いや、ここに集まるようにあの2人に声をかけるか」

 そう言って生徒会室の外に出る
 そして女神サナラスが逃げながら言った言葉を思い出す。

 (…"この世界を楽しんでね"っか)

「ま、楽しまなきゃ損だよな」

そんな事を口にしつつ、教室に向かって歩いて行く、メイディ達も心配しているだろう。

色々と考える事は多いが今はただ、魔王の事だけを考えておこうと、思うクロウだった。
——————————————————————

完結はさせます、ただ書く時間が全くないだけです(-_-;)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ~小さいからって何もできないわけじゃない!~

渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞! ◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!! 誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。 スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。 テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。 リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。 小型オンリーテイム。 大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。 嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。 しかしリドルに不安はなかった。 「いこうか。レオ、ルナ」 「ガウ!」 「ミー!」 アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。 フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。 実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

弱小テイマー、真の職業を得る。~え?魔物って進化するんですか?~

Nowel
ファンタジー
3年間一緒に頑張っていたパーティを無理やり脱退させられてしまったアレン。 理由は単純、アレンが弱いからである。 その後、ソロになったアレンは従魔のために色々と依頼を受ける。 そしてある日、依頼を受けに森へ行くと異変が起きていて…

処理中です...