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第2.5章 崩壊するゲーム

第111話 推しのヒロイン

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「じゃあ僕はそろそろ失礼しますね」

「いや、待ってくれ」

リュークの前世日本の名前を聞く事は出来た、それに関しても有意義なものであるが、もう一つ聞きたい事があるのだ。

「聞きたい事がまだあるんだが良いか?」

「?…良いですけど」

「お前は推しの為に動いているんだよな?」

「ええ、そうですけど」

「なら、その推しのヒロインを教えてくれないか?今後の為にも色々と知っておかなくちゃならないからな」

リュークの推しのヒロインが分かれば、そのヒロインと交流しなくて済むし、もし何か困った時があれば手助けする事ができる。

「別に良いですけど」

「なら教えてくれ」

そうしてリュークは自分の推しのヒロインのことを話し始める。

「彼女の名前はメジーナ•クリストス、転入生として新しく加わるヒロインの子です」

「確か隣国の『オースロン王国』の特待生だよな?」

「はい、その子が僕の推しなんです」

メジーナ•クリストス

オースロン王国の学園、オースロン学園の首席で入学した光•火•風属性が使える子爵家の娘だ。

ちなみに階級は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、純男爵、騎士爵の順で4番目に偉い貴族だ。

貴族としても優秀で学問に関しても一流、しかしそれは生まれ持っての才能ではなく、毎日積み重ねて来た努力の結果が彼女の功績になっているのだ。

「他国の貴族の娘がリュークの推しなんだな」

「他国の貴族の娘とか関係ありません、ただ僕は彼女の頑張る姿とキャラクターデザインが1番好きだっただけです」

その気持ちはよくわかる、ゲームの中の話ではリュークは平民で貴族の人と交際する事なんて不可能な話だ。

しかしゲームの都合上、ヒロイン達とは結ばれる事になっている、しかしただ結ばれるだけでは意味がない、ゲームの主人公に感情輸入して、最も自分が好きなキャラが主人公に恋するからこそ、プレイヤー達もそのヒロインが好きになるのだ。

「成る程な、確かにイラストと言うかキャラクターのデザインは結構可愛いもんな」

ヒロイン一人一人に個性があってそれぞれに可愛さはあるが、推しのヒロインは更に格別だ。

ファンイラストやファンアート、同人誌なども作られていき、それを見て更にファンが増える事もある、だからこそリュークの気持ちは理解出来る。

「そうでしょ!?だからこそ僕はたった1人の女性を愛したいんです!しかもそのヒロインは二次元妄想ではなく、三次元リアルにいるんですよ!?これがどれ程嬉しい事か!!!」

「俺以上にこのゲームにのめり込んでいたんだな」

オタクだからこそ通じる事がある、別に俺達は三次元が嫌なわけではない、自分達の幻想や妄想が叶う世界が違う二次元だけの話だ。

自分の欲望や自分の願望、性格、姿、それを全て受け止めて愛してくれるのが二次元の世界、三次元で求めてないのだから干渉しないでほしい世界。

「そうなんですよ!だからこそ僕はリュークとしてこの世界に転生出来たのが本当に嬉しいんです!」

「分かったよ、君の熱意には共感出来る、だから本当にリュークの考えている事をするのなら俺は応援するよ、勿論悪役貴族として活動も…多分しない」

「そこはしないと断言してくださいよ」

「俺は元々追放されてからメイディとエムルの3人でスローライフ(仮)を送るつもりだったんだよ、よくあるだろ?スローライフ系の小説」

「成る程、だから悪名を広げて追放される事自体はクロウ様の望みでもあったんですね」

リュークの言葉にクロウは頷く、元々の目的は追放スローライフ系の様な感じだったのだ、しかし『戻って来てくれぇ』とか『追放ざまぁ』はなく、ただ単に遺恨を残さず、双方共に良い形で終わらせたいのだ。

「でも、今のクロウ様じゃ無理じゃありませんか?」

「まぁな、しかもお前がこちら側転生者ならますます難しくなって来たよ」

悪い事をしても『悪役貴族として』と認識されるし、追放するにしても私情が入りにくい、しかもヒロインは1人しか選ばないとなると(国交問題とか起きそうだけど)権力という名の力で揉み消されそうで怖い。

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