上 下
22 / 39
第2部 守るべき者の為に振るえる物

第二十一話 守るべき者の為に振るえる物

しおりを挟む
ルーク「悪意...........」

紫色の宝玉を見て、ルークはこれは嘘ではないと直感した

見た目は綺麗な宝玉だが、周りからは禍々しいオーラがただより、ずっと見ていると深淵に連れて行かれそうな気がする

ルーク「これが最恐の魔道具」

ゾディア「はい、これは僕達魔族が対人間用に発明した物です」

ゾディアは、何故こんな物が作られたのかの経緯を話し始めた

ゾディア「僕達は今、人間と戦争をしています、それは知ってますよね?」

ルーク「当たり前です、俺が幼い頃からずっと起こっている戦争ですからね」

ゾディア「未だに続く戦争に我々魔族も疲弊しています」

それはそうだろう、ここまで長い戦争になれば魔族だけでなく、人間側も疲弊する
そのせいで孤児になった子供達が年々増えているのだ

ゾディア「そこで僕達は人間との戦争を終わらすべく、あるものを使って作り始めました..........それが」

ルーク「...................悪意」

ゾディア「正解です」

しかし、悪意だけで倒せるのか?と不思議に思っているとゾディアが話を続ける

ゾディア「この魔道具は人間と魔族の負の感情をエネルギーにして、力に変えます」

ルーク「成る程、その力で人間達との戦争に終止符を狙ったのか」

成る程、この戦争の時代、人間にしろ、魔族にしろ、悪意は無限に湧く、それを魔道具が吸収して力に変える、その力によっては圧倒的な力の前に勝てるものはない........筈だった

ゾディア「はい、しかしこれにはある欠点があったんです」

ルーク「ある欠点?」

ゾディア「はい」

ルーク「それは一体なんだったんですか?」

ルークがそう聞くとゾディアは深呼吸して
よし!と小さく言ってから話を続けた

ゾディア「これは世界中の悪意をここに集めて使う事が出来ます、しかしそれを使えるのはたった1人です」

ルーク「1人?」

ゾディア「はい」

1人しか使えない事が欠点なのか?
そう思い聞いてみると、それは欠点ではないそうだ、その程度なら量産し、多少力が落ちてもなんとかなるらしい
しかし問題点は使用方法との事

ゾディア「この魔道具は人間、又は魔族の体内に入り、その上で使う事が出来るのです」

ルーク「え?」

ゾディア「つまり............悪意そのものが使用者に襲いかかり、それにより暴走してしまうのです。」

宝玉の中にある悪意、それを使うと様々な悪意が自身に襲いかかり、精神を破壊し、悪意に飲まれて暴走する

それがこの魔道具の最大の欠点

ルーク「この魔道具......宝玉?.....を使いこなした者はいるのですか?」

もしいれば、コツがないか教えて貰おうと考えていたが、ゾディアは首を横に振って

ゾディア「いえ、使ってみた魔族は沢山いましたが、皆自我を失い...................」

後の事は言わなかった、きっと辛かったのだろう

ルーク「そうですか...........」

しかしそれにしてもそんな恐ろしい物をルークに渡そうとする考えにルークは若干引いていた

ゾディア「渡すと言っておきながら、とても無責任な事になっていると分かっていますが、これを乗り越えれば絶大な力が手に入るのです」

ルーク「...................」

ゾディア「貴方は確か曲芸師だった筈です、曲芸師の貴方が勇者に勝つ為には此処で僕達と途方もない時間を費やしてやっとまともに戦える程度になるかならないかです、貴方の恋人を救う為にはこれしか道はないのです。」

ゾディアの言っている事は事実だ、ルークは曲芸師、そもそも冒険者向けではない、それなのに冒険者としてやっていけたのは、
曲芸師としてやってきた知識と経験を活かしてやっとマイ達について行けたに過ぎない
そして勇者に勝つ為には圧倒的な力が必要なのだ

...................断ると言う選択肢は最初っからなかったのだ。

ルーク「...................わかった」

ゾディア「......では」す.....

ゾディアは宝玉を取り、ルークに渡す

ルーク「............!?」

その瞬間宝玉が浮かび周りから黒い影が現れる

ルーク「な!?」

それがルークの周囲を囲み宝玉がルークの胸の中に入る
痛みはなく、まるで宝玉と一体化したみたいになった

そして...................

ルーク「あ.........ああ........あああああああ............」

頭の中に幾千もの悪意が流れ込んでくる

ルーク「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

悪意、恐怖、憤怒、憎悪、絶望、闘争、殺意
破滅、絶滅、滅亡

幾千もの負の感情が、自身を覆い尽くす

ゾディア「ルークさん!悪意に飲み込まれないで!」

リディア(やはり駄目か.......ッ)

ルーク「がぁあ.....ガァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

頭が割れるように痛い、目がチカチカする、
体の節々に激痛が走る、息が出来ない

ルーク(ク.......クソ..........こんな..........ところで....................)グッ

ルークは消えゆく意識の中で、4人の絆とも言える、スカーフを掴み意識を保とうとする

ルーク(この中にはあのクソ野郎にやられた者達の思いだってあるんだ!)

世界中の悪意となれば、勇者シンによってやられた者達の悪意だってある

復讐、絶望、恐怖、憤怒

人それぞれだが、1つだけ同じなのがあった
.........それは

ルーク「あの..........クズに........」

ルークはその人達の代表になる事を決意し
復讐を誓う

ゾディア「!?...........まさか」

ルーク周りを覆っていた黒い影が少しずつ消えていき、ルークと一体化していく

リディア「奇跡が起きたか」

今まで誰1人として出来なかった事をルークはやろうとしていた

そして

ルーク「あいつらのためにも、一矢報いる!!!!」

影が完全にルークと交わり、宝玉の力を完全に取り込む事が出来た

ゾディア「ルークさん!大丈夫ですか!?」

しかし、体の方がどうなっているのか分からないので、ゾディアは心配そうに体を見る

ルーク「........はい、でもなんだろう、不思議と悪意を感じないんです」

先程まで感じたものが嘘のようにない、それに違和感を覚えながら答える

ゾディア「そうなんですか?僕達の中には成功者はいないので、なんでなのか、僕達もわからないです」

ルーク「そうですよね、なんかもっと禍々しい感じになるのかな?っと思っていたのですが、まぁ大丈夫でしょう」

幾千もの悪意が流れ込んでいるが、苦しむというより、こんな風に自分はなってしまったと言う悲しみなどを、伝えるよう来る

人間も魔族もこの不毛な戦争に嫌気がさしていた、そして勇者に対しての憎しみなどが、痛いほど伝わって来る

ルーク(皆んなの仇は俺が討ちます、なので、力を貸してください)

そう決意し、これからの事を考え始める

——————————————————————

誤字脱字がございましたらコメント等をよろしくお願いします。

後質問等もお願いします。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!

蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。 家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。 何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。 やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。 そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。 やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる! 俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!

底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都
ファンタジー
おたく、低収入、デブで不細工、現在は無職の底辺おじさん、虐待を受けていたみすぼらしい幼女を助けます。でも、成長した少女は絶世の美少女でした。しかも、前世の記憶を取り戻します。何と前世は魔王城のメイドだったようです。 主人公が助けた美少女に溺愛されて、少女の持つ異世界魔法と異世界アイテム、そして自身の特殊能力ゴミ処理を駆使して荒廃した現代日本で、知らず知らず成り上がる物語です。

処理中です...