幼馴染み達がハーレム勇者に行ったが別にどうでもいい

みっちゃん

文字の大きさ
上 下
677 / 680
エピローグ(外伝) 世界を救いしその後

エピローグ14話 愛する子供達 ルークside

しおりを挟む
レルの村は湿地に面しており、大きな沼に連なって家々が並んでいる。
ちょうど雨季ということもあってか、深々とした緑に囲まれ、水辺には大きな葉が浮かんでいた。
どこからかカエルの鳴き声が聴こえてくる。
少し蒸し暑さはあったが、緑が爽やかで嫌な感じはしない。
馬を降り村長の家に挨拶に行く途中、カニをまつった珍しい祠があった。
「カニ…」
任務以外あまり喋る事のない寡黙な団長から発せられた突然のカニという呟き。
ただカニという単語を発しただけなのに、本当にこの人が喋ったのか?と戸惑った。
2年程一緒に働いて遠征もしているが、そういえば、団長の好みについて一切しらない。

「本来ならばこの時期、カニ漁を行っているのですが、
奥地にいるはずの大きな蛇が生息場所を変えて以来……。
漁ができなくなってしまったんです。
沼に近づくと体調を崩すものも現れるようになりました。
周囲の村も漁で生計を立てています。
無闇に助けを求めるわけにもいかず……備蓄は、ここにある分で底をつきます」
がたいがよく、日焼けした村長は本来ならば漁をしているのだろう。
顔はこけていて、疲れているようだった。
団長はそのまま村長の話を聞き残りの団員は各人、村と周囲を調査し
最後に集会所に行き、そこで情報をまとめることになった。


「皆さんの様子を見る限り、蛇の毒ですね。
いくつか持ち合わせの薬草があるので、調合してみます。場所は……どうしましょう」
村長の家から出る際に渡されたいくつかの薬品を運ぶため、ユーノとレウスを引き連れ
病に倒れた者たちがいる小さな診療所へ向かい、彼らの病状や体調を確認させて貰った。
「村長から集会所を自由に使ってくれと言われたから、そこで調合したらどうだ?
セイリオスもいるから色々手伝ってくれるよ」
ネアの村での一見以来、ユーノは極端に委縮する事がなくなり
ハキハキと喋るようになっていた。
「すぐ治してやりゃいいじゃねえか。お前の力でぱぱっとよ」
俺も気になっていた事をレウスがサラッと口にする。
以前聞いた時は、聖職者として秘密にしなければいけない事があるとだけ言われ
診療所を追い出された。
手伝っていたセイリオスもユーノの主張を汲み取ってか、濁すばかりで
結局なにも分からずじまいだった。
「なんでもかんでも、すぐ力にすがるのは良くありませんよ」
「あぁ?どういうことだ。俺様にもわかるように説明しろ」
「ち、治癒の力は本来、対象者の体力や気力がある事を前提にしているんです。
戦闘中は外傷を認知する前に、即効でかける事で皆さんの脳を騙せています。
戦うことで興奮してますし、元々訓練を積んでいるので融通がきくんです…。
ですが既に異常を認知、衰弱している一般の方の場合。それはできません…。
治したところで、回復に体力が追いつかず元も子もなくなってしまう。
体力を戻しながら、薬でゆっくり治す方が確実なんです」
若干生意気にもなっているような気はするが……元気な事はいいことだ。
「てめえなりの考えがあるってわけか」
レウスは撫でているのか揺らしているのか分からない調子でユーノの頭を掴んでいる。
「ひええ……!頭に触れるなんて!!無礼です!!サイッテーです!」
懐いた相手以外と話すことを滅多にしなかったユーノが誰かと会話している。
その様子につい頬が緩んでしまう。
「副団長、なんで、なんで笑ってるの……っ。助けて…!」
「レウス。そうやって人の頭を抑えるのは良くないぞ」
「撫でてやったついでに、つけあがる頭を引っ込めてやったんだよ。しつけだ、しつけ」
明らかに面白がっていたように見えたが…。
「……ふんっ、ぼ、僕は調合があるので失礼します。
えっと……副団長たちは、どうするんですか?」
「水質調査にいくよ。レウス。ついてきてくれ」
「はあ?」
沼に近づくにつれ霧が濃くなり、視界が霞み、奥の方にあるはずの木々はぼやけて見えた。
以前と違い村に早く着いたからだろうか?

あからさまに嫌な顔をするレウスに前回は折れてしまったが、
どこで風紀が乱れるか分からないからこそ、ここでサボらせる訳にはいかない。
「荒事以外、俺の出る幕はねえ」
不貞腐れてる…?
思えば彼は王都にいた時から職務はしっかりこなしていたが、
どこか戦い以外に興味のない問題児だと決めつけていた。
騎士団が編成されてまもない頃、喧嘩をする団員もいた中で、
彼が人に危害をを加える事は一度もなかった事を知っていたのに。
闘技場。
戦う姿をお客に見せる空間ということ以外、俺はよく知らない。
騎士団の仲間になった以上、そこに身を置いていたレウスに対して、偏見を持たないようにと考えていた。
いつ暴れ出すのかわからない猛獣を起こさないよう接していたのは、団員ではなく、俺自身だ。
やる前から、できないと決めつけられていれば。
不貞腐れて当然だ。
「……ちゃんとやってくれるからレウスに頼んでるんだよ」
「ッチ、どっかの頭巾ジジイと同じようなこと言うんだな。流石は腰巾着だ。
ビビリチビがてめえで考えるようになったんだから、てめえも、てめえの考え持てや」
「ユーノのことも、その……興味持ってくれて嬉しいよ」
「はぁ?とっとと行くぞ」
相変わらずの悪態だが、断る事はしない。
水質調査用のキットを取りに沼の近くに建てられた備蓄倉庫へと行く。
村長から使ってくれと言われたキットはどれも、新品ではあったが、古めかしい物だった。
形もそれぞれバラバラで、中には魔力を探知するだの呪いがどうとか
もはや何を調査するのかわからない物まである。
「おい、それ使い物にならねーだろ。ここ、見ろよ。
目が良い癖に劣化してんの選んでんじゃねえよ」
「あ、本当だ。ありがとうな。ちなみに俺は視力が良い訳じゃないぞ。広範囲を見れるだけで」
「うるせえ、一言多いんだよ!」
渋々ついて来てたとは思えない足取りで、レウスは備蓄倉庫から出て行く。
ついていくように劣化していない調査キットを一通り持って沼へと向かった。
しおりを挟む
感想 755

あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...