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10-6. (とある子爵の誤算)
しおりを挟む予想通りというか、予想以上に、貴族院での議論は混迷を極めた。
そんな中、宰相の思いがけない提案で、反対に私はピンチを迎えている。
新参の我が子爵家は、有力貴族にぶら下がっているだけの金魚のフンだ。いや、金魚のフンのフンでしかない。
新設される「浄化院」に入ることなど、夢のまた夢だろう。今だって、浄化院の具体的構想に関する議論に入れやしない。
「浄化院」が立ち上がった時に、自分の所属する貴族の派閥の力が少しでも強くなることを、今から願うばかりだ。
結局、王の意図から始まった3つの王令草案は、「浄化院」を立ち上げた後で、その専門家会議の中で再度審議されるらしい。
それで、結論が出るとみんな本気で思っているのだろうか?
「貴族院」が「浄化院」になったところで、多少、魔術師団や医局からの意見が入るようになったからと言って、覇権争いの縮図は変わらない。
聖女を王宮で養育するという草案は、「浄化院」権限で破棄できても、聖女をじゃあどこで養育するのかとなった時に、また揉めるに決まっている。
良くて、「貴族院に参加している全貴族邸」から、「浄化院が(派閥の力によって)決めた有力貴族の館」に変わるだけだ。
だったら、新参の我が子爵家からすれば、自分が参画できる貴族院の方がまだマシだった。
誰だよ、「浄化院」なんて提案したヤツ。
・・・宰相様だよ。文句なんて言えるわけがない。
私は、ため息をつきたい気持ちを抑えながら、自分の影響力が1から0に変わった議会が終わるのを、首を長くしてただひたすら待っていた。
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