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2-2.
しおりを挟む「よくお似合いです。」
部屋からでた遙香を見て、フォンは言った。
侍女が用意していた服は、濃い藍色の生地のワンピースで、胸元や裾に刺繍が入っていた。
裾丈は、踝が隠れるほどだったが、腰の高めの位置からなだらかに膨らみが切り替えられているタイプだったので、ロングスカートを履き馴れていない遙香でも、足回りに纏わりつくようなことはなかった。
入浴後、仕上げにと薄く化粧を施され、肩より少し長い髪はハーフアップにまとめられた。
フォンから見て、遙香の召喚時の瞼の腫れはわからなくなっていた。
「ありがとうございます。」
遙香は静かに礼を言った。
フォンは、遙香に手を差し出しながら、
「エスコートさせていただいても?」
と、微笑む。
遙香は、受けるべきかと逡巡したものの、
「あの、申し訳ありません。エスコートを受けるような生活をしてきていませんので、案内だけ、お願いします。」
と、はっきり断った。
想定内だったのか、フォンはすぐに、
「かしこまりました。では、こちらへ。」
と、食堂へ遙香を案内した。
夕食は、広い食堂で、遙香とフォンの二人だけであった。
本来、コースのように一品ずつ運ばれてくる料理が、今夜は遙香が席に着くとすぐに目の前に並べられた。
「マナーなど、これから学んでいただくことになりますが、本日は、この国の料理を楽しんでいただければ結構です。味付けの好みなどありましたら、遠慮なくお申し付け下さい。」
フォンからその様に言われたが、遙香は食欲がわいてはこなかった。
しばらく、まともに食事をとっていなかったことを思い出す。
目の前には、ミシュランで星が付く高級レストランのような豪華な料理が並んでいる。
遙香は、スープとリゾットのようなものだけ少し口にした。
「お口に合いませんか?」
遙香の様子をみて、フォンが聞いた。
「いえ、とても美味しそうな料理なのですが、食欲があまりなくて。もったいないことをしてすみません。」
「お気になさらず。後でフルーツなどを部屋に運ばせましょう。」
フォンはそういうと、給仕の者になにか指示を出し、食事を再開した。
それ以降、会話もなく、静かな夕食が終わった。
給仕がテーブルを片付けると、フォンは遙香に向かって言った。
「この後、世話係の紹介にお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
遙香は、頷いた。
「では、サロンにご案内いたします。」
そう言ってフォンが立ち上がり、遙香も続いて食堂をあとにした。
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