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1章 呪いの女
263話 遅れて来た冒険者
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(トレイ目線)
タイガと別れてから5日、王都メルガパリシアの正門を出て直ぐのところで街道の先を見つめていた。
タイガと別れたのちその日のうちに王都へ到着し、まずは王国騎士団に掛け合った。
だが王の書状やスズナからの任命証を見せても取り合ってはもらえず、それどころか虚偽の疑いをかけられそうになったので退散した。
その次に頼ったのは王都のギルドだった。
ここでは王の書状はすぐさま鑑定されて、本物であることが証明され、王への確認も直ぐに行われた。
結局王は聖女の件は完全に冒険者シモン任せで特に何の対策も行っていなかった。
王都のギルドの幹部の人が言うには、こんな事が動いていることが知れれば貴族の反感が大きく王の立場も危うくなりかねないと擁護していた。
だけどトレイの情報は一度確認されることとなり、ココルタ領にギルド経由で魔法で連絡を行い、街道に傭兵が送られて聖女護衛隊が全滅したことは確認され、タイガが帰還させていたものたちの証言で聖女の危険性も伝わった。
そこからは王都までの街道は傭兵を配置されて聖女がくることに備えられた。
そして一昨日、街には聖女護衛隊が全滅、聖女は行方不明と噂が流されて聖女歓迎ムードは一変し人々は悲しみに満ちている。
本来到着予定だった昨日はそれでも王都正門には大勢の人が集まった。
俺は気が気じゃなく、聖女の代わりにタイガが現れることをひたすら願った。
でも結局聖女もタイガも現れなかった。
そして今日、一睡もせずに街道を見ていた。
今日も正門には聖女が来ないかと人は集まっている。
俺はシモンの到着を今か今かと待っている。
シモンは今日到着予定だ。
妨害工作がうまくいき王都まで来れた場合は正門で落ち合うようにとスズナに言われていた。
早くシモンと合流してタイガの無事を確かめたい。
その思いで気が逸る。
昼前になり視界に不思議なものが映った。
正門から離れた街道の真上の空から人が2人降りてきている。
あれのどちらかが冒険者シモンだと確信した。
直ぐに走ってその人物の元へと向かう。
「おーーい!おーい!!」
呼びかけに気づいて2人の男は俺の方に移動してきてくれた。
「ランダバウト兵士団のトレイっす!貴方たちはシモン様とライ様で間違いないっすか?」
「ああ、そうだとも、僕がシモン、こっちがライだよ」
黒髪の長髪に高そうなローブ姿の男性がシモン、白髪の短髪で半袖シャツと短パンすがたの男性がライだった。
伝説の冒険者がどれほどのものかと思っていたが凄くラフな格好だ。でも装いはこの国のものとは異なっているのでどこかの国ではちゃんとした姿なのかも知れない。
あとライは少し顔がこわい。
「なんだービビってんのか?」
姿を確認していたらライに睨まれて心臓がドキッとして汗が噴き出てくる。
「こら!脅すな!」
「いたっ!わーかったって!」
シモンはライに蹴りをいれていた。
「それでトレイくん、状況を教えてくれるかな」
「はいっす!現在俺の仲間が単独で聖女本人を足止めしてるっす。場所はこいつが連れてってくれるはずっす!」
タイガから託された式神をシモンたちに見せた。
ここ数日心細い俺を励まし続けてくれた存在だ。
「ほー式神とは古風だねー面白い」
「はは、おもれーのがいるじゃねえか!」
なんだか式神はSSランク冒険者に受けがよく、俺は少し嬉しくなった。
「しかし聖女と接触しちゃってるのかな?不安だ、ライ直ぐに出るけどいいかい?」
「構わねえよ!いつでも戦える」
「よし、じゃあトレイくんも移動しよう。詳しいことは移動しながら」
「了解っす!」
「それじゃあ、3人まとめてフライ!」
シモンの声と共に魔法が発動して3人とも空中に浮かび上がる。
「おわぁぁぁぁ!」
「ははは、じっとしてて、制御は僕がやるからね」
慣れない浮遊感に体をばたつかせたがシモンの言葉でとりあえず直立を維持する。
「式神、聖女のところへ頼むっす!」
俺の言葉にくるくる回って式神が承認の意を示し3人の前を飛び出す。
「それじゃいくよー」
シモンがいうと体がどんどん地面から離れていって怖い。
「おめーとあ1人のやつ2人で聖女ってのの妨害してたのか?」
ライが俺に話かけてきた。
色々伝説を残している人物なので話すのに緊張してしまう。
「も、元々は5人だったっす!でも早々と2人が聖女に接触されて呪い受けてしまって、もう1人の仲間に連れて帰ってもらって。だからほとんど2人というか俺はほぼ何もしてないんで1人で妨害してたっすね」
「はは!見どころある奴が居るじゃねえの」
「スズナ様が当てにしてた例の鬼君かい?」
「そうっす。鬼族のタイガっす」
「鬼がこっちにいるのは珍しいな」
「珠夏国の生き残りだってよー」
「ほーそうなんか。それじゃまだ生きてそうだな」
珠夏国は魔族に滅ぼされて運良く生き延びたものは極少数なのだという。
タイガの悪運の良さに期待しよう。
「聖女の護衛達はどうなったんだい?」
「全員呪われてたっす。タイガが半分ほど引き離して眷属にして無理やり解放してたっすけど、もう半分は聖女に殺されてしまったっす。
王都から馬車で5日の場所で足止めしてたら、聖女だけ少数連れて高速で移動を始めてしまったんで、仕方なくタイガが1人で止めに入ってくれたっす」
「そうか、僕らが遅くなったあまりにかなり犠牲を増やしてしまったみたいだね。申し訳ない」
「なあシモン、鬼ってそんな眷属持てたか?」
「あー今の鬼族なら1人ぐらいじゃないかな?」
「そうなんすか、タイガは20人以上作ってたっすよ?!」
「うーん先祖帰りかな?」
「はは!おもれーおもれー!生きてりゃ一つ勝負してみてーなー!」
いくらタイガが強くても伝説の冒険者の相手になるのだろうか。
でもその勝負はかなり気になる。
タイガの本気はいつか見てみたいと思う。
式神の案内でしばらく飛ぶと森の上にタイガが作ったもう一体の式神が見えた。
その真下の森はかなりぐちゃぐちゃに荒れていて激しい戦闘の後を物語っていた。
タイガと別れてから5日、王都メルガパリシアの正門を出て直ぐのところで街道の先を見つめていた。
タイガと別れたのちその日のうちに王都へ到着し、まずは王国騎士団に掛け合った。
だが王の書状やスズナからの任命証を見せても取り合ってはもらえず、それどころか虚偽の疑いをかけられそうになったので退散した。
その次に頼ったのは王都のギルドだった。
ここでは王の書状はすぐさま鑑定されて、本物であることが証明され、王への確認も直ぐに行われた。
結局王は聖女の件は完全に冒険者シモン任せで特に何の対策も行っていなかった。
王都のギルドの幹部の人が言うには、こんな事が動いていることが知れれば貴族の反感が大きく王の立場も危うくなりかねないと擁護していた。
だけどトレイの情報は一度確認されることとなり、ココルタ領にギルド経由で魔法で連絡を行い、街道に傭兵が送られて聖女護衛隊が全滅したことは確認され、タイガが帰還させていたものたちの証言で聖女の危険性も伝わった。
そこからは王都までの街道は傭兵を配置されて聖女がくることに備えられた。
そして一昨日、街には聖女護衛隊が全滅、聖女は行方不明と噂が流されて聖女歓迎ムードは一変し人々は悲しみに満ちている。
本来到着予定だった昨日はそれでも王都正門には大勢の人が集まった。
俺は気が気じゃなく、聖女の代わりにタイガが現れることをひたすら願った。
でも結局聖女もタイガも現れなかった。
そして今日、一睡もせずに街道を見ていた。
今日も正門には聖女が来ないかと人は集まっている。
俺はシモンの到着を今か今かと待っている。
シモンは今日到着予定だ。
妨害工作がうまくいき王都まで来れた場合は正門で落ち合うようにとスズナに言われていた。
早くシモンと合流してタイガの無事を確かめたい。
その思いで気が逸る。
昼前になり視界に不思議なものが映った。
正門から離れた街道の真上の空から人が2人降りてきている。
あれのどちらかが冒険者シモンだと確信した。
直ぐに走ってその人物の元へと向かう。
「おーーい!おーい!!」
呼びかけに気づいて2人の男は俺の方に移動してきてくれた。
「ランダバウト兵士団のトレイっす!貴方たちはシモン様とライ様で間違いないっすか?」
「ああ、そうだとも、僕がシモン、こっちがライだよ」
黒髪の長髪に高そうなローブ姿の男性がシモン、白髪の短髪で半袖シャツと短パンすがたの男性がライだった。
伝説の冒険者がどれほどのものかと思っていたが凄くラフな格好だ。でも装いはこの国のものとは異なっているのでどこかの国ではちゃんとした姿なのかも知れない。
あとライは少し顔がこわい。
「なんだービビってんのか?」
姿を確認していたらライに睨まれて心臓がドキッとして汗が噴き出てくる。
「こら!脅すな!」
「いたっ!わーかったって!」
シモンはライに蹴りをいれていた。
「それでトレイくん、状況を教えてくれるかな」
「はいっす!現在俺の仲間が単独で聖女本人を足止めしてるっす。場所はこいつが連れてってくれるはずっす!」
タイガから託された式神をシモンたちに見せた。
ここ数日心細い俺を励まし続けてくれた存在だ。
「ほー式神とは古風だねー面白い」
「はは、おもれーのがいるじゃねえか!」
なんだか式神はSSランク冒険者に受けがよく、俺は少し嬉しくなった。
「しかし聖女と接触しちゃってるのかな?不安だ、ライ直ぐに出るけどいいかい?」
「構わねえよ!いつでも戦える」
「よし、じゃあトレイくんも移動しよう。詳しいことは移動しながら」
「了解っす!」
「それじゃあ、3人まとめてフライ!」
シモンの声と共に魔法が発動して3人とも空中に浮かび上がる。
「おわぁぁぁぁ!」
「ははは、じっとしてて、制御は僕がやるからね」
慣れない浮遊感に体をばたつかせたがシモンの言葉でとりあえず直立を維持する。
「式神、聖女のところへ頼むっす!」
俺の言葉にくるくる回って式神が承認の意を示し3人の前を飛び出す。
「それじゃいくよー」
シモンがいうと体がどんどん地面から離れていって怖い。
「おめーとあ1人のやつ2人で聖女ってのの妨害してたのか?」
ライが俺に話かけてきた。
色々伝説を残している人物なので話すのに緊張してしまう。
「も、元々は5人だったっす!でも早々と2人が聖女に接触されて呪い受けてしまって、もう1人の仲間に連れて帰ってもらって。だからほとんど2人というか俺はほぼ何もしてないんで1人で妨害してたっすね」
「はは!見どころある奴が居るじゃねえの」
「スズナ様が当てにしてた例の鬼君かい?」
「そうっす。鬼族のタイガっす」
「鬼がこっちにいるのは珍しいな」
「珠夏国の生き残りだってよー」
「ほーそうなんか。それじゃまだ生きてそうだな」
珠夏国は魔族に滅ぼされて運良く生き延びたものは極少数なのだという。
タイガの悪運の良さに期待しよう。
「聖女の護衛達はどうなったんだい?」
「全員呪われてたっす。タイガが半分ほど引き離して眷属にして無理やり解放してたっすけど、もう半分は聖女に殺されてしまったっす。
王都から馬車で5日の場所で足止めしてたら、聖女だけ少数連れて高速で移動を始めてしまったんで、仕方なくタイガが1人で止めに入ってくれたっす」
「そうか、僕らが遅くなったあまりにかなり犠牲を増やしてしまったみたいだね。申し訳ない」
「なあシモン、鬼ってそんな眷属持てたか?」
「あー今の鬼族なら1人ぐらいじゃないかな?」
「そうなんすか、タイガは20人以上作ってたっすよ?!」
「うーん先祖帰りかな?」
「はは!おもれーおもれー!生きてりゃ一つ勝負してみてーなー!」
いくらタイガが強くても伝説の冒険者の相手になるのだろうか。
でもその勝負はかなり気になる。
タイガの本気はいつか見てみたいと思う。
式神の案内でしばらく飛ぶと森の上にタイガが作ったもう一体の式神が見えた。
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