黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

254話 VSサファイア

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「トレイ走れ!下からくるぞ!」
「ぬわぁぁぁぁ!」

俺の指示を受けてトレイ瞬時に動き出した刹那トレイの足元から2本の剣が飛び出して来た。
そしてそのままトレイを追いかけ始める。
俺の強化を受けたトレイはかなり素早いので剣の攻撃はなんとか交わせている。
サファイアの意識がトレイに向いたので俺は気配を薄めてサファイアの意識の外に抜けて一気に詰め寄る。
俺が消えたとわかった瞬間サファイアは警戒を強めたがその隙に一発叩き込もうとするが、サファイアの周りから急に3本の大剣が現れて彼女を守るように動き俺の攻撃を阻んだ。

「収納スキルか!」

トレイ情報では5本の剣だったが既に6本の剣が宙を舞っている。
何本動かせるのかわからないし収納スキルは別空間に道具を入れて置けるスキルだ。
何本剣も持っているかもわからない。
そしてサファイアは追加でもう一本細身の剣を空間から取り出し手に構えた。

「ふふふ、不意打ちが得意というならばこちらは攻め続けるまで」

サファイアの意識が俺に刺さり4本の宙を舞う大剣がこちらへ向くと刀身が燃えだした。
そしてサファイアが一瞬消えたと思う速さで俺に迫り切りかかる。
それは回避はせずに纏った氣で受ける。

「チッ!」

すぐさま追撃の燃える大剣が襲い来るが間に置いた水球の魔法に突っ込ませて瞬間に凍らせて砕く。
サファイアが状況を把握する前に思いっきり威圧をして怯ませ、サファイアに氣を大きく纏ったガチガチの拳を叩き込み、更に俺の氣をぶつけるように送り込んで、サファイアの氣を掻き乱す。
もろに攻撃が入ったサファイアは大きく吹き飛んでいった。
トレイを追っていた剣の制御も切れて地面に落ちた。

「すげえ、一撃!団長が飛んでったっす」
「倒せたか確認するまで気を抜くなよ」

地面に落ちた剣も拾って力任せに折ってから捨てる。
サファイアの様子は氣で探っていた、氣を乱せば体に力が入らなくなり意識を失う。
サファイアの氣も乱れていたが落ち着いて行くのが早い。
氣の扱いに長けていれば整えるのは早いのだがサファイアは意識が無いのに回復している様子がある。
殴った時の体へのダメージも回復しているようだ。

「継続的な回復がかかってるな。これは俺たちを足止めするために送り込んできたな」
「どうするっすか?」

めちゃくちゃ面倒だ。
放置すればまた俺らを襲い出す。
倒せばこいつは恐らく躊躇いもなく自死を選ぶ。
俺らがやった人質をけしかける作戦を逆にやられている状態だ。
俺は決してサファイアを死なせたい訳ではない。
かくなる上は・・・

「やりたくは無いが、サファイアを俺の眷属にして命令するか・・・」

本当ならば眷属なんて作りたく無いし、俺の眷属はエドガーだけがよかった。
モーガンもガルシアも仕方なくではあるが、それでも俺は2人を気に入ってるので受け入れる。
でもサファイアの事なんて全く知らないし、地位の高いものを傀儡にできるようなのはあまり知られたく無いし面倒くさい。
しかしすごーく嫌だがこの状況を素早く切り抜けるにはこれしか無い気がする。
まあやるからにはちゃんと責任は持とう。

意識を取り戻しつつあるサファイアの隣まで行くと、右手に纏った氣を刃物の形にして左の掌を切り裂き血を出す。
魔力を込めた血を操作してサファイアの口から体内に入れる。
サファイアの体がびくりと跳ねて俺の魔力が全身を駆け巡るのを感じた。
サファイアの体に手をそてえ乱れた氣を整えてやり回復魔法をかけると目を覚ました。
すぐに俺に殺気が来るが、俺の中に出来た眷属の繋がりを意識してサファイアに命令をする。

「動くな」
「ぐっ!何をした!」
「眷属サファイアに命じる。
聖女を敬うな、聖女の為に死ぬ事を禁じる。
そして俺たちへの攻撃をやめてギルダナに帰れ。
護衛隊の下へは戻るなよ」
「ぐっ・・・何を・・・わかっ・・た」
「よし。無理矢理ですまないな。
俺の名はタイガだ。何か俺が力になれることがあるのならば手をかそう」
「もー・・・どうなってるのよ・・聖女様・・」
「聖女に縋るな」
「ぐぅ・・・」

サファイアはいじけて地面に丸まってしまってしまった。

「ほら俺たちは早く行かなければいけないんだ、あんたもさっさと帰れ」
「わかったわよ!あなた手をかすって言ったわよね」
「帰る手助けはしないぞ」
「どうしてもだめ、私無一文で食料も持ってないのよ」
「嘘じゃないよな?」
「本当よ!」
「はー金と食糧は少しやる。後は自分で何とかしろ」

俺は荷物から3000ロング分の硬貨と食糧を分けた。
パンが今夜分で終わる。
分けた荷物は収納スキルで何処かにしまわれていた。
なんでそんな便利なものがあって無一文なんだ。

「あなた何者なの、どうして聖女様を邪魔するの?」
「俺はただの鬼だ。そんでほれこれ見ろ」

俺はスズナから預かった国王の聖女討伐の許可状とスズナからの任命証をサファイアに見せた。

「何これ、聖女様を討伐なんて王はなんて愚かな事を。聖女様が悪なわけ無いじゃ無い」
「聖女を信じるな」
「うっ・・・」
「そもそも何で聖女を信じてる。何故敬うようになった、見た瞬間からそうだったろ。おかしいと思わないのか?」
「思わないわ」
「それがおかしい、それが聖女の能力だ。
お前は利用されてるんだ」
「そんな、嘘よ!」
「俺を信じろとは言わないが、事実だ。
これ以上問答はしないぞ、俺たちは聖女を止める。アンタは帰れ」

サファイアの返事を聞かずに俺はトレイを小脇に抱えるとそのままサファイアの元から走り去った。
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