黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

248話 ゴーレム隊お試し版

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聖女の護衛隊の前をゆく商隊が先に俺が生み出したゴーレム達と会敵して戦闘が始まった。
ゴーレムの動きは遅く次々に魔法が打ち込まれる。
花が咲いてようがお構い無しだ。
酷いことをする。

だがこれも見越してゴーレムの中には防御系の魔法陣をいくつか仕込んでいる。
花が剥がれるだけでゴーレム自体にはそれ程ダメージはない。
それに花を咲かす魔法の魔法陣もついでに仕込んだので花が剥がされてもまたすぐに生えてくる。
一見すると再生しているかのようだが、仕込んだ魔力が消費される以上見掛け倒しだ。
ちょっとでも混乱してくれれば上等。

商隊の護衛たちが時間を取られるうちに聖女達の護衛も加勢出る。
魔法の効果が薄いとわかると物理に切り替えるがそっちもそこそこ硬くしている。
それに大きく硬い腕を素早く振り回させて動きを牽制させる。
あっさりやられたりはさせない。

そして周りに置いた水ゴーレムたちは土のゴーレム達よりも素早く動く。
水ゴーレムの核は小さな水球だ。
それがゴーレムの水の体の中を動き回らせている。
核を穿たなければ水ゴーレムは再生する。
そして攻撃手段は人に纏わりつくことだ。
まとわりつけば他の兵士からの攻撃も受けにくく混乱を生んでくれる。

「なかなかエグい光景っすね」
「だろー!魔法学園いたときはちょくちょくゴーレム合戦が起きてたからな。本職ほどじゃないがまあまあやれるんだよ」

さてそろそろ追加もく頃合いか。
お花ゴーレムと水ゴーレムに苦戦させる中で追加が来れば絶望感も出てくるだろう。
後からくるゴーレム達には馬車を襲わせるように命令してある。
ここで壊してくれればより時間も稼げる。
数分お花ゴーレムたちの攻防を見守っていると聖女一団の後方の草原の地面が盛り上がりゴーレムが3体バラバラの方向から現れる。
それに続き10体の水ゴーレムも草原の奥から現れだす。
お花ゴーレムのために護衛を前方に集めていたので不意をついた形だ。
でも流石兵士団、素早く部隊を分けて対処に向かわせる。
でも水ゴーレムの対処が間に合わずかなり人を減らせている。
水ゴーレムに取りつかれた兵士を救うべく風魔法で水を付し飛ばそうとしたり乾燥の魔法をかけてみたりなど有効策を探して時間がかかってる様子だ。

「水のゴーレムって対抗策あるんすか?」
「あるぞ、水魔法で流せばいい。水牢の魔法なら捕まえることもできる」
「いやーこの混乱中に考えつかないっすよ。水の魔物に水って発想しないっす」
「軟体系の水の魔物は水与えると肥大化するのが当たり前だからな」

スライムを水牢で捉えるのはどうなんだとなるがしっかり水を制御できていれば奪われることはないので大丈夫だ。

「苦戦してるなーよしよし」
「あ、団長が動いたっす」
聖女の馬車の近くにいた赤髪の女性が一団の最前列まで駆け出していった。
戦士兵団の団長は女だったのか。
たしかサファイアって名前だ。赤いけど。

サファイアはお花ゴーレムまで速攻で辿り着き振り回す腕を軽く交わすとゴーレムを剣で縦に一線。次の瞬間お花ゴーレムの1体ば爆散した。

「うわー1撃!」
「爆破系の魔法?剣に乗せてたのか?」
「団長は魔法剣士っす」
「成程、聖女の強化魔法も乗ってるな。膂力で防御魔法突発したか」

ゴーレム1体を倒したサファイアは次々に指示を出し始めて乱れた戦線は徐々に整いだす。魔法職の数人がゴーレム達に氷結の魔法を放ちだした。
仲間が水ゴーレムに取りつかれていてもお構いなしで凍らせていく。
土ゴーレムも凍らせられると動きが鈍る。
少しずつ形勢が逆転し始めてしまった。

「団長やっかいだなー」
「そっすねー立て直しが上手いっす」
「このままじゃやられるし少し応援をやるか」

俺は再びゴーレムを作り出す。
水の体をベースに手足には石を仕込んだ四足歩行の細身の虎のようなゴーレムだ。
「よし行ってこい!」
虎風のゴーレムは俺たちから迂回するようにかなりの速度で走っていった。
狙いはサファイア。
攻撃を喰らえばひとたまりもないだろうからひたすら距離を取らせて回避を優先しつつ小石を投げつけさせる。
氷魔法対策に凍結防止の魔法陣だけ仕込んである。
これで暫く時間稼いでもらいたい。
追加ゴーレムが無事サファイアを釘付けにさせたところを見届けてもう一発仕掛ける。

「出よ火の鳥」

俺の周りに濃く満たした魔力から巨大な炎の鳥が生まれて空高く飛び上がる。
火属性の上級魔法火の鳥だ。
伝説の生き物を模していて。やたら派手な魔法だ。

「さて離れるぞ。場所ばれるからな」
「はいっす」

そういうとトレイを背に乗せて全速力で先へ走る。
そのうちに炎の魔法が空の上から聖女一団目掛けて急降下していった。
一応振り向いて様子を観察する。
上級魔法なんて使う機会が早々ないので少し楽しみだったのだ。

聖女護衛隊の頭上から突っ込んだ炎の鳥は護衛隊を包み込んだ見えない壁に阻まれて爆発した。

「魔法防御なんて張ってた様子なかったぞ!」

魔法防御に氣を向けると聖女の魔力を感じる。
あの一瞬で護衛隊全てを覆い尽くす防御を展開したのか。

「はーやっぱりバケモンだ」
「ちょっと安心したっす。あんなの食らったら死んじゃうっすよ」
「あの魔法派手なだけで威力はそんなにだ。放火の魔法として優秀だけどな」

結局防がれて終わってしまったが頭上で派手な爆発があったので護衛隊たちには混乱が起きている。
サファイアも虎風ゴーレムにかかりきりで部隊を立て直す余裕がなさそうだ。

「さて、本当にずらかろうここでの戦闘はほとんど意味ないしな」
「そっすね、明るいうちにもう少し先も見ときたいっすね」

時間はもう空が赤くなり始めている頃だが宿場まで2時間の距離、戦闘が長引いたとしても宿場までは強行するだろう。
旨みが少ないが今後の作戦を練るためには役に立った。
いまだに戦闘を続ける聖女一行を背にして俺たちは先を目指して走り出した。
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