黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

243話 蘇生作業

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ガルシアとモーガンの蘇生は傷を仮埋めして身体機能が戻る状態までに回復できたので、体の中の魔力流れの再現とその流れに魂を固定する作業に移る。
エドガーの時は俺の魔力の流れを参考に再現してやったが、今回はライアンの魔力の流れと魂の位置を再現しようと思う。
何故かというとライアンはスキル魔法の適合者だからだ。
スキル魔法を習得するためにはスキル魔法の規格にあった魔力の流れをもつ者でないといけない。
基本スキルに適合する人間は普人族しかいないのだが、これがうまくいけば獣人でスキル持ちという凄い奴になれるかもしれない。
せっかく生き返るのだがらパワーアップさせてやるのもいいだろう。

「ライアン、これから2人の体の中の魔力を操って壊れてしまった魔力の流れを再現するんだが、ライアンの魔力の流れを参考に再現させてもらってもいいか?」
「え、人の魔力操れるの?!」
「2人は俺の眷属になってしまってるからな。俺の意志で動かすこともできる。あまりやりたくない事だがこの状況に置いては蘇生できる手段になるんだ」
「そうなのか、まあいいよ。
僕の魔力の流れを作るってことはスキル使えるようになるかもしれないの?」
「そういうことだ、面白そうだろ。
そんじゃ2人の間に来て手を添えておいてくれ」
「わかった。獣人でスキル持ちかー、確かに面白そうだね、どんなスキル授かるんだろうねー」

俺の指示通りに2人に手を添えている俺の前に来てライアンも2人に手を添える。
俺はエドガーの魔力の流れを基準にして俺の魔力を動かす魔法陣を思い出しつつ魔法を組み立てる。
ライアンの魔力の流れを基準に俺の魔力が2人の魔力を動かして流れを作っていく。

「魔力の流れを再現すると生き返るの?」
「そうだな。再現してそこに魂を結びつかせたら正常な状態に近づけられる」

魂は魔力の流れを作り出して体の意識とつながっている。
だけど一旦魂と意識が途切れると魂が魔力の流れを生み出す事をやめてしまう。
意識とつながっていないと魔力の流れを作れないようだ。
なので蘇生する場合には魔力の流れをを再現して魂と無理やり結びつけてやる事で体の意識とも紐づけられるっぽい。
うまくできれば魂はまた動き出して自ら流れを維持しだす。

ライアンの魔力の流れを氣を使って隅々まで調べて、ガルシアとモーガン2人の体内に再現した魔力の流れと比較する。
隅々まで再現できていることが確認できたら2人の中の魂を探して俺の魔力で拾い魔力の流れの中、ライアンの魂と同じ位置に置き魔力に絡めていく。
氣を通じて生き返ってくれと魂に念じながら、魂の位置を維持していると、徐々に魔力の流れに魂が固定されていくのがわかる。
そして落ち着いていた魂が少しずつゆらめき始めた。
これで一旦大丈夫だろう。
この作業で4時間ぐらいかかった。

2人の魂はやはり聖女によって歪になってしまっている。
僅かだが呪いのような醜い魔力を感じるので2人の中の俺の魔力を使い浄化の魔法を試す。
通常目視じゃなければ浄化は効かないのだが氣で探って感じ取ったものにとりあえず試すと醜い魔力は消えてマナへと変わっていった。
効いてよかったが2人の魂の歪さは元へと戻らなかった。
あまり歪みに意識を取られると怒りで魔法の制御が疎かになるので止めた。

ここまで来ればほぼ作業も終わったようなものだ。
肺と心臓を動かす魔法を作り替えて動きを補助するものにする。
2人の体は既に自らの力で生きる努力を行っている。
後は傷の治癒が済んで目を覚ましてくれれば蘇生は完了だ。

「魔力の再現も済んで2人とも自分の力で心臓も動いて呼吸もしてる。後は目が覚めることを祈るだけだ」
「そっか・・よかった、タイガがいてくれて」
「俺がもっと早く走れてれば間に合ったかもしれないんだがな・・」
「馬の全力ぐらいの速度で走ってたじゃないか。父さん達の判断が速すぎたんだ。僕があんなこと言ったから・・嘘でも言うこと聞くって言っとけば・・」

またライアンの目から涙がぼろぼろとこぼれ出した。

「ライアン・・」

あの時はめちゃくちゃ喧嘩ごしだったからな。
あれが最後の言葉になるなんて辛すぎる。
普段ライアンはガルシアをかなり雑に扱っているが、本当に嫌っていないことは見ていてわかる。

「父さんはさ、本当の息子じゃないのに、ずっと僕のために頑張ってくれたんだ・・・」

ライアンはガルシアのことをポツポツと語り出した。

「ワーカーやってた頃に、僕の本当の父さんに憧れて昔同じチームに見習いで入ってたんだって。
でも冒険者としての仕事に行った父さんは帰ってこなくて、その時にガルシアが僕の面倒見ててくれたからそのまま僕を引き取って育ててくれたんだ。
同じ冒険者になりたいって夢もあったくせにワーカー辞めて安定して稼げる兵士になって。
僕を学校にも行かせてくれて、スキルの適正がある事がわかったら凄い金出して調律を受けさせてもくれた。
僕がいまみんなの役に立てるようになれたのはガルシア、父さんのお陰なんだ。
僕のことになるとほんと必死で、凄く鬱陶しくて・・・やっと子離れさせられると思ってたのに・・・」
「なんか話がおかしな方向に・・」
「おかしくない!父さんはずっと僕に自由に生きろって言って好きにやらせてくれてたんだ。自分は色々諦めたような感じ出して。僕には好きに生きろなんて言う。
でもまだ父さん36だぞ!獣人だから普人族の倍も長く生きれる癖して諦めるの早すぎなんだよ。
僕は父さんにだって自由に生きてほしい。僕の死んだ父さんと同じように冒険者になって欲しいんだ」
「それはライアンの意志なのでは?」
「いいだろ別にー!」

ライアンが本当に物怖じせずに気ままな感じなのはガルシアの育て方のせいなのか。
しかしガルシアは36なのかもっと歳いってると思ってた。

「随分老け顔だよな」
「だよねー昔かららしいよ」
「だれ・・が、老け・・が・・」
「ガルシア!」
「父さん!!!」

ガルシアの意識が戻ったようで目を薄く開き言葉を発した。

「よかった、よかった!!!」

ライアンはガルシアを揺すりながらまた泣いている。
ガルシアの胸の傷はしっかり治癒できてるようだ。
モーガンの方はまだ傷が深く治癒の魔法が終わっていない。
呼びかければ目を覚ますかもしれないが治癒が終わってからでもいいだろう。
とりあえずガルシアが生き返ってくれてよかった。
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