黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

239話 2日目の妨害工作

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真っ暗闇を光の魔法でうっすら照らし出す。
こんな闇の中でも森の中は鳥などの声で結構やかましい。
昨日と同じように横になったまま氣の鍛錬を済ませて天幕を出る。

「ライアン起きろ」

ライアンの天幕の中に明かりの魔法を灯して起きさせる。
「眩しっ!」
「起きたな、移動始めるから支度しろ」
「はーい」

天幕から這い出てきたライアンに氣を送って調子を整えてやると各々移動の準備をした。

「予定は?」
「これから聖女がいる宿場までいって、商人の馬車に細工をする。
ライアンは宿場の外で待ってもらうがいいか?」
「大丈夫、これでも風属性だし探知は得意だよ、何かあっても気づける」
「ライアンは本当便利だな。頼りになる」
「ふふん、また美味いものよろしくね」
「食いしん坊なのか?」
「違うよ、僕一人だと悲惨になるからさ」
「そりゃ可哀想だ。任せとけ」

夜の森の中を明かりの魔法で照らし足早に移動して聖女のいる宿場へ入る。
気配をしっかりと消して消音、透明感、認識阻害と隠密魔法盛り盛りで、ガルシアから聞いていた聖女の護衛の前を走っていたとされる商会の馬車に近づき魔法で細工をする。
車輪の内側に模様を刻む。それだけだ。
これで街道に魔法陣を仕込み模様が上を通った時に魔法が発動するようにできる。

聖女の護衛隊の方にも馬車に細工をしたいが夜の間でも見張りが多い。
隠密を超えて感知されるようなスキル持ちもいる可能性もあるので迂闊には近寄れない。
それでも遠目に氣で護衛隊の様子を探るとほぼ全員が呪われていた。
せっかく呪われていない面子で揃えたのに、聖女が動きまわりでもしたのだろうか。
本当に予定外な事ばかりが起きている。
様子を探った後は宿場から出てライアンと合流した。

「仕込みはしてきた。あと護衛隊の様子も探ってきたんだがほぼ全員呪われてた」
「まじかー、直接触れられるか、見えるすぐ近くにいる事じゃないと呪い受けないんじゃなかったの?」
「俺が前に見た時はそんな様子だったんだけどな。戦士兵団長もいるから動き回れたのかもしれん」
「呪いをどうにかする事ってできないの?」
「人のあり方が変わってしまってるからな。魔法でどうにかできるようなものじゃない。聖女の存在をなくてし時間をかけていくぐらいしか思いつかないな」
「うーんほんと面倒!」
「なってしまったのは仕方がない。とりあえず先に進んで妨害工作をしていこう」
「そうだね」

ライアン共にまだ夜が明けていない暗い街道を進む。
トレイから聞いていた街道が細くなって馬車が追い越しづらい場所の地面に魔法陣を仕込む。

「どんな効果の魔法陣なの?」
「さっき商隊の馬車に模様をつけてきたんだが、その模様のものがこの魔法陣の上を通ると模様の部分が破壊されるような魔法だ。
魔法陣は発動後に消えるし隠蔽にも自信があるからな。自然に馬車が壊れたと思うだろう」
「なるほど、いいかもね」
「街道側に倒れて荷物でもこぼしてくれたら時間が稼げると思う。
壊れた馬車を直すのは修復魔法使えるやつがいたらすぐだから立て直すのは早いだろうけどな」
「修復魔法使えるやついたかなー?魔法学園出身の奴らは覚えてるやつもいるかもしれないけど、兵士で習う魔法じゃないからそんなに練度は高くないかもね」
「調達のワーカーの中には馬車修理に慣れてる連中もいるからな、商隊にもそんなやつがいてもおかしくない」
「そうか、もともと移動してる連中はそんなのに長けてる奴らもいるか」
「とりあえずやってみて様子見だな」

再び街道を進み馬車に仕込んできた模様分の魔法陣を描いていった。
と言っても3箇所だ。
あまりやりすぎると人為的なものと疑われてしまう。
馬車が突然壊れるのもおかしいので街道は泥濘ませたり石を多く置いたり轍を深くしたり陥没させたりなど荒れた感じを装う。
いくら悪路の補修もするにしても全体的に多ければ難しくなるだろう。
数で押していく。

季節的には雨季らしいので荒れていても違和感はないだろう。
これまであまり雨はなかったのだが、今年は雨が少ないのだという。
いっちょ魔法で雨を降らせてもいいかもしれない。
水属性の最上級魔法は大雨を呼ぶ雨乞いの魔法だ。
雲がある程度無いと使えず、成功確率も低いが、おあつらえ向きにここ数日は曇りが続いているし雨季というなら成功確率も上がるだろう。
明日は雨にしよう。
そうしよう。
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