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1章 呪いの女
236話 妨害開始
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まだ暗い時間に目を覚ます。
天幕越しに見る外は野営地の他の者達が見張りで灯した魔法の光や火の光でぼんやりと明るい。
ゆっくりと伸びをしてから横になったまま日課の氣の鍛錬を行う。
1人でやるのは数日ぶりだ。
昨日から少し扱い方が変わってしまった氣しっかりと自分のものにできるように丁寧にいつもの流れをこなしていった。
天幕から外に出て、外に置きっぱなしにしていた鴨スープの残りが入った深鍋に大麦を入れて火の魔法で温める。
その間に天幕を畳む作業をしているとトレイも起きて自分の天幕から出てきた。
「おはよう」
「おはようっす。馬の世話してくるっす」
馬は野営地の隅にある厩舎に預けてあるのでそちらにトレイが向かって行った。
トレイの姿が見えなくなった頃にライアンも起きてきた。
「おはよう」
「おはよーちゃんと起きてるね」
「気絶してなきゃ大丈夫だ」
「何それ」
ライアンは寝起きが悪いようでぼーっとしている。
「ほれ、調子整えてやるからこっち来い」
「なにー?」
手招きしてライアンを呼び寄せると背中を向かせて手を添えて俺の氣を流して身体強化する。
「おーー!これ昨日トレイとか馬にしてたやつ?凄く体が軽くなるなーすげー」
「楽になっただろ。トレイは馬の世話に行ってる。ライアンも支度しとけ」
「はーい」
途中になっていた天幕の片付けを済ませて鍋の様子も見る。
ぼちぼち麦も煮えてきている。
トレイが戻ってきたら、大麦入りの鴨スープを器に取り分けて3人で食べた。
「サラサラして食べやすいけど朝からちょっと重たいねー」
「そっすねー美味いんすけどね」
「ちょっと油くどくなっちまったな。まあ結構動くからこのぐらい食っといた方がいいだろう」
食べ終わるとトレイにも氣を送って調子を上げてやった。
あとはそれぞれ撤収作業を行なった。
空が少し明るくなり出した頃3人で南側の街道へ出る。
「それじゃトレイ先の情報共有頼むぞ」
「ちょくちょく念話入れるからよろしくー」
「了解っす!2人も頑張るっすよ!」
トレイは馬に乗り街道を南下していった。
俺たちは宿場を迂回してギルダナの街方面へ戻るのだが街道は進まずに、周りに広がった畑の間を抜ける。
この時間帯は畑によっては収穫にでた農家の人も見られる。
変な時間帯にいるせいか俺たちは怪しまれてしまっている。
側から見れば畑泥棒に見えなくもないが、流石に図体がデカいせいで目立ち過ぎていると思う。
「あはは、気まずいねー悪いことしてないのに」
「だな、明日からは森もあるんだろ。今日は辛抱だな」
それでもあまり目立つのは良くないので近くに人がいるときは俺とライアンは透明化の魔法をかけて姿を隠した。
余計に畑泥棒っぽい。
1時間ほど北上した所で昨日目星をつけて置いた場所に差し掛かる。
街道脇に造られた肥溜め。
これは付近の畑の肥料として使われるもので、街道に落ちる馬の糞や街道沿いに造られた廁などから集められたものが貯められているようだ。
木枠で造られたそれは普人族の股下あたりの高さまであり地中に掘り下げられて埋まっている。
中身はそこそこいっぱいだ。
街道からは壁が作られて見えないようにされているが作りは粗末だ。
透明化の魔法を使ったまま近づき壁を肥溜めに向かって倒して、肥溜めの木の縁を街道側を壊す。
そして中身に水を注ぎ込んで溢れさせて街道に漏れさせた。
状況は見届けずに急いでライアンの元へ戻る。
「はー最初っから嫌な仕事だ」
「馬車は気にせず通るかもしれないけどねー巡回の兵士たちが気づいて道を止めてくれたら儲けもんだね」
早く立ち去りたいので駆け足でその場を離れて次の地点へ向かう。
ここは土が柔らかいのか轍が大きく凹んでいた箇所だ。
水魔法と土魔法を合わせて使いかなりぬかるませる。
あとはポイントがないので少し北上しつつ大きめの石を街道に投げ込んだりしておく。
通り過ぎる馬車が踏んで故障したり横転でもしてくれないかと期待する。
「聖女より他の奴らが割を食うことしてるよな。心苦しい」
「やってる事地味だし面白くないね」
「トレイに宿場の向こうの様子聞いたか?」
「すぐに山道に入って森の中を進む感じだって」
「そうか、そっちの方がやれる事多そうだな。こっちは切り上げて俺らも先に進むぞ」
「はーい」
体力は自信がないというライアンを背負って街道脇を走って進んだ。
壊した肥溜めのところは悲惨そのもので見るんじゃなかった。
そろそろ聖女出発の時間になる頃だ。
この妨害工作が功を奏してくれると願わんばかりだ。
天幕越しに見る外は野営地の他の者達が見張りで灯した魔法の光や火の光でぼんやりと明るい。
ゆっくりと伸びをしてから横になったまま日課の氣の鍛錬を行う。
1人でやるのは数日ぶりだ。
昨日から少し扱い方が変わってしまった氣しっかりと自分のものにできるように丁寧にいつもの流れをこなしていった。
天幕から外に出て、外に置きっぱなしにしていた鴨スープの残りが入った深鍋に大麦を入れて火の魔法で温める。
その間に天幕を畳む作業をしているとトレイも起きて自分の天幕から出てきた。
「おはよう」
「おはようっす。馬の世話してくるっす」
馬は野営地の隅にある厩舎に預けてあるのでそちらにトレイが向かって行った。
トレイの姿が見えなくなった頃にライアンも起きてきた。
「おはよう」
「おはよーちゃんと起きてるね」
「気絶してなきゃ大丈夫だ」
「何それ」
ライアンは寝起きが悪いようでぼーっとしている。
「ほれ、調子整えてやるからこっち来い」
「なにー?」
手招きしてライアンを呼び寄せると背中を向かせて手を添えて俺の氣を流して身体強化する。
「おーー!これ昨日トレイとか馬にしてたやつ?凄く体が軽くなるなーすげー」
「楽になっただろ。トレイは馬の世話に行ってる。ライアンも支度しとけ」
「はーい」
途中になっていた天幕の片付けを済ませて鍋の様子も見る。
ぼちぼち麦も煮えてきている。
トレイが戻ってきたら、大麦入りの鴨スープを器に取り分けて3人で食べた。
「サラサラして食べやすいけど朝からちょっと重たいねー」
「そっすねー美味いんすけどね」
「ちょっと油くどくなっちまったな。まあ結構動くからこのぐらい食っといた方がいいだろう」
食べ終わるとトレイにも氣を送って調子を上げてやった。
あとはそれぞれ撤収作業を行なった。
空が少し明るくなり出した頃3人で南側の街道へ出る。
「それじゃトレイ先の情報共有頼むぞ」
「ちょくちょく念話入れるからよろしくー」
「了解っす!2人も頑張るっすよ!」
トレイは馬に乗り街道を南下していった。
俺たちは宿場を迂回してギルダナの街方面へ戻るのだが街道は進まずに、周りに広がった畑の間を抜ける。
この時間帯は畑によっては収穫にでた農家の人も見られる。
変な時間帯にいるせいか俺たちは怪しまれてしまっている。
側から見れば畑泥棒に見えなくもないが、流石に図体がデカいせいで目立ち過ぎていると思う。
「あはは、気まずいねー悪いことしてないのに」
「だな、明日からは森もあるんだろ。今日は辛抱だな」
それでもあまり目立つのは良くないので近くに人がいるときは俺とライアンは透明化の魔法をかけて姿を隠した。
余計に畑泥棒っぽい。
1時間ほど北上した所で昨日目星をつけて置いた場所に差し掛かる。
街道脇に造られた肥溜め。
これは付近の畑の肥料として使われるもので、街道に落ちる馬の糞や街道沿いに造られた廁などから集められたものが貯められているようだ。
木枠で造られたそれは普人族の股下あたりの高さまであり地中に掘り下げられて埋まっている。
中身はそこそこいっぱいだ。
街道からは壁が作られて見えないようにされているが作りは粗末だ。
透明化の魔法を使ったまま近づき壁を肥溜めに向かって倒して、肥溜めの木の縁を街道側を壊す。
そして中身に水を注ぎ込んで溢れさせて街道に漏れさせた。
状況は見届けずに急いでライアンの元へ戻る。
「はー最初っから嫌な仕事だ」
「馬車は気にせず通るかもしれないけどねー巡回の兵士たちが気づいて道を止めてくれたら儲けもんだね」
早く立ち去りたいので駆け足でその場を離れて次の地点へ向かう。
ここは土が柔らかいのか轍が大きく凹んでいた箇所だ。
水魔法と土魔法を合わせて使いかなりぬかるませる。
あとはポイントがないので少し北上しつつ大きめの石を街道に投げ込んだりしておく。
通り過ぎる馬車が踏んで故障したり横転でもしてくれないかと期待する。
「聖女より他の奴らが割を食うことしてるよな。心苦しい」
「やってる事地味だし面白くないね」
「トレイに宿場の向こうの様子聞いたか?」
「すぐに山道に入って森の中を進む感じだって」
「そうか、そっちの方がやれる事多そうだな。こっちは切り上げて俺らも先に進むぞ」
「はーい」
体力は自信がないというライアンを背負って街道脇を走って進んだ。
壊した肥溜めのところは悲惨そのもので見るんじゃなかった。
そろそろ聖女出発の時間になる頃だ。
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