黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

224話 留守の間を

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夕方前ギルドに向かう。
仕事を終えたエドガーと合流する予定なのだがまだしばらく時間がある。
今日ギルドで出来れば会っておきたい人物がいる。
会えるかどうかは賭けだったのだがギルドで気配を探ると目的の人物は見つかった。

「よう、ガグ!」
「おお、タイガか、景気はどうだ!」
「さっき大枚叩いて娼妓を買ったからなーほぼ素寒貧さ」
「相変わらず派手な金遣いをしているな。傭兵何があるか分からんから備えはあるべきだぞ」
「最もだなー。ガグこの後メシでもどうだ?少し頼み事をしたいんだが」
「大丈夫だそ!後輩の頼みだからな!ドーンと聞いてやろう。ただし金なら貸せんぞ!」
「その事じゃない」

ガグに頼み事ををすのは悔しいのだが、俺の数少ないこの街での知り合いで適任がこいつぐらいしかいないのだ。
俺が町を離れる間、ガグにエドガーを任せられないかたのむつもりだ。
エドガーにもまだ話していない。
なにしろさっき思いついた事だ。

俺と離れたエドガー1人では解体ぐらいしかやる事がない。
エドガーは真面目だからそれも文句なくやって解体の腕を上げられるだろうが、せっかく色々技術を覚えてきているエドガーを解体一つで止まらせておくのは勿体無いと思う。
だからガグには傭兵としての仕事を見てもらいたいのだ。
ランクも高く、そこそこの腕前を感じる。
それに面倒見がいい。
ガグといれば危険なことにはならないだろうし、エドガーには治癒の魔道具もひとつ渡しているので滅多なことにもならないだろう。

本当は傭兵に必要な経験は山に放り込んで磨かせるつもりだったのだが、俺が想像してたよりも長くエドガーから離れることになってしまったのでやむなく、傭兵として堅実にやっているガグに頼もうと思ったのだ。
頼み事をするならと、ガグには夕刻の鐘のときにギルド前で待っていてくれと告げて制作部門の工房へと向かった、ガグもこれから依頼の報告だとかで都合がよかった。
工房では大急ぎで魔道具を作る。
魔法インクや魔法糸は魔力を込めて操作ができる代物だ。
数回作って慣れているものならばそう時間もかからずに仕上げる事ができる。
なんとか夕刻の鐘までには間に合わせ、治癒の魔道具と温風の魔道具を作った。

ギルド前に行くと既にガグは待っててくれていた。エドガーの気配はギルドの中にいるので報告中だろう。

「待たせたな、これやる」
「おお!なんだこれは?」
「俺が作った魔道具だ、重症でも治せる治癒の魔法が込められた布と体を乾かす魔法が込められた布だ」
「こんな凄いものを貰っていいのか?俺もそんなに金は無いぞ」
「やるんだからいいんだよ、好きに使ってくれ。ただ今治癒の魔道具売ろうとするとギルドに叱られるから止めといたほうがいいぞ」
「いや、売ったりはしないぞ、大切にする。どうやって使うんだ?」
「治癒の魔道具は怪我したときに体にかければ発動する。体を乾かす魔道具も濡れた体に羽織って留め具で止めれば温風が体を乾かしてくれるぞ」
「そうか、簡単でいいな!」
「ガグは魔力が少ないようだからあまり1日に多用はするなよ、魔力が足りなくなれば誰かに魔道具掴んで貰っとけ」
「ああ、わかってるさ、悩ましいもんだな」

オーガ族は人族の中ではダントツで魔力の低い種族だ。
その分体力や筋力が非常に優れているし氣の質も元々高い。
ガグもオーガ族らしく使える魔力は普人族の平均よりも半分にも満たないが、身長は俺よりデカく分厚い筋肉に覆われている。
寸胴な俺と違い均整が取れていてとてもスタイルが良い。エドガーをそのままデカくした感じだ。
横幅や厚みは俺が勝っているが、モテそうなのはガグの方だな。

残念ながらガグは氣を使っている様子はないのだが、体や精神が鍛えられれば自然と氣の質も高くなり、無意識でも体を強くしてくれる。
ガグから感じる氣の強さもまあまあだ。
ガグに魔道具の説明をしているうちにエドガーもギルドから出てきた。

「あれ、ガグと一緒なのか!」
「ああ、メシ誘ったんだ」
「そうか、俺も話してみたかったしな!嬉しいぜ」
「ははは!俺なんかで喜んでくれるなんていい後輩だな!」
「なんかいい店知ってるか?なければ俺たちの行きつけの店になるが」
「そうだなー、スノーシェの酒樽って酒場が安くて美味くていいぞ」
「それ俺らが泊まってるところだぞ」
「おお!そうだったんだな、あそこは遅くなっても素泊まりできるから便利だな」
「まあガグの勧めだしそこでいいか、美味いもんな。エドガーもいいか?」
「おう、もちろん」

全員の合意が取れたのでいつもの酒場へ向かって移動する。
ガグはどれほど飲むのだろうか。
どうせだったら勝負すっか。
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