黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

210話 貴族街の兵舎

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「はーあ、最後でどっと疲れたよー」
「お疲れさん、貴族ってどこも変わらないな」

昼食後、俺とモーガンは西街区の貴族街の中にある戦士兵団の詰め所と隣接する兵舎を訪れた。
他の場所とは違い厳格な雰囲気と派手な内装の場所だった。
貴族たちにに舐められないようにという目的らしいが、ここの兵士が貴族出身者だらけだからということもあるようだ。
実力もそれなりに高いものが揃っているが、プライドもやたら強いらしい。
そして見事に普人族だらけ。
普人族の貴族は他種族に対して排他的なものが多いらしい。
愛人なんかは他種族でも普通に作るらしいのだが、ハーフの子供はさっさと養子に出されて家督を継ぐことはなく、兵士になるような長男以降の次子も家に連なるものとして普人族でないといけないようだ。
この領の方針としては排他的な考えは改めるようにとされていても、貴族の思想は頑固なようで、何をされることはなくても、熊獣人のモーガンも鬼族の俺もとても居心地が悪かった。

既に聖女の護衛候補者の数は190を超えていたのだが、予定の200を超えて40人ほどを選んだ。
呪いを受けてない自称精鋭の貴族出身者全員だ。
プライドが高いので候補者には入れておかないと後で遺恨を残すらしい。
だけどここの兵士が聖女の護衛に駆り出されるかと言えばほとんどそんなことは無い筈なのだそうだ。
せいぜい多くて5名ぐらいだろうとモーガンは予想していた。
危険な任務に駆り出すと、今度は実家がうるさいらしい。
実にめんどくさいという感想しか出てこない。

俺の故郷でも軍部上位の世襲貴族連中は本当に面倒だった。
軍では実力主義が絶対だったので殴って黙らせれば上に立てるのだが、その後が面倒臭い。
あらゆる手段で足を引っ張ってくる。
家ごと潰してやりたくなるがかなり手間がかかる。
俺が家柄を隠していたので、平民出身者として扱われ相当嫌われて散々嫌がらせを受けた。
どこに行っても貴族の関わりというのは面倒だ。

「さてと、俺はこの後少し買い物してから兵舎に戻るが、モーガンはどうする?」
「俺もやることないし付き合うよー。時間できたとはいえ夕方までだし遊びに行けるような時間無いもん」
「それもそうか、さっさと買い物済ませて少しゆっくりしとくか」
「おっけー」

モーガンに買いたいものを相談して俺たちはいつもの兵舎に向かう途中で寄りやすい店に立ち寄り、特にこだわりもないので適当に魔道具作成に使う材料を買い揃えた。
貴族街から兵舎へ戻る1時間半程の間で買い物も終えて、買い食い等もしつつ街歩きを楽しんだ。

「はー疲れたー」

兵舎の部屋へ戻ったモーガンは自分のベッドに倒れ込む。
昨日今日と歩き回っていたし、連日の疲れもあるのだろう。

「夕方まで寝るよー」
「そうか、そんじゃちょっといいことしてやろう」
「男にされても嬉しくないよー」
「そっちじゃない」

一瞬昨日エドガーにかけた射精が止まらなくなる魔法をかけてやろうかと考えがよぎったがやめとこう。
うつ伏せに寝そべったモーガンの背中に手を添える。

「なにすんのー?」
「寝る前に体の調子整えてやるよ」

俺は力強さを持たせた氣をモーガンに染み込ませていく。
毎朝エドガーにやってるやつだ。

「おお!?」

体の中から力が湧いてくるのがわかるのだろう。モーガンが驚いている。
このままモーガンも氣の感覚共有ができないのか試してみたがエドガーのようにうまくいかない。
これはエドガーが俺の眷属なところも関係してるのかもしれない。
眷属ではないモーガンの魔力を操作することもできないので魔力の調子を整えることもできない。
氣を満たしてやって終わりにする。
これで回復力も高くなってるはずだ。

「どうなってるのーすごい力が湧いてくるみたい」
「俺の氣をモーガンに注いでやった。
このまま寝てればしっかり疲れも取れるだろう」
「そっかーありがとー。それじゃ遠慮なく寝させてもらうね」
「睡眠の魔法いるか?」
「お願いーその前に着替えるよー」

モーガンはもぞもぞと起き上がり、堅苦しい兵士の制服を脱いで部屋着へと着替える。
パンツ姿になったモーガンの股間はふっくらとして布越しでも物量を感じる気がした。

寝る体制も整い毛布を被ったモーガンに睡眠の魔法をかけて眠らせてやった。
変に寝付けないと余計に体力使うから、こんな時の睡眠の魔法は役に立つ。

さて、これで俺も暇になってしまったし温風の魔道具でも作るか。
夕方までには1、2枚は仕上がるだろう。
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