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1章 呪いの女
174話 領主夫人に報告
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魔法兵団の詰め所から領主屋敷のスズナ当てに連絡を入れてもらうと20分程で今すぐ屋敷に来いと返信をもらった。
エドガーの案内で初めて西街区の貴族街と呼ばれる場所に来た。
閑静で道も石畳で綺麗、周りにはデカい屋敷が並び、身綺麗にして装飾の多い兵士団の格好をした見張りが巡回をしている。
格式ばった振る舞いを強要されるような雰囲気で、とても居心地が悪い場所だ。
その中で一際庭が広く、その広さに不釣り合いな少し大きい館のある屋敷がランダバウト辺境伯屋敷だった。
俺名指しで来たので、エドガーは連れて入れず門の前で別れることになってしまった。
久々に別行動だ。
エドガーはギルドで適当に依頼みたりして時間潰して宿に帰ると言っていた。
館まで通されるとまあほんどド派手だ。
青い壁や天井に、色とりどりの絨毯や綺麗な家具の数々、たくさんの光の魔道具のランプが効果的に置かれて、印象が固くならない様に植物も多く置かれている。
物が多いのに何故かしっかりとまとまっている印象で巧みなインテリアだ。
入り口近くの応接室に通されて少し待つとスズナが入ってきた。
この前のシンプルなドレスと違い、館の雰囲気と引けを取らない派手なドレスだが、この空間と合わせて見るとしっくりくる。すげえ。
気合入れた登場をして見せたスズナに合わせて俺も一丁格好つけておくか。
「神多羅木 大鎧、呼び出しにより参上仕り候!」
「会いたいと言ってきたのはあなたでしょう。あなたがやるとみっともないからそれ止めなさい」
せっかく気合い入れたのに呆れられてしまった。
ひでーや!
「それで、呪いってどういうことなの?」
「聖女やばい」
「真面目にしないならもう帰っていいわ」
「すまん、聖女やばいのは本当だ。聖女が住民を呪いまくってる」
「はあ?」
「俺は氣で魂の観測までできるようになったんだけど、聖女は近寄ったり触れた人間の魂を呪って歪ませてしまっていた。
まず聖女自体が人なのか怪しい。魂が見えなかったし。
俺の予想だとあれは呪いの塊だ。
呪いの力で思考が誘導されて強制的に聖女を敬うようになっていまう。
更に呪いで魂歪まされた人間は聖女を崇拝するように変えられて何か貢いだりしなければと思うみたいだな」
スズナが即帰れという雰囲気を見せたのでとりあえず一気に俺が感じ取ったことを説明した。
「・・・あなたじゃなければ聞いても信用できないけど、神多羅木家の人間だものね・・」
俺の家は代々国の防衛の一役を担う一族で、軍の管理や国のトップである将軍の警護などを行なっていた。
将軍には常日頃強い感情を向けられ、それが呪いとなる事もあるので、呪いを感知し祓う技術を常日頃から磨いていた。
親父と姉ちゃんが。
俺は15まで離れて暮らしていたし、首都に戻ってもすぐに家を飛び出したので技も知識もほとんど教わっていない。
そんな事は知らないスズナは勘違いして、今の話を信用してくれたみたいだ。
「でも私も彼女には会っているのよ、すぐ近くで。いま彼女に何かしたいなんて思ってないわ」
「スズナの魂は綺麗だな。姉ちゃんに加護やなんか貰ったか?」
「・・・御守りとかいって魔法かけてもらったことがあるわね。
夫のも見てちょうだい。あっちらへんにいるから」
スズナに指差された部屋の天井の先に意識して屋敷内の人間の魂を感じ取っていく。
「1人しっかり歪んでるのがいるな」
「はーそういう事・・・
聖女に会ってからずっと聖女の事ばかりなのよ。贅沢な会食を何度もやるし、家のものを少し売って教会に寄付もしたし。
流石に領地の運用資金には手をつけないから許してるけど。聖女様の為に少しでもできればいいと喜んでいたわ」
「この先そんなやつがどんどん出てくるぞ、有り金全部寄付したと言ってたやつまでいた」
「でも彼女は寄付金には手をつけていないでしょ。私も寄付金が多いから教会のお金の動きには気を配ってるけど変な使い方はされてないのよね。何が目的なのかしら」
「呪いだから何か一つ明確な意思があるはずなんだよな。救世?それなら悪しき魂を殺すというのもわかるが」
「そういえば教皇の件もあるのだったわね」
「そうそう、教皇の魂も捕まえた時に見たが酷く歪んでてな。多分教皇が言っていたあの方ってのは聖女の事だろう。
悪しき魂を聖女の為に殺していたわけだ。
そんで聖女は魂の観測がおそらくできてる。
聖女が悪しき魂だと断じたやつを教皇が殺してたんだろう」
「悪しき魂って何なの?」
「それは分からないが、エドガーが聖女を見たら聖女の体からドス黒い靄が出ていて怖いと言っていた。その靄が見れる奴が悪しき魂なのかもな。聖女には都合の悪いものだったんじゃないか」
「なるほどね・・・」
スズナは考え込んでいる。
俺も伝えるだけ伝えたがこの先どうすればいいのか分からない。
聖女を捉えられるか。
普通には無理だろう。
まず罪の証明が難しい。
聖女に呪われているとどう証明できるだろうか。
聖女の呪いは魂が歪むので影響がわかりやすいが魂の歪みなんてどう人に示せるのか。
俺には信頼が無いし、もっと権威のある人物が魂を観測できて判断できればいいのだが、そんな人物いるのかどうか。
魔法研究者の中には魂の観測を魔法で行おうとしているものが居るが実現できたという話は魔法学園にいた頃には聞かなかった。去年までの事だ。
氣で観測できるということは知られているがかなり氣の精度を上げなければ難しく、その域に達しているものは何人もいないだろう。
とりあえず魂を観測できるやつは少ないという事だ。
それに聖女を見ると誰もが聖女を強制的に敬ってしまい、まともな判断が出来なくなってしまう。
司法の最高権威者まで聖女敬い出したら終わりだ。
聖女の呪いに抗えるような強靭な精神力や、魂に呪いを受けない対処法を身につけた物が捉えて裁かないといけない。
俺だって少しは争っていたが1時間も耐えられないだろう。
それ以上は聖女に忠誠を誓いそうだ。
呪いを受けない方法もわからない。
聖女のに呪われて、聖女から死ねと言えば喜んで死にそうだ。
そういうことが出来るじゃん!
やべえな。
エドガーの案内で初めて西街区の貴族街と呼ばれる場所に来た。
閑静で道も石畳で綺麗、周りにはデカい屋敷が並び、身綺麗にして装飾の多い兵士団の格好をした見張りが巡回をしている。
格式ばった振る舞いを強要されるような雰囲気で、とても居心地が悪い場所だ。
その中で一際庭が広く、その広さに不釣り合いな少し大きい館のある屋敷がランダバウト辺境伯屋敷だった。
俺名指しで来たので、エドガーは連れて入れず門の前で別れることになってしまった。
久々に別行動だ。
エドガーはギルドで適当に依頼みたりして時間潰して宿に帰ると言っていた。
館まで通されるとまあほんどド派手だ。
青い壁や天井に、色とりどりの絨毯や綺麗な家具の数々、たくさんの光の魔道具のランプが効果的に置かれて、印象が固くならない様に植物も多く置かれている。
物が多いのに何故かしっかりとまとまっている印象で巧みなインテリアだ。
入り口近くの応接室に通されて少し待つとスズナが入ってきた。
この前のシンプルなドレスと違い、館の雰囲気と引けを取らない派手なドレスだが、この空間と合わせて見るとしっくりくる。すげえ。
気合入れた登場をして見せたスズナに合わせて俺も一丁格好つけておくか。
「神多羅木 大鎧、呼び出しにより参上仕り候!」
「会いたいと言ってきたのはあなたでしょう。あなたがやるとみっともないからそれ止めなさい」
せっかく気合い入れたのに呆れられてしまった。
ひでーや!
「それで、呪いってどういうことなの?」
「聖女やばい」
「真面目にしないならもう帰っていいわ」
「すまん、聖女やばいのは本当だ。聖女が住民を呪いまくってる」
「はあ?」
「俺は氣で魂の観測までできるようになったんだけど、聖女は近寄ったり触れた人間の魂を呪って歪ませてしまっていた。
まず聖女自体が人なのか怪しい。魂が見えなかったし。
俺の予想だとあれは呪いの塊だ。
呪いの力で思考が誘導されて強制的に聖女を敬うようになっていまう。
更に呪いで魂歪まされた人間は聖女を崇拝するように変えられて何か貢いだりしなければと思うみたいだな」
スズナが即帰れという雰囲気を見せたのでとりあえず一気に俺が感じ取ったことを説明した。
「・・・あなたじゃなければ聞いても信用できないけど、神多羅木家の人間だものね・・」
俺の家は代々国の防衛の一役を担う一族で、軍の管理や国のトップである将軍の警護などを行なっていた。
将軍には常日頃強い感情を向けられ、それが呪いとなる事もあるので、呪いを感知し祓う技術を常日頃から磨いていた。
親父と姉ちゃんが。
俺は15まで離れて暮らしていたし、首都に戻ってもすぐに家を飛び出したので技も知識もほとんど教わっていない。
そんな事は知らないスズナは勘違いして、今の話を信用してくれたみたいだ。
「でも私も彼女には会っているのよ、すぐ近くで。いま彼女に何かしたいなんて思ってないわ」
「スズナの魂は綺麗だな。姉ちゃんに加護やなんか貰ったか?」
「・・・御守りとかいって魔法かけてもらったことがあるわね。
夫のも見てちょうだい。あっちらへんにいるから」
スズナに指差された部屋の天井の先に意識して屋敷内の人間の魂を感じ取っていく。
「1人しっかり歪んでるのがいるな」
「はーそういう事・・・
聖女に会ってからずっと聖女の事ばかりなのよ。贅沢な会食を何度もやるし、家のものを少し売って教会に寄付もしたし。
流石に領地の運用資金には手をつけないから許してるけど。聖女様の為に少しでもできればいいと喜んでいたわ」
「この先そんなやつがどんどん出てくるぞ、有り金全部寄付したと言ってたやつまでいた」
「でも彼女は寄付金には手をつけていないでしょ。私も寄付金が多いから教会のお金の動きには気を配ってるけど変な使い方はされてないのよね。何が目的なのかしら」
「呪いだから何か一つ明確な意思があるはずなんだよな。救世?それなら悪しき魂を殺すというのもわかるが」
「そういえば教皇の件もあるのだったわね」
「そうそう、教皇の魂も捕まえた時に見たが酷く歪んでてな。多分教皇が言っていたあの方ってのは聖女の事だろう。
悪しき魂を聖女の為に殺していたわけだ。
そんで聖女は魂の観測がおそらくできてる。
聖女が悪しき魂だと断じたやつを教皇が殺してたんだろう」
「悪しき魂って何なの?」
「それは分からないが、エドガーが聖女を見たら聖女の体からドス黒い靄が出ていて怖いと言っていた。その靄が見れる奴が悪しき魂なのかもな。聖女には都合の悪いものだったんじゃないか」
「なるほどね・・・」
スズナは考え込んでいる。
俺も伝えるだけ伝えたがこの先どうすればいいのか分からない。
聖女を捉えられるか。
普通には無理だろう。
まず罪の証明が難しい。
聖女に呪われているとどう証明できるだろうか。
聖女の呪いは魂が歪むので影響がわかりやすいが魂の歪みなんてどう人に示せるのか。
俺には信頼が無いし、もっと権威のある人物が魂を観測できて判断できればいいのだが、そんな人物いるのかどうか。
魔法研究者の中には魂の観測を魔法で行おうとしているものが居るが実現できたという話は魔法学園にいた頃には聞かなかった。去年までの事だ。
氣で観測できるということは知られているがかなり氣の精度を上げなければ難しく、その域に達しているものは何人もいないだろう。
とりあえず魂を観測できるやつは少ないという事だ。
それに聖女を見ると誰もが聖女を強制的に敬ってしまい、まともな判断が出来なくなってしまう。
司法の最高権威者まで聖女敬い出したら終わりだ。
聖女の呪いに抗えるような強靭な精神力や、魂に呪いを受けない対処法を身につけた物が捉えて裁かないといけない。
俺だって少しは争っていたが1時間も耐えられないだろう。
それ以上は聖女に忠誠を誓いそうだ。
呪いを受けない方法もわからない。
聖女のに呪われて、聖女から死ねと言えば喜んで死にそうだ。
そういうことが出来るじゃん!
やべえな。
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