黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

171話 聖女登場

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教会周りに集まった民衆の熱気が高まり切った時、教会の大きな扉が人1人分の隙間を作った。
一瞬で周囲は静まり返り、隙間を見守る。

いよいよ聖女が教会の中から姿を見せると割れんばかりの歓声に耳を劈かれた。
一帯は大量の熱を帯びた氣が竜巻のように渦巻いている。
門の前方にいたものは興奮と感動で気を失う物までいる。
もはや領主なんて比じゃないほどの人気ぶりだ。

聖女を見ると俺も納得だった。
圧倒的美人、娼館の女王でさえ霞んでしまう。
人間の本能に訴えかける美貌がそこにはある。
離れていても良くわかる。
聖女の体が光り輝いているような錯覚まであり、息をするのも忘れて見入ってしまう。
見入るほど体が火照り心臓が高まる。
聖女のためなら俺自身を捧げても構わないとさえ思う。
そんな強烈な印象を抱かせてくる。
全財産貢いだものを笑えない。
むしろ尊敬する。
周囲の人々も泣いて感動し聖女に祈りを捧げている。
神が降臨したそう思う光景だ。

「タイガ、あれ、ヤバい」
「ああ、輝いて見えるほどだ。あんな人間がいるのか」
「え?!」
「どうかしたのか?」
「だって、なんかドス黒い霧が噴き出してて怖い。いやめちゃくちゃ美人で輝いて見えるのも分かるんだけど。あれに身を捧げても良いとさえ思うのに、でも怖い」

どういう事だ?俺にはそんなドス黒い霧なんて見えない。
エドガーには何が見えているんだ?
でもエドガーが言う通りなら、なにか良くない感じがする。

「エドガー、頑張って目を閉じとけ」

俺も目を離すことが耐え難いが気合で目を閉じる。
そして聖女を氣で読む。
聖女から読める印象は先ほど見た時と変わらずとてもとても尊いものに思える。
何故だ、何故そう思う。
俺は聖女の何も知らないのに。
そこに違和感が湧かない、それが違和感だ。
魂を読もうとするが魂が見えない。いつもの魂を探る感覚で見つけられない。
これはありえないだろう。
おかしい、聖女は生物なのか?
でもそれがどうした。聖女は確かな実績でこの場にいる。人と違うかも知れないが、人々に祝福を与える存在なら良いのではないか。

祝福・・・
転じれば呪いになる。

この状況、思考が無理矢理動く感じ、覚えがある。娼館の女王だ!
あいつは呪いを取り込み利用して娼妓としての力を上げていた。
聖女も呪いを利用して圧倒的な聖女力を手に入れたということなのか。
バケモノだ。
でも人にとっては良いものじゃないのか。

俺は再び目を開けて聖女を見る。
聖女に対して熱い気持ちが込み上げてくる。
次々に湧いてくる聖女に対する想いは放っておくと一瞬で思考を埋め尽くす。想いを一つ一つ理解し思考の邪魔をしないように心の片隅に追いやる。
そして今は冷静に聖女を観察することに努める。
意識していても相当難しいが耐えられる限りは続けよう。

聖女が人々の前に立ち教会前に設られた台の上に上がる。

「皆様、今日この場にお集まりいただきありがとうございます。
はやく皆様の治療にかからなければならないのに、また少しお待たせする事をどうか許してください。
本日は、非常に悲しい知らせをお伝えしなければなりません。
先日私たちの最も尊敬すべき教皇エルネスト・ブラックウッド様が、恐ろしい犯罪を犯し、そのために捕らえられました。このような重大な裏切り行為が起きたことはとても許させる事ではございません。そしてこれは私たち教会、私自身での罪でもあります。私はエルネスト様とこの国を長い期間巡礼を行なって参りました。
その間エルネスト様が起こす罪の数々に気づく事が出来ませんでした。
その結果多くの犠牲者出してしまった事に深い悲しみと失望を感じております。
私たちはこれから犠牲者の関係者の方々、そして親愛なる皆様に誠心誠意償いをして参ります。
まず初めに、被害者のご家族と関係者の皆さまに、心からのお詫びを申し上げます。私たちは、この出来事によって生じたすべての苦痛と混乱について、深くお詫びいたします。
教会は、この状況を非常に真剣に受け止め、今後二度とこのようなことが起こらないように、徹底的な調査と改革を行う決意です。信頼を取り戻すために、私たちは全力を尽くしてまいります。
再度、皆さまにご迷惑とご心配をおかけしたことを、心よりお詫び申し上げます。これからも教会は信徒の皆さまに対して、誠実に、そして謙虚に奉仕してまいります。
ご理解とご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
神の平和と祝福が、皆さまの上にありますように」

聖女の謝罪演説が始まると同時に静まった教会の前は演説の終わりと共に盛大な拍手に包まれた。
俺も謎の感動に飲み込まれて涙がぼろぼろ出る。
冷静に考えれば当然のように教会が誠意を見せただけだ。

その姿勢はいいと思うがこれほど感動するものかと疑念が湧く。
だがその疑念を押しつぶすように俺の体は感動で震えて涙を流し、思考は聖女の尊さで埋め尽くされていく。
演説中も聖女の様子を真剣に観察したが特に害意などは感じられなかった。
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