黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

136話 魅了する力

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俺はその光景に息を呑んだ。
興奮を覚えると同時に緊張もしていた。
俺はこの女に既に飲まれかかっている。
この女を前に男として、俺として存在を示せるのだろうか。

「ふふふ、初めてのお客さんは緊張しんしゃあよね。でも大丈夫。服脱いでこっちにいらっしゃい。
それともウチが脱がそうか。
ふふふ、それも楽しそうね。お客さんら男らしいもん」

俺は誘われても依然緊張と迷いがあった。

気持ちはすぐにでもあそこへ行き欲望を解き放ちたいと思うが、まだ冷静さを保っていたい。
俺は動物のように腰を振るだけの奴にはなりたくない。
やるからには男らしく、俺らしくある事を保ちたい。

「あっんんん!もうイーサンくん上手くてイッてしまったやないの」

女王が体を震わせ跨られている下のサメの男を褒める。
そのままサメ男の胸を撫で付けるとサメ男は唸り声と共に体を逸らせ何度も体を震わせた。

「んん、イーサンくんのがたくさん入ってくる。いっぱいもらえてウチも嬉しいわ。少し休もうか」

女王がサメ男から腰を浮かすとずるんと2本の大きめな肉棒が未だに欲望を保ったまま抜ける。
女王はそのうち1本を優しく撫でて軽く口付けをする。

「ぐうぅっ!」

口づけをされた途端にサメ男は2本の肉棒から勢いよく白い体液を何度も吹き出した。
今しがた中出ししてたはずなのに元気だ。

「あらあら、休憩って言ったのに、ごめんね、私張り切っちゃった」
今のがトドメとなったようで、サメ男の大きく膨らんでいたものからチカラが抜けていく。

「イーサンくん今日も凄くよかったわー。お疲れ様」
ぐったりとしたサメ男にそう言うと待ちきれないと構えていた男2人と女1人が女王に擦り寄ってくる。

「ふふふ、待たせてごめんね。今日は甘えん坊なのね」
女王はそのまま3人同時に愛撫を始めるとすぐに3人はたちまち果ててしまい気を失うほどイキ続けた。

「あらあら、うち今日は調子いいみたい。ウチ新しいお客さん2人とするの楽しみ見たいやわ」

そう言うまま女王は他にも寄ってきた男女数人ともつれ合い行為は激しさを増した。

俺は勝手に湧き上がる興奮を押さえつけてその光景を冷静を装って観察していた。
この場には違和感を覚える。
俺が俺じゃなくなる違和感を。

俺はここにこの女を抱きにきたはずなんだ。
男としてこの女に俺の存在を刻みつけたかったはずなのに、今はこの女にしてもらう事への期待感の方が勝る。
俺はこんなに男を曲げる奴だっただろうか。
そんな育ち方していない筈だ。
俺は誰よりも男らしくありたいと思っていた筈だ。

それにいつもの俺ならこの男女の裸で溢れる空間を見たらまず色々観察して楽しむだろう。
でも俺はこの女しか見ていない。
サメ男の2本のちんぽだって何時もなら釘付けになる筈なのに気にもかけなかった。
そんなの俺じゃない。

思考が誘導される。この女に対して、この女に勝手に体が興奮する。
なんだこれは、魅了の魔法?でも何も魔力を感じない。
それなのに俺も含めてここにいる奴らは女王に意識を釘付けにされている。
魔法ではないなにか別の力。
この女を意識せずにはいられなくなる。女が発する強い力。

「呪いか」
「あら、もしかして祈祷師さんやった?
ふふふ凄いのね。正解よ。ウチ呪われてるの。でもお客さんらには影響はないわ」

俺の予測と違い呪われている側だと?
呪いの効果を客に与えているように見えるが、それなら客に影響が残る。
呪われているという事を気にしてはないようなら、逆に呪いを利用している?
生半可な意志力で出来るような事ではない。
魅了のような力を感じるという事は、娼妓としてのプライドで呪いをねじ伏せて、娼妓としての力を高めるために利用していると考えられる。

「呪いを飲み込んだのか」
「凄いわー大当たり。言い当てた人は初めてよ。どうしよううちドキドキしてしまう。
ねえ、どうする?お客さんならきみ悪がらんやろ。わかった上で抱かれてみたいわ」

どうしようか、女の言う通り別に呪われていようが俺は別に気にせんのだが。
だがしかし、尚更たちが悪い。
俺はやはりこの女を男として俺が納得のいく形で抱けるのか?
こんな状態で?
俺の意志は娼妓としてのこの女に気持ちよくさせられたいと思ってしまっている。
ここにいる奴らと同じになりたいと思ってしまっている。
女は俺がどう振る舞おうと俺のしたい通りにさせてくれるだろうが、それはこの女の技術によってそうさせられているだけだろう。

それは俺がやりたかったのと違う。
俺は娼妓を抱きに来たが、娼妓としてではなく女としての奴に俺と言う男を刻みたかったんだ。
これは俺が誰かを抱く時の男としての矜持。
てきとうに発散するだけなら1人でも充分だ。
相手がいるのならばしっかりと満足いくものにしたい。
だが、この状況、今の精神状態だと俺はこの女から齎される快楽にただただ溺れてしまいかねない。
そんなみっともないこと俺の矜持が許さない。

必死で興奮を押さえつけ冷静さを保つ。
気を抜けば理性が飛びそうだ。

これまで女王のことで精一杯で忘れていたエドガーを見ると股間を抑えてうずくまっているが視線は女王へ向いている。

「エドガー、彼女ならお前もしっかり気持ちよくしてもらえるだろうがどうする?」
「タイガは?」
「俺は止めとく。ちょっと覚悟が足らなかったな」
「なら・・・俺も」
「と言うわけだ。申し訳ないが今日は帰る。会えただけで満足だ」
「そうなのね、気持ちよくさせられなくてごめんね」
「気にしないでくれ。もう少し俺が自信つけたら相手してくれ」
「待ってるわね」

女王はそう言うと天蓋から垂れた紐をひとつ引いて繋がった鈴を鳴らした。
すると部屋外にいた奉公人含めて数人が部屋の中へ入ってくる。
女王が視線で支持を出すと奉公人たちは気絶している客を運び始めた。
ベッドへ近づいた奉公人の男の1人の頭を女王が優しく撫でると奉公人は身をガクガク震わせて服越しだと言うのに勢いよく精液を飛ばしていた。

「やっぱり今日のウチちょっと凄いわ。ねえお客さんお名前は?」
「タイガだこっちはエドガー」
「ふふふ、覚えたわ。ウチ1度きたお客さんは忘れないの。ぜひまた来てね」
「期待させたのにすまないな、必ずまた来る」

女王に背を向けてエドガーの方を向く。
「立てるか?」
エドガーはフルフルと頭を横に振る。
「しゃあない、おぶされ」

エドガーの前に背中を向けてしゃがむ。
少しの躊躇の後にエドガーは俺の背中にしがみついてきた。
背中にしっかりとした硬い感触がある。
エドガーをおぶって立ち上がると、奉公人達に引きずられていくサメ男の後に続いて部屋を出た。
少し冷静になってサメ男を見るとなかなかいい男だと思う。
2本だしそこそこデカいし。
本気も見たから正確に判断出来るが星3.3あたり。充分デカい。
イーサンくんね覚えておこう。何やってる奴なんだろうな。

「おや、お早いお帰りですね」
店の入り口まで戻ると受付の男に不思議がられた。
「今日は帰ることにした。またくる」
「リーシーと何かありましたか?」
「何も、凄い奴だったさ」
「そうですか、またのお越しをお待ちしております」

受付の男に見送られ外に出ると早足で色街の外に出た。
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