黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

126話 兵舎での最後の洗い場

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エドガーにも今日兵舎を出る事を伝えると、より鍛錬に気合いが入ったようで振るう剣にも気迫が見られる。

俺はいつもの日課の氣の鍛錬と筋トレ、エドガーは剣の素振りの後でお互いに剣を交えていた。
そうは言っても手合わせではなく稽古としてだ。
お互いに剣での攻撃と防御の型を順番に出し合ってエドガーの体に動きを覚え込ませていく。

俺はいつも通り全身汗だくパンツ一丁スタイルだからエドガーの視線がちらちらと股間に向くのが面白い。
そんなエドガーの隙をついて型を変えると慌てて対応が鈍るエドガーを見るのもまた楽しい。

「タイガのその格好だと集中できねえや」
ひとしきり打ち合いを終えたあとでエドガーに言われてしまった。

「動きが体に染み付けば考えるより前に体が動くもんだ。そしたらもっとじっくり見れる余裕も出てくるぞ」
「見ようとしてるわけじゃないんだぞ、どうしても視線がそっちにいってしまうというか・・・」
「すけべ」
「ぐうぅ・・もう目を閉じたまま戦うしか・・」
「はははは!」

極端すぎて面白い。
どのみち氣の鍛錬をしていけばそれもできるようになっていくのだが、エドガーの必死さが面白いのだ。

「エドガー、俺のは全然見ても構わないって言ったよな、だから気にすんな。
それに見れるものを見ないのは勿体ねえだろ。だから戦闘中でも相手の股間のガン見出来るぐらい強くなればいいんだよ」
「そうか、確かにそっちの方がいいな!」

言った手前なんだが常に股間ガン見されながら剣を振るわれるのはなかなか恐怖である。
もしかして俺はとんでもない怪物を生み出そうとしているのかもしれない。
まあそれがエドガーなのだから面白いしいいか。

朝の鍛錬を終えた後で兵舎の洗い場に汗を流しに向かう。
何気にエドガーと2人同時に使うのは初めてだ。護衛の2人を含めても俺たちはいつも別々のタイミングで汗を流していた。

「お湯使うか?」
「使う!」

ここの洗い場には水の魔道具が置いてあるがやっぱり体が冷えてしまう。
俺はいつも魔道具には頼らずに自分の魔法でちょうどいい温度の水を浴びていた。
エドガーにも風呂の時は温水の水魔法を使っていたので俺の提案に即答だった。
洗い場の適当な仕切りの中に温水の水魔法の球を浮かべる。

「足りなかったら言ってくれ」
「おう、助かるぜ」

そう言ってエドガーは仕切りの中に入って目隠しの布を閉じた。
俺はその隣の仕切りに入る。
最後だから何発かとは当然考えたのだが、エドガーは俺がいるとしないだろうから俺も我慢する事にした。

汗で張り付いたパンツを脱ぎ、少し暖かくした水魔法を雨のように降らせながら汗を流していく。
これまたいつも通りパンツに洗濯の家政魔法をかけて綺麗にする。

「エドガー、服洗おうか?」
「俺でやるよ、乾燥だけ頼む。お湯の追加くれないか。」
「おう」

エドガーの側に浮かべたお湯の水球を大きくする。
面倒なので使った分足されるようにした。

「減らなくした」
「おおー、たすかるー!」

ざぶんざぶんと水音が聞こえてくる。
遊んでいるようだ。
水は減らなくても俺の魔力は減るのだが気にするほどの量ではない。

「タイガ、乾かしてくれー」
ゆっくりと水を浴びつつ待っていた言葉を聞いた俺はまだ濡れた体のまま、同じ様に濡れたパンツを持ち隣の仕切りに移動した。
エドガーも同じ様相だ。
重そうに垂れ下がった立派な物が嫌でも目につく。全然嫌じゃない。
エドガーも俺のを見てくる。
ここ数日は解体場で一緒に風呂入ってるからお互いの裸はもう見慣れている。

「そんじゃいっぺんに乾かすぞ」
俺とエドガーの体全体に当たるように温風の魔法で風を吹き付ける。
これは風呂でもいつもやっているやつだ。
エドガーの体には念入りに風を当ててやり乾かすと毛並みがふわふわになる。
エドガーはこれが気に入っているようだ。
洗った洗濯物も乾燥の魔法で速攻で乾かす。
こういう生活に役立つ魔法は使っていて楽しい。

「ここも最後だなー」
「心残りはないか?なんなら今からでも何発かやっとくか?」
「それはタイガの心残りじゃないか?俺はいいや、落ち着かないし」
「そんじゃ俺もいいや」

下世話な話題を最後に俺はしばらく世話になったなと洗い場の中を一瞥し洗い場を後にした。
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