黄昏一番星

更科二八

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1章 呪いの女

121話 潜入

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夜0時前
俺は透明化の魔法と消臭の魔法を使い気配もひたすら薄くした隠密スタイルで教会側までやってきていた。

辺りは闇に包まれ、星あかりと小さな灯りの魔道具が闇の中に浮かぶのみ。
出歩く人もおらず季節柄まだ虫の声も無い。
静寂が広がりぼんやりと形を浮かべる教会は不気味さを放っている。

広範囲の気配を慎重に、かつ俺の氣が逆探知されないようにも意識しつつ探る。
今回は魂までは感じ取らない。
深く意識を向ければバレてしまう可能性があるからだ。
気配だけで感じ取った結果、教会内部には夜間の護衛が5人。
まばらに散らばり巡回している。

そして奥まった部屋に2人、うち1人はかなり気配が薄い、それに強い。
切り裂き魔からの証言によると仲間はあと1人いて護衛に特化した者だという。
おそらくこの気配が薄いのがそうだろう。
俺の索敵に気づいた様子はないから俺以上の氣の使い手ではなさそうだ。
証言では種族は竜人族。
魔力も高いが膂力が他のどの種族よりも高いと聞く。警戒すべき相手だ。

教皇は奴隷印で従えた下僕に任務を与えた場合は夜のこの辺りの時間に報告を聞くために教会の隠された部屋で待つと情報を貰っていた。
切り裂き魔に間者を送り、そいつが捕まった事はまだ一部のものしか知らない事だ。
教皇はその間者の報告を聞くために待っているのだろう。

もう一度細かく辺りの気配を読む。
先ほど感じ取った気配と同じものだけを感じ取る。
教会に来たのだから聖女もいるのかと思ったがそれらしい気配はない。
ただし鑑定が出来ないやつであるからいる可能性も考慮した方がいいだろう。

俺は教会裏側の道へ出て、教会の向かいに並んだ建物のうちの一つの脇の狭い路地へ進む。
狭い路地から1軒奥の建物の扉に開錠の魔法をかける。
何も起こらない。
すんなり行けばと期待したが無理なようだ。
開錠の魔法は錠の仕組みを理解した上で使わなければ意味がなく、錠に開錠の魔法を防ぐ呪文を刻めば効かなくなる。
だいたいの錠は呪文が施されているので当然の結果だろう。

俺は腰に吊るしたナイフを抜いて刀身に氣を纏わせる。
氣は刀身によりも先にも刃を拡張させて一振りの剣のようにする。
そして扉に向かって縦に一線。
実物の刃を持たない氣の刀身はすんなりと扉に吸い込まれ扉を2つに分けた。
鍵の付いていない側の別れた扉を押すとすんなりと開く。

俺の背よりも低い扉をゆっくりと潜ると真っ直ぐ伸びた真っ暗な廊下の先には下へ降る闇が見える。
扉を閉めるが直すまでせずに放置。

ここは教会の隠し部屋へと続く外からの入り口だ。
切り裂き魔が教皇と会うときに使っていたという。
俺は氣で周囲の状況を探り罠がないかを確かめると明かりは灯さず闇の中を進んだ。

地下へ降り突き当たりにある螺旋階段を登り物置の様な部屋に出る。
ここで透明化の魔法だけを解除する。

物置の様な部屋には壁の模様の様にも見える低い扉が付いている。
扉を開け床に手をつく不恰好な形で先の部屋へ入る。

部屋はそれなりに広さがある。右側には大きなガラス窓が並び薄らと月明かりが入っいる。
左側の壁、月明かりが当たらず影になった場所にいる気配の方向を向きつつ立ち上がる。

「よう」
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