黄昏一番星

更科二八

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序章 新天地と仲間との出会い

31話 悪しき者

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街の中をゆっくりと走る箱馬車の中には1人の女と1人の男。
会話はない、室内には馬車の動く音のみが静かに流れる。

女は誰もが一目見て息を呑み美しいと感じるであろう整った顔立ち、
いっさい無駄なものが無いと思わせる完璧な「女性」の体。

彼女を目にしたものはたとえ女性であっても彼女を手に入れたいと願わずにはいられなくなるであろうぼど、人の本能に訴えかけるような美貌がそこにはあった。

正に女神と表す物もいるほどだ。

もう1人の男は歳の頃は50代、金の刺繍が隅々に施された白い服は人としての地位の高さを物語る。

女は馬車の窓から街を眺める。
そして1人の男が目に映る。
「彼の方」
「あの男ですか。」
男も同じものを見る。

「ええ、凄く、良くない物を感じます・・」
女は人の力、心、魂を見通す力を持っている。
そして感じ取る、相応しくない物を。

「大丈夫です。貴女の慈愛はきっと彼にも届くことでしょう。」

女は物悲しげな顔をする。
「きっと彼の方の魂が救われますように。」

そして再び室内には静寂が流れ、馬車の音が存在感を増していった。
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