黄昏一番星

更科二八

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序章 新天地と仲間との出会い

30話 解体場の風呂に入ろう

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風呂に想いを馳せながら俺は集中してコボルトを捌きまくった。

千切っては投げるように皮を剥がし、風魔法で骨と身を一瞬で別ける。
血飛沫撒き散らしながら作業する俺を周りで見ていた人たちは怯え、バートは爆笑していた。

夕刻の鐘の時間にはまだ余裕がある頃、好きな時に終わって良いと言われてたので作業を止めて報告に向かった。

「いやー笑った笑った!ドラゴンがコボルト食い散らかしてるようだったぜ!凄かった!」
「無心で作業してたから何匹やったか覚えてない。」
「ははは!大丈夫俺が数えてた、95匹だ!
報告の書類は準備しといてやるから綺麗にしてきな!」

95か、100目指したかったな。
まあいいそんなことよりも風呂だ!
ウキウキしながら解体場の風呂場に入った。
脱衣所も浴場も広く懐かしさを感じる。
脱衣所の横には洗濯場があり洗濯の魔道具が並べられていた。
靴まで洗えて乾燥まで全部自動でしてくれるらしい。
すごい、旅人の輪以外の複数機能がある魔道具はここ数年で出回り始めた技術だし、まだまだ高価だ、いいもの使ってるな!

血塗れになった服を全部魔道具に放り込む。
服を脱いでみると中までしっかり血だらけだった。
血塗れでぶらんぶらんの状態で浴室に向かう。

浴室はとてもシンプルなものだった。
洗い場となんの変哲もない広い浴槽。
それだけ。
いいじゃないか、故郷の兵舎の浴場もこんなんだったと思い出す。

浴場には数人の若者がいたが俺の姿に驚き凄く距離を置かれてしまった。

むむ、これは悲しい。
警戒されては仕方がないので俺は普通に風呂を堪能しよう。

洗い場で全身についた血を念入りに洗う。
旅人の輪の体を清潔にする効果は極端な汚れに対応しない。
汚れればちゃんと洗う必要がある。
水魔法と浄化の魔法を駆使すれば頑固な汚れもあっという間だ。

洗っているうちに浴室にいた数人の男達はそそくさと股間を隠しながら出て行ってしまった。
見れなかった、残念。

体を洗い終え湯に浸かる。
「はぁぁぁぁぁ・・」
誰もいないので気兼ねなく声が出せる。
全身の疲れが吹き飛ぶようだ。
体がとても心地よい。
風呂ってこんな素晴らしいものだったんだと感動する。

風呂付きの家ってないものか。
なんならいつか俺がこの街に銭湯建てるか。
数年ぶりの風呂に想いまで浸らせる。

「よう、どうだうちの自慢の風呂は。」
「極楽。」
「極楽ってなんだ?」

浴室に入ってきたのはバートだ。
すっぽんぽんだ!
やー風呂があってよかった。
歳を重ねてもしっかりとした肉体、整った筋肉、そして詳細は差し控えるがまあまあだ。
残念ながらレアには少し届かずと言ったところか。
星2.9ぐらいだな。

「なあ、また来いよ。いつでも歓迎するぜ。」
「ああ、絶対またくる。」
風呂の魅力に改めてハマってしまった。
解体いいじゃないか。
風呂の為だけに仕事受けるのもありだ。

バートの仕事の愚痴を聞いたりしながら風呂を楽しんだ。

洗濯を終えて綺麗になった服に着替え、依頼の報告書を受け取り、ギルドに報告に戻る。
空は赤く染まり、街に吹く風は少し冷気を帯びて、風呂上がりの体に心地いい。

絶対また来よう。また一つこの街に楽しみが増えた。

その後、解体場では、風呂にテンペストコブラが出たと噂が立ち、バートはゲラゲラ笑った。
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