黄昏一番星

更科二八

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序章 新天地と仲間との出会い

23話 酒場兼宿屋

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エドガーの案内で街を歩き、おすすめの酒場兼宿屋に着いた。

「扉がデカいな。」
「先代の女将さんがオーク族だったらしいぞ。」
「ほー先代の店主さんやるな。」

オーク族とは魔人種の人族で、魔物のオークと同じなのだが、人族の間で増えて、ちゃんと理性があり他種族と共存できる者たちだ。
魔物や動物を孕ませて増えたオークは知性が低く理性もなく、生き物ならなんでも襲ってくる凶暴な魔物だ。

姿は鬼族よりも体は大きくずんぐりとした肉厚体型で緑や茶色みを帯びた肌、低い鼻と大きな耳と大きな牙が特徴的な顔をしている。

先代は物好き、とまで行かず、意外とオーク族の需要は高いのだとか。
好きな人は好きなのだ。
まさに肉欲。

余談だがオーク族は女騎士特攻というふざけた能力を持ってるらしい。

「グーグさん、飲みに来た!」
「エドガーじゃねえか、珍しいな、こんな時間から景気がいいじゃねえか!
後ろのデカいのは初めて見るな。」
「タイガだ、さっきエドガーとは知り合ってこの店を教えてもらった。
宿泊したいのだが空いているだろうか?」

先代の女将さんがオーク族と聞いていたので、オーク族の主人が出てくるのかと思ったが普人族だ。
婿入りなのだろうか。

「空いてるぞ、1泊160ロング先払いだ。」
「3泊出来るか?」
「大丈夫だ、金さえ払ってくれれば何泊でもしてくれていい。」
俺は店主に3日分の金を払う。

宿屋としてはかなり安い金額だ。
エドガーはちゃんと俺の要望通り安宿を紹介してくれた。
部屋の様子が気になるところだが、俺は掃除大得意だから自分で何とかすればいい。

それでもずっと宿暮らしというわけにも行かないから早いとこ家を探さないといけないな。

「まいど!2階の一番奥の部屋を使ってくれ、
オークサイズのベッド入れてるからあんたでも大丈夫だ!」
「それはありがたいな。」
デカいベッドで寝れるのか!
ギルダナに来る道中あまりいい寝床はそんなになかったし、どれも俺の体には小さいものだったのでこれはとても嬉しい。
住む部屋を見つけるまではここで世話になるのもいいな。

主人から部屋の鍵を受け取ると、とりあえず荷物だけ置こうと先に部屋に向かう。
エドガーも部屋を見てみたそうにしていたのでついて来させる。

酒場になっている1階から階段で2階に上がり廊下の片側に背の高い扉が並ぶ。
一番奥の部屋の鍵を開けて中へ入ると存在感のあるベッドが目に入る。
ベットの向かいにはこれは普通のサイズの机。

ベッド以外は普通の宿屋の部屋だ。
ちゃんと掃除は行き届いていて綺麗だ。
「はー宿の部屋って綺麗だし広いな!」
広くはないと思う。
ほぼほぼベッドに占領されてしまっているし。
エドガーがどんな暮らしをしているのか気になってしまう。

「エドガーのおかげで広いベットにありつけた。ありがとな。」
「そこまで考えてはなかったぜ、たまたまだ。」

部屋に荷物を置き1回へ向かう。
時間はまだ夕方前、酒場の店内にはまだ俺たちだけだ。
「あまり賑わってないのか?」
「まだ早いからな、夜は賑わってるぞ。」
「そうか、今日はもう予定もないしゆっくり飲もう、もちろん俺の奢りでな。」
「強いやつは気前がいいなー!」
「もっと褒めていいぞ。」

その後俺たちは注文した料理に舌鼓を打ち、酒もしこたま飲んだ。
エドガーのおすすめは大当たりだ。
料理もうまいし量もある。
そして酒の種類が多くて楽しい。
久しぶりの酒だったもんでタガが外れてしまった
しょうがないんだ。

エドガーは街のことを良く教えてくれた。
街の区分けの事、馴染みの店、珍しいもの、起こった出来事。
配達の仕事で街中を動き回っているというエドガーの話はとても参考になった。
つくづくエドガーと知り合えて良かったと思った。

酒を飲みまくり、楽しく会話を続けた夜更け前。
気づくと俺の目の前には犬頭の男が意識朦朧と座っていた。
「タイガ・・俺も強くなれるかな・・?」
「なれるさ。」
素質は充分ある。
鍛えてみるのも面白いかもしれないな。

「そっか・・・」
そして犬頭の男は机に突っ伏して寝息を立て始めた。
「エドガー寝るな、まだ頑張れ。」
起きない。
周りの客ももう殆ど帰り賑わっていた店内には静けさが漂い出していた。
「しょうがないな。」
久しぶりに人と飲むのが随分楽しくて時間が経つのを忘れていた。
机に突っ伏す犬頭の男を肩に担ぎ酒場兼宿屋の主人の元へ行く。
「グーグさん、こいつも1泊いいか、俺の部屋でいい。」
「ああ、構わないが、誰だそいつ。」
「エドガー」
「ええっ!?」
驚いてる主人に飲食代と1泊分の代金を払い部屋へと戻る。

担いでいたエドガーをベッドに放り投げるも全く起きる気配もなく気持ちよさそうに寝息を立てている。

狼の獣人かな?
こいつも大概体がデカい。
普人族の姿してたときよりデカくなってる気がする。
2メートルは余裕で超えていそうだ。
俺1人でちょうどいいサイズのベッドに2人は厳しそうだ。

荷物から毛布を引っ張り出して床の上で包まり目を閉じる。
俺が先に借りた部屋だからエドガーが床でも良くないか?
ふと思うがもう動くのが面倒くさい。

まあいいかと切り替え今日1日を振り返る。
盗賊捕まえ、街に入り、ギルド行き、魔族を倒し、酒をしこたま飲んだ。
思い返せば凄い一日だった。
平凡盗賊団面白かったな。
明日はどうなるだろう、また楽しい1日になればいいな。
そう思いを馳せながら眠りについた。
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