黄昏一番星

序章 新天地と仲間との出会い

20話 変化

エドガーは走っていた。

嫌な予感がした。
空が割れるのを見た。
あれは知っている。
昔も見た。あれも遠くからだった。
遠くからでも声が聞こえた。悲鳴、人の泣き叫ぶ声。
耳に残る声。

直接見たわけではないが大量の人が死んだと聞いた。
魔族を見たら逃げるしか無いと言う。
魔族がこの世界に顕現できる時間はそう長くは無い。
だから逃げて身を隠す。
殺されないように祈るしかないと皆は言う。

だけどエドガーは思った。
人を助けたい！
あの場所へ行かないと！

あの場所はさっき合った男がいる。
ギルドの中には顔馴染みのものもたくさんいる。
みんな死んでしまう。
助けないと。

だから走った。

逃げる人波に逆らって。
誰も死んでほしく無いと願って。
そして視界に入った黒い異形。

瞬時に悟る死の予感。

見た瞬間に助けたいと思った感情が逆転する。
誰も助けられないと思う絶望感が心を埋め尽くす。

途端、異形が２つに割れ地面に転がった。

気づけばいつの間にか魔族の側に鉈を持った大きな男が立っていた。

二つに分かれた異形はぐちゃぐちゃと震えながら溶けるように崩れてそこに無かったかのように消えた。

エドガーの感情は高まる。
理解できないものを見た。
絶望の中に輝きを見た気がした。
心がざわざわと震える、絶望を覆すその力に強く感動した。
憧れを覚えた。
エドガーの中で何か変わった気がした。