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第4章 光と「ブルクハント王国の誘拐犯」
99話 厄介ごと
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「・・・誘拐? ロザリーが?」
ルージュが驚いた表情でモンローに聞き返す。
「ああ、昨日は人手も少なくてな・・・残業して遅くに帰ったんだが・・・そのままそれっきりでな。今、ギルド職員で行方を捜しているが、もう少し捜して見つからなければ、ギルドから正式に捜索依頼が出ることになっている。だがな・・・最近、誘拐事件が頻発しているのは知ってるだろ。もし、それと同一犯の仕業なら、ロザリーは長くはもたない。だからギルドを上げて手がかりを探しているんだが、こういうのはどうも・・・気ばかり焦っちまって」
「ちょっと、それ大変どころの話じゃないわよね。何落ち込んでるのよ。私も探すのを手伝うわ。あぁ、もう話してる時間も勿体ない。じゃ、先に行くわね」
ルージュはそう言うと、走ってドアから出て行ってしまった。
「姉さん・・・」
「・・・ルージュ・・・行くって何処へ・・・」
『後で私から連絡しておきますよ』
ルージュの行動に固まる俺とアマリージョをよそに、ヒカリは、いつものことと言わんばかりに、全く気にした様子もなかった。
「嬢ちゃんは、俺より単細胞だな。手掛かりも無しに一体どうするつもりなんだ?」
『分かりませんが、彼女は直感型ですから、考えるよりまず行動なのでしょう。それよりもモンローさん、今のところ手がかりは本当に何もないのですか?』
ヒカリが珍しく、少し前のめりでモンローに質問する。。
「それが本当に何もない。逆に何もないから最近の誘拐事件と同一犯だと疑っている」
『それはどういう事ですか?』
「・・・よし。ちょっとお前たち俺の部屋に来い」
モンローに言われ、俺とヒカリとアマリージョの3人で、ギルド三階にある、モンローの個室に行く。
部屋は思っていたよりも綺麗で、ゴミ一つ落ちていない。
内装の装飾は質素だが、置かれている調度品には品の良さを感じた。
「まあ、座れ。ん? 思ったより綺麗でびっくりしただろ?」
「あ、いえ・・・」
図星を突かれ言い淀む。
この人は、言い方こそ違うが、ド直球で核心を突いてくる感じがルージュに似ている気がする。
『それで、モンローさん。わざわざ連れてきて頂いた理由は何でしょうか?』
ヒカリの一言で場の空気に緊張が戻る。
「まあ、そう急かすな。こう見えても、俺は今いっぱいいっぱいなんだ。もうすぐ、偵察に出てるうちのモンが戻る。そうしたら少しは状況も整理できる。これも何かの縁だ。ほかの冒険者もそうだが、お前達も手伝ってくれ」
『手伝えと言われましても・・・いや、そうですね。こういう事はキチンと決めてから行動しないと。気ばかり焦って全然落ち着かないですし。玄人、アマリ、よろしいですか?』
ヒカリは腕組みをして何かを考えるような仕草をした後、俺とアマリージョに同意を求めてきた。
「まあ、俺は全然。ロザリーのことは気になるしね」
「私もです。姉さんも既に手伝ってるつもりでしょうから」
俺もアマリージョも断る理由は何もなかった。
『では、この件については、エンハンブレとして正式に話を聞かせて頂きます。先ほどギルドから正式に依頼が出るとおっしゃってましたが、私たちとは別件ということでお願いします。それから報酬については、取りあえずは貸しということでよろしいですか?』
「そうだな・・・困ったとはいえ情に訴えて協力をしてもらうのは、俺も好きじゃねぇ。どんな働きをするかは分からんが、働きに応じて何か考える。それまでは、おチビちゃんの言う通り貸しで構わない。それにそこまで言うなら、その眷属を倒したという実力を見せて貰おうじゃねぇか」
『分かりました。では質問がいくつかありますので教えて頂けますか?』
そう言うとヒカリは、ギルドの職員が偵察を終えて戻るまで、モンローを質問攻めにした。
質問の内容は、主に事件の背景に関することが多く、ロザリーの事というよりも、誘拐事件そのものに関することのように思えた。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
『では、この誘拐事件は、確認されているだけで56人もの人が犠牲になっているのですか?』
「あぁ、最初は4年以上の前の王都から始まった。最初の1年で13人が誘拐され、その全員が殺害された。殺害は決まって2つの月が重なり合う二重月の日。全身の血を抜かれた状態で、街の中や少し離れた郊外に放置されていた」
『血液・・・・二重月・・・・』
ヒカリは何かを考えてるようだ。
「これは今だから簡単に話をしていることだが、最初は分からなかったんだ。どこかの異常者が単に人を殺して回っているとしか思えなかったからな。ただ、この誘拐についていろいろ調べていくと、妙な規則性があることに気がついた。そして、調べていくうちに、その規則性はある儀式を執り行っているからだという結論に達した」
『その儀式・・・とは?』
「邪神の復活のための儀式だ」
『「「邪神!?」」』。
3人で思わず口を揃えて驚いた。
まさか、ここへきて邪神の名前が出てくるとは。
ただの誘拐事件だと思っていたのに・・・
もしかすると俺たちは、とんでもない厄介ごとに首を突っ込んでしまったのかもしれない。
ルージュが驚いた表情でモンローに聞き返す。
「ああ、昨日は人手も少なくてな・・・残業して遅くに帰ったんだが・・・そのままそれっきりでな。今、ギルド職員で行方を捜しているが、もう少し捜して見つからなければ、ギルドから正式に捜索依頼が出ることになっている。だがな・・・最近、誘拐事件が頻発しているのは知ってるだろ。もし、それと同一犯の仕業なら、ロザリーは長くはもたない。だからギルドを上げて手がかりを探しているんだが、こういうのはどうも・・・気ばかり焦っちまって」
「ちょっと、それ大変どころの話じゃないわよね。何落ち込んでるのよ。私も探すのを手伝うわ。あぁ、もう話してる時間も勿体ない。じゃ、先に行くわね」
ルージュはそう言うと、走ってドアから出て行ってしまった。
「姉さん・・・」
「・・・ルージュ・・・行くって何処へ・・・」
『後で私から連絡しておきますよ』
ルージュの行動に固まる俺とアマリージョをよそに、ヒカリは、いつものことと言わんばかりに、全く気にした様子もなかった。
「嬢ちゃんは、俺より単細胞だな。手掛かりも無しに一体どうするつもりなんだ?」
『分かりませんが、彼女は直感型ですから、考えるよりまず行動なのでしょう。それよりもモンローさん、今のところ手がかりは本当に何もないのですか?』
ヒカリが珍しく、少し前のめりでモンローに質問する。。
「それが本当に何もない。逆に何もないから最近の誘拐事件と同一犯だと疑っている」
『それはどういう事ですか?』
「・・・よし。ちょっとお前たち俺の部屋に来い」
モンローに言われ、俺とヒカリとアマリージョの3人で、ギルド三階にある、モンローの個室に行く。
部屋は思っていたよりも綺麗で、ゴミ一つ落ちていない。
内装の装飾は質素だが、置かれている調度品には品の良さを感じた。
「まあ、座れ。ん? 思ったより綺麗でびっくりしただろ?」
「あ、いえ・・・」
図星を突かれ言い淀む。
この人は、言い方こそ違うが、ド直球で核心を突いてくる感じがルージュに似ている気がする。
『それで、モンローさん。わざわざ連れてきて頂いた理由は何でしょうか?』
ヒカリの一言で場の空気に緊張が戻る。
「まあ、そう急かすな。こう見えても、俺は今いっぱいいっぱいなんだ。もうすぐ、偵察に出てるうちのモンが戻る。そうしたら少しは状況も整理できる。これも何かの縁だ。ほかの冒険者もそうだが、お前達も手伝ってくれ」
『手伝えと言われましても・・・いや、そうですね。こういう事はキチンと決めてから行動しないと。気ばかり焦って全然落ち着かないですし。玄人、アマリ、よろしいですか?』
ヒカリは腕組みをして何かを考えるような仕草をした後、俺とアマリージョに同意を求めてきた。
「まあ、俺は全然。ロザリーのことは気になるしね」
「私もです。姉さんも既に手伝ってるつもりでしょうから」
俺もアマリージョも断る理由は何もなかった。
『では、この件については、エンハンブレとして正式に話を聞かせて頂きます。先ほどギルドから正式に依頼が出るとおっしゃってましたが、私たちとは別件ということでお願いします。それから報酬については、取りあえずは貸しということでよろしいですか?』
「そうだな・・・困ったとはいえ情に訴えて協力をしてもらうのは、俺も好きじゃねぇ。どんな働きをするかは分からんが、働きに応じて何か考える。それまでは、おチビちゃんの言う通り貸しで構わない。それにそこまで言うなら、その眷属を倒したという実力を見せて貰おうじゃねぇか」
『分かりました。では質問がいくつかありますので教えて頂けますか?』
そう言うとヒカリは、ギルドの職員が偵察を終えて戻るまで、モンローを質問攻めにした。
質問の内容は、主に事件の背景に関することが多く、ロザリーの事というよりも、誘拐事件そのものに関することのように思えた。
・・・・・
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『では、この誘拐事件は、確認されているだけで56人もの人が犠牲になっているのですか?』
「あぁ、最初は4年以上の前の王都から始まった。最初の1年で13人が誘拐され、その全員が殺害された。殺害は決まって2つの月が重なり合う二重月の日。全身の血を抜かれた状態で、街の中や少し離れた郊外に放置されていた」
『血液・・・・二重月・・・・』
ヒカリは何かを考えてるようだ。
「これは今だから簡単に話をしていることだが、最初は分からなかったんだ。どこかの異常者が単に人を殺して回っているとしか思えなかったからな。ただ、この誘拐についていろいろ調べていくと、妙な規則性があることに気がついた。そして、調べていくうちに、その規則性はある儀式を執り行っているからだという結論に達した」
『その儀式・・・とは?』
「邪神の復活のための儀式だ」
『「「邪神!?」」』。
3人で思わず口を揃えて驚いた。
まさか、ここへきて邪神の名前が出てくるとは。
ただの誘拐事件だと思っていたのに・・・
もしかすると俺たちは、とんでもない厄介ごとに首を突っ込んでしまったのかもしれない。
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