88 / 119
第3章 光と「クリチュート教会」
83話 緑
しおりを挟む
ヴェールの歓迎会というべきか、ピーチティーでの乾杯の会が一段落ついたのを見計らって、戸棚に向かい引き出しを開ける。
「じゃあ、ヴェール・・・スマホ、この中から好きな色をどれでもいいから選んでよ」
ヴェールに声をかけながら、引き出しの中から数台のスマホを取り出し、机に置く。
「私は情熱の赤、アマリが希望の黄色で、クロードは腹黒の黒よ。同じ色が無いから早い者勝ちになっちゃったけど・・・ヴェールは好きな色とかあるの?」
ルージュが、ヴェールの前にスマホを綺麗に並べながら尋ねた。
――え? 俺、腹黒だったのか・・・
「えーと・・では、私は青にします・・・」
ヴェールが、遠慮がちに青色のスマホに手を伸ばす。
「あ、その青、空の色みたいで綺麗ですよね! なんだか・・ヴェールさんっぽい感じの綺麗な色です」
アマリージョが、ヴェールの手に取った青色のスマホを見ながら嬉しそうに言った。
「あぁ・・・青空・・そうですよね。私は、涙の色みたいだなと思ってしまって。これまでの事を思い返せば、悲しい事も多かったんですけど・・・立場上、自由に泣くことも許されなくて・・・」
ヴェールが苦しい胸の内を打ち明けるように、切なそうな表情で呟く。
「ヴェール! そんな・・そんな理由で青を選んだらダメよ! せっかくなんだから、悲しくない・・・楽しい色にしたほうが絶対いいわ! 元気が出る色っていうか・・。なんなら、私と同じ赤に塗り直してもらうっていうのもいいわね!」
ルージュは真剣な顔をしてヴェールの手を握りしめ、必死に訴えかける。
「・・・よね。そんなの、ダメですよね・・・ごめんなさい」
ヴェールが自嘲するように笑いながら、ルージュを見つめる。
「私は、別にダメじゃないと思いますよ。姉さんも・・心配なのはわかるけど、そんな言い方したらヴェールさんがびっくりしちゃうでしょ。それで、私に一つ提案があるんですけど・・」
アマリージョが、絶妙なタイミングで口を開いた。彼女は常に、物事の全体を見ていて、ここぞと言う時に必ず、みんなが納得できる形で落としどころをつけられる、天才的な感覚を持ったバランサーと言えるだろう。
これまで、彼女に救われたことが何度あったことか。
「提案って?」
ルージュは、まだ不服そうではあったが、こういう時のアマリージョの話は聞くべきだと本能的にわかっているらしく、小さく「ごめん」と言って、ヴェールの手を離した。
「確かに・・ヴェールさんが青を選んだ理由はとても悲しいと思います。でも、それを真っ向から否定するんじゃなくて・・その色に、何か他の色を足すっていうのはどうですか?涙だって、悲しい涙だけじゃなくて、うれし涙もあるし、笑いすぎちゃって流す涙もあるでしょ? それに、涙のぶんだけ強くも優しくもなれるって言うし・・。例えば、青に姉さんの赤を足して紫、私の黄色を足して緑とか・・・」
アマリージョは控えめながらも、この上なく素晴らしいと思える提案を口にした。
「アマリっ!! それいい! すごくいいわ、さすが私の妹っ!!」
ルージュがアマリージョに駆け寄り、もの凄い勢いで抱きつきながら言った。
「色を足す・・。すごくいい発想ですね。・・情熱の赤、希望の黄色・・・そうですね、それぞれを足すと、紫・・、緑・・・」
ヴェールは何でも真面目に考えすぎるところあるようで、色一つ決めるにも、難しい顔をして考え込んでいる。
「あっ! ヴェール・・青に、俺の黒を足して藍色っていうのも、落ち着いたいい色かもよ? なんかシックでさ・・・って、おい!」
誰一人俺の話を聞いちゃいない。
ヴェールは顎に手をやり、真剣なまなざしでスマホを見つめているし、ルージュとアマリージョにいたっては抱き合って、きゃあきゃあ騒いでふざけている。
はいはい、また俺は透明なんですねと一人、肩をすくめていると、突然ヴェールが大声でこう言った。
「うん・・決めました!! 緑にします! 青色の涙に、希望の黄色を混ぜて緑。どんな涙であっても、決して希望を失わないように・・。私が、子供の頃に住んでいた孤児院の周りは豊かな緑の木々に覆われ、いつも遊びに行っていた丘は一面、緑の草原でした。そこが私の原点で目標・・・希望なのかも知れないです。それに、緑は人々の癒やしでもありますから・・・」
ヴェールは、何かが吹っ切れたように清々しい笑顔を浮かべると、緑のスマホを手にとり大切そうに両手で包み込む。
「いいじゃない! でも、青のベースは譲らないのね・・赤でも良かったと思うけど・・・ヴェールって意外と頑固なのね。でも、ヴェールらしい、いい色だわ! まあ、そもそも紫は・・・綺麗だけど聖女って色じゃないものね」
ルージュが笑顔でそう言うと、アマリージョも横で嬉しそうにウンウンとうなずいている。
「はい! これからは・・もし、涙を流すことがあっても、決して希望を捨てない・・そして、私の原点である緑を忘れないように。それで、いつか・・ルージュたちに、私はこんなに幸せなんだって笑顔で、胸を張って言えるような・・そういう人生を送れるように頑張ります!」
そう宣言したヴェールは、相変わらず小さく、可憐な姿のままのはずなのに、なぜか、別人のように逞しく見えた。強い意志を持った彼女は、まるで小さな巨人のように頼もしい。
「そうよ! ヴェール。いい感じだわ!! じゃ・・そろそろ、お腹も空いたことだし、みんなで晩ご飯の支度をして、パーティーにしましょう!」
ルージュがヴェールに抱きつきながら頭をクシャクシャに撫でている。
たしか同じ年のはずなのに、全くそう見えないよな・・・ルージュのボス感が半端ないのか、ヴェールの小さくて可愛い小動物みたいな雰囲気がそうさせるのか・・・でも、性格は全く似ていないし、一見あんまり合わなさそうなのに、なんか気が合ってるっぽいのが不思議だな・・そんなことを考えていると、アマリージョが歓喜の声を上げる。
「キャー!! 姉さん、それはいい考えね! パーティなんてワクワクしちゃう! 美味しいものたくさん準備しなきゃ・・あっ、姉さんも隠してるゲフー鳥、出してね!」
「!! ちょ、ちょ、ちょっとアマリ! なに言ってんのよ!? え、なにそれ? そんな鳥がいるんだ~。へぇ~、へんな名前ね! ・・・なによっ! その目は? 疑ってるの!? スマホの中に隠したりしてないわよ! 失礼ね!!」
「・・・」
アマリージョがルージュを横目で睨むと、ルージュが気まずそうに視線を逸らした。やはり彼女は、バカがつくほど正直者で、嘘が苦手のようだった。そんな時、突然ヒカリから通信が入った。
『――玄人、テスターが・・・』
とうとう来たか・・。なるべく考えないようにしていたが、やはりこの瞬間は訪れた。
「あの・・楽しい時間に、水を差すようで悪いんだけど・・・テスターが、あと30分くらいで村に着くって。今、ヒカリから通信が入った・・・」
俺が悪いわけでもないのに、なんだかひどく悪いことをしている気分で、気が滅入る。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
俺の言葉に、3人のテンションが一気に下がり黙り込む。先までの楽しい、暖かい部屋の空気が一瞬にしてマイナスになったような、そんな気がした。
「じゃあ、ヴェール・・・スマホ、この中から好きな色をどれでもいいから選んでよ」
ヴェールに声をかけながら、引き出しの中から数台のスマホを取り出し、机に置く。
「私は情熱の赤、アマリが希望の黄色で、クロードは腹黒の黒よ。同じ色が無いから早い者勝ちになっちゃったけど・・・ヴェールは好きな色とかあるの?」
ルージュが、ヴェールの前にスマホを綺麗に並べながら尋ねた。
――え? 俺、腹黒だったのか・・・
「えーと・・では、私は青にします・・・」
ヴェールが、遠慮がちに青色のスマホに手を伸ばす。
「あ、その青、空の色みたいで綺麗ですよね! なんだか・・ヴェールさんっぽい感じの綺麗な色です」
アマリージョが、ヴェールの手に取った青色のスマホを見ながら嬉しそうに言った。
「あぁ・・・青空・・そうですよね。私は、涙の色みたいだなと思ってしまって。これまでの事を思い返せば、悲しい事も多かったんですけど・・・立場上、自由に泣くことも許されなくて・・・」
ヴェールが苦しい胸の内を打ち明けるように、切なそうな表情で呟く。
「ヴェール! そんな・・そんな理由で青を選んだらダメよ! せっかくなんだから、悲しくない・・・楽しい色にしたほうが絶対いいわ! 元気が出る色っていうか・・。なんなら、私と同じ赤に塗り直してもらうっていうのもいいわね!」
ルージュは真剣な顔をしてヴェールの手を握りしめ、必死に訴えかける。
「・・・よね。そんなの、ダメですよね・・・ごめんなさい」
ヴェールが自嘲するように笑いながら、ルージュを見つめる。
「私は、別にダメじゃないと思いますよ。姉さんも・・心配なのはわかるけど、そんな言い方したらヴェールさんがびっくりしちゃうでしょ。それで、私に一つ提案があるんですけど・・」
アマリージョが、絶妙なタイミングで口を開いた。彼女は常に、物事の全体を見ていて、ここぞと言う時に必ず、みんなが納得できる形で落としどころをつけられる、天才的な感覚を持ったバランサーと言えるだろう。
これまで、彼女に救われたことが何度あったことか。
「提案って?」
ルージュは、まだ不服そうではあったが、こういう時のアマリージョの話は聞くべきだと本能的にわかっているらしく、小さく「ごめん」と言って、ヴェールの手を離した。
「確かに・・ヴェールさんが青を選んだ理由はとても悲しいと思います。でも、それを真っ向から否定するんじゃなくて・・その色に、何か他の色を足すっていうのはどうですか?涙だって、悲しい涙だけじゃなくて、うれし涙もあるし、笑いすぎちゃって流す涙もあるでしょ? それに、涙のぶんだけ強くも優しくもなれるって言うし・・。例えば、青に姉さんの赤を足して紫、私の黄色を足して緑とか・・・」
アマリージョは控えめながらも、この上なく素晴らしいと思える提案を口にした。
「アマリっ!! それいい! すごくいいわ、さすが私の妹っ!!」
ルージュがアマリージョに駆け寄り、もの凄い勢いで抱きつきながら言った。
「色を足す・・。すごくいい発想ですね。・・情熱の赤、希望の黄色・・・そうですね、それぞれを足すと、紫・・、緑・・・」
ヴェールは何でも真面目に考えすぎるところあるようで、色一つ決めるにも、難しい顔をして考え込んでいる。
「あっ! ヴェール・・青に、俺の黒を足して藍色っていうのも、落ち着いたいい色かもよ? なんかシックでさ・・・って、おい!」
誰一人俺の話を聞いちゃいない。
ヴェールは顎に手をやり、真剣なまなざしでスマホを見つめているし、ルージュとアマリージョにいたっては抱き合って、きゃあきゃあ騒いでふざけている。
はいはい、また俺は透明なんですねと一人、肩をすくめていると、突然ヴェールが大声でこう言った。
「うん・・決めました!! 緑にします! 青色の涙に、希望の黄色を混ぜて緑。どんな涙であっても、決して希望を失わないように・・。私が、子供の頃に住んでいた孤児院の周りは豊かな緑の木々に覆われ、いつも遊びに行っていた丘は一面、緑の草原でした。そこが私の原点で目標・・・希望なのかも知れないです。それに、緑は人々の癒やしでもありますから・・・」
ヴェールは、何かが吹っ切れたように清々しい笑顔を浮かべると、緑のスマホを手にとり大切そうに両手で包み込む。
「いいじゃない! でも、青のベースは譲らないのね・・赤でも良かったと思うけど・・・ヴェールって意外と頑固なのね。でも、ヴェールらしい、いい色だわ! まあ、そもそも紫は・・・綺麗だけど聖女って色じゃないものね」
ルージュが笑顔でそう言うと、アマリージョも横で嬉しそうにウンウンとうなずいている。
「はい! これからは・・もし、涙を流すことがあっても、決して希望を捨てない・・そして、私の原点である緑を忘れないように。それで、いつか・・ルージュたちに、私はこんなに幸せなんだって笑顔で、胸を張って言えるような・・そういう人生を送れるように頑張ります!」
そう宣言したヴェールは、相変わらず小さく、可憐な姿のままのはずなのに、なぜか、別人のように逞しく見えた。強い意志を持った彼女は、まるで小さな巨人のように頼もしい。
「そうよ! ヴェール。いい感じだわ!! じゃ・・そろそろ、お腹も空いたことだし、みんなで晩ご飯の支度をして、パーティーにしましょう!」
ルージュがヴェールに抱きつきながら頭をクシャクシャに撫でている。
たしか同じ年のはずなのに、全くそう見えないよな・・・ルージュのボス感が半端ないのか、ヴェールの小さくて可愛い小動物みたいな雰囲気がそうさせるのか・・・でも、性格は全く似ていないし、一見あんまり合わなさそうなのに、なんか気が合ってるっぽいのが不思議だな・・そんなことを考えていると、アマリージョが歓喜の声を上げる。
「キャー!! 姉さん、それはいい考えね! パーティなんてワクワクしちゃう! 美味しいものたくさん準備しなきゃ・・あっ、姉さんも隠してるゲフー鳥、出してね!」
「!! ちょ、ちょ、ちょっとアマリ! なに言ってんのよ!? え、なにそれ? そんな鳥がいるんだ~。へぇ~、へんな名前ね! ・・・なによっ! その目は? 疑ってるの!? スマホの中に隠したりしてないわよ! 失礼ね!!」
「・・・」
アマリージョがルージュを横目で睨むと、ルージュが気まずそうに視線を逸らした。やはり彼女は、バカがつくほど正直者で、嘘が苦手のようだった。そんな時、突然ヒカリから通信が入った。
『――玄人、テスターが・・・』
とうとう来たか・・。なるべく考えないようにしていたが、やはりこの瞬間は訪れた。
「あの・・楽しい時間に、水を差すようで悪いんだけど・・・テスターが、あと30分くらいで村に着くって。今、ヒカリから通信が入った・・・」
俺が悪いわけでもないのに、なんだかひどく悪いことをしている気分で、気が滅入る。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
俺の言葉に、3人のテンションが一気に下がり黙り込む。先までの楽しい、暖かい部屋の空気が一瞬にしてマイナスになったような、そんな気がした。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる