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第2章 光と「ウール村」

65話 スマホ

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「あの~、そろそろ手紙開けたいんだけど・・・」
 家の内覧を心ゆくまで楽しんだルージュとアマリージョは、今度はヒカリのいる娯楽兼作戦室で初めて見るテレビやビデオに大興奮したあと、ゲームをつけて大いにはしゃいでいた。

「え? あっ! そうですよね。ほら、姉さん! また後にしましょう」
「いやよ! 今いいとこなんだから!」
 ルージュはゲーム機が特に気に入ったようで、テレビの前に陣取り全く動こうとしなかった。そんなルージュをアマリージョが無理矢理引っ張って、中央の円卓に連れてくる。

「ごめんなさい。めずらしい物がたくさんあって、見る物すべてが楽しくてつい夢中になっちゃいました」
 アマリージョが謝りながら腰かける。

「もう! いいとこだったのに・・あとでまたやらせてよ!」
「ほら! 姉さん、ここ座って。早く用事を済ませたらいっぱい遊べるでしょ」

 駄々をこねるルージュをなだめながらアマリージョが椅子に促す。ルージュは渋々と言った感じだったが、どうやらあきらめたらしく大人しく腰をかけた。
 一体どちらが姉なのだろうか・・・見れば見るほど不思議だ。

 とりあえず三人揃ったので、俺が代表して手紙を開封する。手紙を開くと、ルージュとアマリージョが同時に覗きこんできた。

 手紙の内容は、装備が出来上がった報告とサイズの微調整もしますとの案内。
 それと手紙が到着する頃には、マンションの調査が始まるとのこと。
 眷属の調査がギルドに依頼され、調査が済み次第、軍が討伐に出るとのことなどが書かれていた。

「うん、読んだわ! 装備を届けるついでの状況報告だけね、じゃあこれで・・・」
 ルージュがソワソワしながら立ち上がろうとする。
 アマリージョか無言でルージュの腕をつかんだ。

「お、ありがとうアマリ・・・ルージュもゲームをやりたいのは分かるけど、俺からも一つあるから、もうちょっとだけ我慢してて」
 そう言って棚から携帯電話をいくつか取り出して、机に並べた。

「これは・・・?」
「なんなのこれ?」
 アマリージョとルージュが携帯をまじまじ眺めながら聞いてくる。

「ええと、これは携帯電話・・・いや、スマホと言って、言わばヒカリの小型版みたいな魔道具かな。たくさん作ったから、ヒカリが2人に一つずつプレゼントだって」

「「え?」」
 ルージュとアマリージョが同時に声を上げ、目を丸くしながら、顔を見合わせる。

「クロードさん・・失礼ですけど、ご自分でおっしゃってる意味がわかってますか? 異世界の魔道具ですよ! これ一つでも、本当に驚くぐらいもの凄い値段がつくんですよ。こんな価値のある物を簡単にプレゼントだなんて・・・」
 アマリージョは、今まで見たことが無い真剣な顔で、なんだかわからないが少し怒っているようだった。でも俺をひどく心配してくれているのがよくわかった。

「あ、いや・・いいんだよ。ヒカリは最初から、そのつもりでいたみたいだし。それに、ほら、今はちゃんと仲間な訳だから。この部屋だって、仲間専用の作戦室なんだよ。だから、仲間のしるしとして、あまり深く考えないでもらってくれるとうれしいんだけど・・」

「うひょー。ありがとうヒカリ!! 超ラッキー!! 私、仲間になって本当に良かったわ! ほらアマリもそんな顔してないでお礼言いなさい」
 ルージュは本能に忠実、基本難しいことは考えないタイプなので、こういう時は本当に助かる。

「それに、このスマホ。こうやると地図が出てみんなの位置が確認出来たり、このマークを押すと」

『私やクロードと通信ができます』
 突然喋り出したスマホに唖然とする2人。

「!! ヒカリ? わかった、この中に入ってるんでしょ!」
「誰? ヒカリさんみたいですけど。どこから喋ってるんですか?」
 二人とも驚きながらも、わくわくしているのが伝わってくる。

「これは、元々遠くにいても話が出来る魔道具なんだよ。俺は身体の中にあるから、無くても話せるけど」

「すごく便利ですね。これがあれば遠くにいても・・・例えば・・・そう、ブルーノさんとも連絡が取れるってことですか?」
 アマリージョの表情は、さきほどの怒っている時とは打って変わってキラキラしている。

『遠すぎるとダメですが、今少しずつ話せる距離を拡げていますので、そのうち王国全土で使えると思います』

「あと、こうやってスマホをかざすと、手荷物くらいの量なら収納出来るんだよ」
 そう言って、机の上にあった手紙をスマホに収納して見せた。

「すごい・・・本当にいいんですか? こんな凄いものを頂いちゃって・・・」
 アマリージョが遠慮がちに聞いてきた。

「いいに決まってるよ。それに今後戦ったりするのにも、このイヤホンを使えば武器を持ったまま会話も出来て楽だしね」

「でも・・これ、本当に凄いです・・・。そう言うことなら遠慮なく頂きます、ありがとうございます。あと、さきは驚きすぎて、きつい言い方をしてしまってごめんなさい」

「いいよ、気にしてないから。俺を心配してくれてたってわかってるよ」
 お互いに顔を見合わせて、少し恥ずかしそうに微笑みあう。

「アマリはこういう時真面目に遠慮しちゃうのよね~。くれるって言うんだから、遠慮なくもらうのが、ある意味礼儀よ」
 ルージュがうんうんとうなずきながら、満足そうな顔をしている。

「まあ、そんな時もあるけど、ルージュはたまには遠慮したほうがいいと思うよ」
 俺がそう言うと、アマリージョが吹き出した。

「ちょっと何なのよ!? 二人して! まあいいわ。それで? これは好きな色選んでいいわけ?」
 ルージュはちょっとムッとしたものの、自分の欲望にどこまでも忠実だった。

「ごめん、ごめん。ルージュはルージュらしいのが一番だよ。で、どの色が好き?」
 言い訳をしながら、スマホをずらりと並べて見せる。

「私はやっぱり赤ね。力漲る情熱の色って感じ」
 そう言ってルージュは迷うことなく赤色のスマホを取った。

「じゃあ、私は希望の黄色。幸せになる色と言われていますから」
 アマリージョは嬉しそうな顔をしながら黄色のスマホを手に取る。

「クロードは?」

「あ、俺はヒカリに目の奥に埋め込まれてるから、必要ないかな」

「でも、収納出来るのよ? 便利よ! きっと。えっ・・まさか顔から火が出るみたいに、目から物が飛び出すからいらないとか?  やめてよ! 目から、荷物とか出てきたら、私笑い死にするわ」
ルージュが真面目ともふざけているとも判断のつかない顔をして言ってくる。

「ちょっ、姉さん!」
 アマリージョは想像するだけで楽しいのかすでに半笑いだった。

「・・・俺は黒にするよ」
 そう言って元々自分の持っていた黒のスマホを棚から取り出した。

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