41 / 119
第2章 光と「ウール村」
39話 ウール村
しおりを挟む
一時間ほど歩き、森を抜けると、村が見えてきた。
村の外側は、動物避けだろうか、1メートルほどの木の柵に囲まれている。
思っていたよりも、かなり大きい村のようだ。
村の入り口には、少年が一人、槍を持って立っている。
「おーい」
先頭を歩いていたポッケルがその門番らしき少年に声をかけた。
少年は、こちらに気がつくと、槍をその場に置いて村の中へ走って行ってしまった。
――あれ、門番いなくなったぞ・・・槍置きっ放しだし・・・
『――あれは、おそらく人を呼びに行ったのでしょうね』
ヒカリが通信で説明してくれた。
――そういうことか
村の入り口までくると、さきほどの門番と思われる少年が、数人の大人を連れてきていた。
「おぉ、ルージュとアマリか・・・」
真ん中にいた老婆がこちらに話しかけてきた。
「あ、ケナ婆っ」
「ケナ婆さま・・・心配をかけてごめんなさい」
ルージュとアマリージョが老婆に答える。
「お前達、よく無事で・・・ベニートもよくやってくれた。後でわしの家に来て報告を頼むぞ」
老婆の隣にいた恰幅良い男性がベニートに話しかけた。
「はい村長。ですが、二人が無事だったのは私が・・というよりは、こちらの方が・・」
そう言ってベニートがこちらを見た。
「そちらの方は・・?」
村長と呼ばれた恰幅良い男性が話しかけてきた。
「えーと。クロードと申します・・・」
――仕事だと普通に挨拶出来るのに、なんかダメダメだな。
「村長さん」
アマリージョが続ける。
「こちらのクロードさんは、ウール村の移住者募集を知ってわざわざ来られたそうで、その道中、私たちが森でオグルベアに襲われていたところを助けて頂きました」
「なんと・・・移住もだが・・・いやオグルベア?やはり、いたのか・・・それで何か痕跡はあったか?」
村長が驚きながらベニートに確認する。
「後ほどきちんと報告しますが、我々も足跡を確認しました。新しいものでは無かったので、ルージュ達を襲った際のものだとは思いますが」
「そうか・・・間違いならばと思っていたが・・・これはいよいよ組合に討伐依頼を出さんといかんのぉ」
「でも、そのオグルベアならとっくにクロードが倒してるわよ」
「「「「「はぁ?」」」」」
ルージュの言葉が全員で反応する。
「倒したって・・・あんたが?」
ベニートが慌てて聞き直してきた。
「え、あ、まぁ、成り行きで・・・まぁたまたまです」
「オグルベアは、そんなたまたまとかで倒せる魔物と違いますよ!」
――あれ、なんかベニートさんに怒られてるのかな?
興奮したベニートを村長がたしなめる。
「まあいいベニート。そんなに興奮するな。ここで話していても埒があかん。取りあえずは報告が先だ。わしの家に来てくれ。それと・・・クロードさんだったか?申し訳ないんだが、移住の件も含めてちゃんと話もしたいので、後ほどルージュとアマリと一緒にわしの家まで来てもらえないか」
「あ、はい。分かりました」
精一杯、愛想よく答える。
「じゃ、クロード。私たちの家まで案内するわ。それから荷物を置いて村長の家に行きましょう」
「そうですね」
ルージュとアマリージョがそう言うと、ずっと黙っていた老婆が話しかけてきた。
「そこの御仁たち、その前にちょっとうちに寄っていっては貰えぬかの?」
ケナ婆と呼ばれた老婆の一言で、村長含めて全員の動きが止まった。
「ケナ婆?何か話でもあるの?」
その中でルージュがいち早く反応し、不思議そうに聞き返す。
「いやいや、ちょっと話がしたいだけじゃ。ルージュとアマリも一緒においで。サンノ、お前もいいね。 ベニートとの話が終わったらでいいから、私のところまで来ておくれ」
「わかった・・・では、また後で・・・」
村長がケナ婆にひと言声かけ、こちらに会釈をしてきた。
――お辞儀は同じなんだな・・・
妙なところで感心してしまったが、あわてて村長に会釈して返す。
「じゃ、ケナ婆、家までおんぶしていってあげるね」
ルージュはそう言うとケナ婆を軽々と背負い、家と思われる方向へと走り出した。
アマリージョはルージュが置きっ放しにした荷物を持ち上げながら、あきれた顔でため息をつき
「じゃ、私たちも行きましょう」
と優しい顔で微笑んだ。
村の外側は、動物避けだろうか、1メートルほどの木の柵に囲まれている。
思っていたよりも、かなり大きい村のようだ。
村の入り口には、少年が一人、槍を持って立っている。
「おーい」
先頭を歩いていたポッケルがその門番らしき少年に声をかけた。
少年は、こちらに気がつくと、槍をその場に置いて村の中へ走って行ってしまった。
――あれ、門番いなくなったぞ・・・槍置きっ放しだし・・・
『――あれは、おそらく人を呼びに行ったのでしょうね』
ヒカリが通信で説明してくれた。
――そういうことか
村の入り口までくると、さきほどの門番と思われる少年が、数人の大人を連れてきていた。
「おぉ、ルージュとアマリか・・・」
真ん中にいた老婆がこちらに話しかけてきた。
「あ、ケナ婆っ」
「ケナ婆さま・・・心配をかけてごめんなさい」
ルージュとアマリージョが老婆に答える。
「お前達、よく無事で・・・ベニートもよくやってくれた。後でわしの家に来て報告を頼むぞ」
老婆の隣にいた恰幅良い男性がベニートに話しかけた。
「はい村長。ですが、二人が無事だったのは私が・・というよりは、こちらの方が・・」
そう言ってベニートがこちらを見た。
「そちらの方は・・?」
村長と呼ばれた恰幅良い男性が話しかけてきた。
「えーと。クロードと申します・・・」
――仕事だと普通に挨拶出来るのに、なんかダメダメだな。
「村長さん」
アマリージョが続ける。
「こちらのクロードさんは、ウール村の移住者募集を知ってわざわざ来られたそうで、その道中、私たちが森でオグルベアに襲われていたところを助けて頂きました」
「なんと・・・移住もだが・・・いやオグルベア?やはり、いたのか・・・それで何か痕跡はあったか?」
村長が驚きながらベニートに確認する。
「後ほどきちんと報告しますが、我々も足跡を確認しました。新しいものでは無かったので、ルージュ達を襲った際のものだとは思いますが」
「そうか・・・間違いならばと思っていたが・・・これはいよいよ組合に討伐依頼を出さんといかんのぉ」
「でも、そのオグルベアならとっくにクロードが倒してるわよ」
「「「「「はぁ?」」」」」
ルージュの言葉が全員で反応する。
「倒したって・・・あんたが?」
ベニートが慌てて聞き直してきた。
「え、あ、まぁ、成り行きで・・・まぁたまたまです」
「オグルベアは、そんなたまたまとかで倒せる魔物と違いますよ!」
――あれ、なんかベニートさんに怒られてるのかな?
興奮したベニートを村長がたしなめる。
「まあいいベニート。そんなに興奮するな。ここで話していても埒があかん。取りあえずは報告が先だ。わしの家に来てくれ。それと・・・クロードさんだったか?申し訳ないんだが、移住の件も含めてちゃんと話もしたいので、後ほどルージュとアマリと一緒にわしの家まで来てもらえないか」
「あ、はい。分かりました」
精一杯、愛想よく答える。
「じゃ、クロード。私たちの家まで案内するわ。それから荷物を置いて村長の家に行きましょう」
「そうですね」
ルージュとアマリージョがそう言うと、ずっと黙っていた老婆が話しかけてきた。
「そこの御仁たち、その前にちょっとうちに寄っていっては貰えぬかの?」
ケナ婆と呼ばれた老婆の一言で、村長含めて全員の動きが止まった。
「ケナ婆?何か話でもあるの?」
その中でルージュがいち早く反応し、不思議そうに聞き返す。
「いやいや、ちょっと話がしたいだけじゃ。ルージュとアマリも一緒においで。サンノ、お前もいいね。 ベニートとの話が終わったらでいいから、私のところまで来ておくれ」
「わかった・・・では、また後で・・・」
村長がケナ婆にひと言声かけ、こちらに会釈をしてきた。
――お辞儀は同じなんだな・・・
妙なところで感心してしまったが、あわてて村長に会釈して返す。
「じゃ、ケナ婆、家までおんぶしていってあげるね」
ルージュはそう言うとケナ婆を軽々と背負い、家と思われる方向へと走り出した。
アマリージョはルージュが置きっ放しにした荷物を持ち上げながら、あきれた顔でため息をつき
「じゃ、私たちも行きましょう」
と優しい顔で微笑んだ。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
スライムの恩返しで、劣等生が最強になりました
福澤賢二郎
ファンタジー
「スライムの恩返しで劣等生は最強になりました」は、劣等生の魔術師エリオットがスライムとの出会いをきっかけに最強の力を手に入れ、王女アリアを守るため数々の試練に立ち向かう壮大な冒険ファンタジー。友情や禁断の恋、そして大陸の未来を賭けた戦いが描かれ、成長と希望の物語が展開します。
金眼のサクセサー[完結]
秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。
遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。
――しかし、五百年後。
魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった――
最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!!
リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。
マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー
※流血や残酷なシーンがあります※
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
レベルが上がりにくい鬼畜な異世界へ転生してしまった俺は神スキルのお陰で快適&最強ライフを手にしました!
メバル
ファンタジー
元地球生まれの日本人。
こよなくタバコと糖分を愛しタバコは1日5箱。糖分は何よりもあんこが大好物。まず俺は糖分過多で28歳で二型糖尿病というファックなスキルをゲット。更にタバコの吸いすぎで40歳独身のおっさんは、気づいた時には時既に遅し。普通に末期の肺癌で死んだ。
たったの40年。不健康な生活をしてしまった付けだろう。
そして俺は死ぬときに強く思った。
願わくば次に生まれ変わる場所では、不健康な生活を好む体に生まれ変わりますように……
と強く願ったら地球ではなく、まさかの異世界転生をしてしまう。
その場所はベイビーから老人までレベルが存在する世界。
レベルにより生活も変われば職業も変わる。
この世界では熟練度・スキル・アビリティ。これも全てレベルが存在する。
何をしてもOK。
どう生きるかも自由。
皿洗いでも皿洗いの熟練度レベルがある。
レベルが低い者は重宝されない。
全てはレベルの世界。
しかしこの世界のレベルは非常に上がりにくい。
ゆえにレベルが低い者は絶望的な世界。
まさに鬼畜な世界。
そう鬼畜な世界だったのだが……
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
そっと推しを見守りたい
藤森フクロウ
ファンタジー
綾瀬寧々子は気が付いたら、大好きな乙女ゲームの世界だった。
見習い神使として転生していた新生オタク『アヤネコ』爆誕である。
そしてそこには不遇ながらも必死に生きる推しこと『エルストン・ジル・ダルシア』がいた。
母を亡くし失意の底に居ながらも、双子の弟妹の為に必死に耐える推し。
今ここに、行き過ぎた愛が圧倒的な行動力を伴って推しを救う―――かもしれない。
転生したヤベー人外と、それにストーカーされている推しのハートフル(?)ストーリーです。
悪気はないが大惨事を引き起こす無駄にパワフルで行動派のお馬鹿さんと、そんなお馬鹿さんに見守られているのを知らずに過ごす推し。
恋愛要素薄目、ほぼコメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる