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第1章 光と「クロード・ハーザキー」

33話 馬

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 洞窟を出て数分後、湧き水があふれ出ている、例の切り株の所まで来て、ペットボトルに湧き水を汲んでいる。

――そういえば、改めて見ると、二人ともかなりの美人だよな

 今頃になって気持ちに余裕が出てきたのか、初めてちゃんと二人の顔を見たような気がして、ヒカリに聞いてみた。

『――そうですね。まだ幼いので恋愛対象ではないと思いますが、タイプの違う美人姉妹ですね』

――やっぱりそうか。でも今頃そんなこと言うなんて変だよな

『――村に行くことになり、二人と会話をすることで気持ちがだいぶ楽になったんでしょう。人は気持ちに余裕がないときは周囲が見えなくなるといいますから』

 確かに、この世界に来てからは、ずっと気持ちが張りつめていた気がする。
 2人に出会えて良かった。
 改めて感謝しないとな。

「ねぇ、ルージュ。そういえば、村には馬車・・・いくつくらいあるの?」
 荷物を取りに来る際の馬車が、すぐに借りられるか心配で遠慮がちに聞いてみた。

「馬車は問題ないと思うわ、ただ馬がね・・・」
 ルージュがそう言うと、アマリージョが続けた。
「以前は、馬や牛、特に羊などの家畜も多かったんですが、ここ最近の不作と水不足で、村の人も多く出て行ってしまって・・。馬車は使っていないものがありますが、馬は、今2頭しか残っていません。その2頭も村長さんの馬なので、貸してくれるとは思いますが、他に仕事があればその次、ということになるかも知れません」

 どうやら村長さんは、頼りになる人物のようだ。
「そういう事か・・・ねぇヒカリ。もし馬が借りられるとして、それで戻ることになった場合、どれくらい時間がかかるかな?」

『はい。そうですね・・・アマリージョさん?』

「はい、なんでしょう」

『あの魔物に襲われた場所から、ウール村まではどのくらいの距離かわかりますか?』

「なんであたしに聞かないのよ」
 ルージュが口をとがらせる。

「いいのよ、どうせ姉さんは、いっぱいとか、すんごいとかでしか答えないんだから」
 アマリージョがルージュを黙らせる。

「すみません。で、えーと距離ですね。いろいろぐるぐる回りながらだったので、ハッキリとは言えませんが、だいたい100メトロくらいだと思います」

『平地を1メトロ歩くにはどれくらいの時間がかかりますか?』

「ゆっくり歩いてだいたい10分くらいですね」

『念のため私たちの時間の1分と、こちらの世界の1分が同じかどうか確認したいのですがよろしいですか?』

「はい、別にいいですけど、昨日のご飯を温めてるときの3分は同じ3分でしたよ」

『ありがとうございます・・・念のため伺いますが、60分で1時間、24時間で1日、365日で1年でしょうか?』

「はい、あってますが1年は403日です」

「えっ、ながっ・・・」

『ーー以降、単位を分かりやすいように翻訳します』

 一呼吸置いてからヒカリが更に質問した。
『・・・あと、場所に関してですが、ウール村の場所は森の外側ですか?』

「そうです。森を抜けてすぐの場所にあります」

『・・・・・方角にもよりますが、馬車だと最短で4時間、最長でも6時間くらいです』

「結構あるな。明るいうちに、往復するにはギリギリの感じか・・・」

玄人クロードさんが、馬車を引いて走れば、だいたい3時間くらいですよ』

「え・・引くって、俺、馬?」

『それが最短での移動方法です。馬もいりませんし。帰りは多少重くなりますが問題ありません」

「問題あるよね? 引くの俺だよね? 別の馬の話してる?」 

『ご心配なく、玄人クロードさんの話ですよ』

「・・・もういいよ、ヒカリらしい考え方だよね・・・」


「まあ、荷物は後で取りにくるとして、どうするかはとりあえず村についてから、考えるよ」
 馬が借りられることを願い、結論を後回しにする。

『そうですね。数日であれば荷物が無くなる可能性も少ないでしょうから』

 湧き水が全て一杯になってところで、ペットボトルを自分の荷物の中に入れる。
 アマリージョは「怪我は大丈夫だから荷物を持ちたい」と言ってきたが、急に格好をつけたくなって「全部俺が持つから大丈夫だよ」と見栄を張ってしまった。

 しかし、身体能力が高くなり、軽く持てるようになったとは言え、疲れるものは疲れる。

 これからはあまり見栄を張らないようにしよう。
 人間、素直が一番だ。
 そんな事を考えながら、ウール村へと急ぐ。

――はぁ、早く着かないかな・・・

『――見栄を張るからですよ』
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