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第二章 乙女ゲーム?

巻き込む勇気

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「……あのー、エンゼルランプ様……
お─私、になにかご用があったのではないですか?」 

俺、と言いかけて口調を丁寧なものに直す。
キールには本性がバレてしまったけど、エンゼルランプ様にはまだ猫を被っていたい。 

放心状態だったエンゼルランプ様が、俺の声に気づいた。正気を取り戻したようだ。 

「嗚呼。サザンカ、大事な話がある。」 

チラッとキールの方を見たエンゼルランプ様。
王族、それも皇太子に向かって、席を外せとは言えない。
大事な話がある、といえば、自分から席を外してくれると思ったのだろう。
だがキールは、俺の側から離れるつもりはないようだった。 

「キール?聞いててもつまんないと思うよ。それに、叔父さんのところに行かなくても大丈夫なの?今頃探してるんじゃない?」 

俺としてもこんな身内のゴタゴタを、キールに聞かせたくなかった。 

だが、キールはニコッと笑ってこう言った。 

「叔父さんなら、夕方までかかるって言ってたから、きっとまだ仕事してると思う。 

それにね。俺、サザンカの大事な話をつまんないなんて思わないよ。 

それとも…やっぱり、俺が側にいるのは嫌?」


上目遣いで瞳を潤ませて俺を見つめるキール。
まるで自分の顔の活用法をわかっているようだ。 

ヴッッッ!!!
そんな顔されたら頷くしかないだろ!? 

「わ、わかった!わかったから!
だからその顔やめて!胸が苦しくなる!」 

その破壊力に倒れそうになるがギリギリ踏みとどまる。
くそっ!なんて子なんだ!このクール系男子である俺を萌え死にさせようとするなんて!



と、ここでエンゼルランプ様がゴホンと咳払いをした。 

あ、やべ。また俺とキールの2人だけの世界に入ってしまっていたようだ。
少し、エンゼルランプ様に残念なものを見るような目で見られた気がするが、そこは置いておく。




「ではサザンカ。君、魔力測定は受けたか?」


「……ちょうど、昨日受けました。」 

俺は目を伏せて、そう答えた。 



どうしよう、属性を聞かれたらなんて答えよう。 

キールもエンゼルランプ様も、どちらも信用するに値する人たちだ。だから、俺の属性を言ってもいいのかもしれない。 

でも、だからこそ。
だからこそ、俺の属性を知ってしまった結果、この人たちをなにか悪いことに巻き込んでしまいそうで怖いのだ。 

ヴァルカンは俺の執事だから、巻き込むことにあまり躊躇はなかった。 

だが、この2人は?この2人と俺との関係はなんだ?
まだ、名前を付けられるほどに成熟していないこの関係の2人を、本当に巻き込んでもいいのか?



「ねえ、サザンカ。」 

ぐるぐる悩んでいた俺に、キールが声をかけた。 

「サザンカが何を悩んでいるのかは分からないけどさ。」 

「…………大したことじゃないよ。」 

嘘だ。
見ず知らずの俺を助けてくれたエンゼルランプ様。前世の俺を救ってくれたキール。
その2人のことを大したことじゃないと、嘘をついた。
でも、どうやって俺のこの悩みを言えようか。この悩みを言ってしまったら最後、2人を巻き込んでしまうことになる。
それで、良い訳がないだろう。 

悶々と悩んでいる俺を、キールはじっと見つめていた。
そして、キールはこう言い放った。 

「──嘘、だよね。」


何故、と思い咄嗟にキールの方を見てしまう。
これでは態度で答えているようではないか。 

「付け加えると、優しいサザンカのことだから、悩んでいるのは恐らく、この場にいる俺かエンゼルランプ卿に対してだね。
それか、両方か。」 

「そ、そんなこと、ない。」 

なんて鋭いんだ。
必死に態度に出さないようにしているが、動揺のあまり変な汗が出てきているし、目が揺れている。
これではその通りです、と言っているようなものだろう。 

「……そんなに怖がらないで、サザンカ。 

俺、サザンカが側にいるって言ってくれた時から、ずっと思ってることがあるんだ。



もし、サザンカを苦しめるものがあったら、俺がその苦しめるものからサザンカを守りたい。 

サザンカが、悲しむことがあったら、抱きしめてあげたい。 

サザンカが、怒るようなことがあったら、俺が笑顔にしたい。


この気持ちは、きっと生まれ変わっても変わらない。それくらい、強い思いなんだ。」 

キールの瞳は、強い意思を宿している。 

まるで、サザンカは俺が守る、と言ってるかのようだ。いや、実際その意味なのかもしれない。 

そして、エンゼルランプ様も、俺に語りかけてきた。 

「サザンカ。俺からも言いたい。
君が優しい子だということは、もう理解している。 

だが、君だって甘えていいんだ。全部一人で抱え込むな。
君は周りに頼ることを知らないだけかもしれないが─···しかし、信頼を寄せて貰えないのは、少し悲しいな。」



────いいのかな。 

この2人なら、巻き込んで頼ってもいいのかもしれない。
俺を助けてくれたこの2人だから。





「あ、あの、俺、は────」
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