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第二章 乙女ゲーム?

魔力暴走

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電車の中で、スマホの電源をつけ、最近ハマっている乙女ゲームを開く。
軽快な音楽とともに、眩いイケメンたちがこちらに手を伸ばしているイラストが表示される。


初めから
途中から
やり直す

3つの選択肢が表示され、迷いなく途中からを選択する。


真紅の髪に、勿忘草色の瞳を持った青年が映し出される。 

──···サザンカだ。


サザンカ
「お前に分かるか?僕の心が……」▼ 

美しいその顔に薄笑いを浮かべながら、問うてくる。


サザンカ
「実の父親に愛して貰えず……、僕を愛してくれたという母上は、もういない。
………母上は物心着く前に死んだからな。」▼ 

淡々と、まるで業務報告するように話すサザンカ。
だが、その表情はどこか悲しそうだ。


あなた
「わかるわけないでしょ!?あなたなんかの心なんて!!!」 

➤「いいえ……分かるわ。だって私たちは同じ人間だもの。」 

「………………」






サザンカ
「……………そうか。同じ人間だから、か……。」▼


サザンカ
「…では、もう1つ教えてやろう。
…父上はな、僕に風属性がないとわかった途端、本気で殺しにかかったんだ。」▼


サザンカ
「あの時は流石に驚いたよ。
だから……僕は、魔力暴走を起こしてしまったんだ。」▼


サザンカ「その時、父上は僕になんと言ったと思う?」▼




──···サザンカは、なんて言われたんだっけ……?
魔力暴走なんて起こしたら、普通、親は心配するだろう。
そして、普通だったらきっと、
大丈夫かと、直ぐに駆け寄ってくれるんだ。


そこを、公爵は、確かこう言ったんだ。






「『化け物め!』」



───······目を開けると、
辺りは炎に包まれていた。
カーペットは燃え、執務机なんてキャンプファイヤーみたいに燃え上がっていた。 

そして、公爵が尻餅をついて、こちらを見て罵っている。



事態が飲み込めなくて一瞬焦ったがが、
直ぐに公爵との直前のやり取りを思い出した。 

公爵は蹲る俺に魔法を使って"躾ようとした"んだ。 

だが、それは"躾"なんて、生温いものじゃない。
それをわかっていた俺は、咄嗟に自分の身を守ろうとして────魔力暴走を起こしたんだ。 

たしか、乙女ゲームのサザンカはここでこの炎の正体が分からなくて、ただただ怖がることしかできなかったのだ。

だが、「この炎は俺を守ってくれている」と直ぐに理解した。


だって……だって、この炎は、いつの日か母上が俺に見せてくれた炎にそっくりだったから。
この炎は、俺の味方なんだ。そう、思った。


「クソッ!!なんなんだこの炎は!!!
お前がやったんだろう!?
早く消せ!この、化け物め!!!」 

公爵は、腕に俺の炎が燃え移ったらしく、のたうち回っている。


──でも、きっと今炎を消したら俺、きっとものすごい酷い目に合うんだよなー。
だって、乙女ゲームの中のサザンカも、そうだったから。
……ならば、ここで取るべき行動は、







俺は、
目の前でのたうち回っている公爵を一瞥し、
そして───·····











逃げた。
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