雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎

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最終章 奈落ノ深淵編

第128話 圧倒的な力

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 先に動き出したカタリナは勢いよく飛び出し、俺へ剣を振るう。

「フールさん! 危ない!」

 俺の目の前にルミナが立ち塞がり、盾でカタリナの刃を受け止め、攻撃を防いだ。

「カタリナさん! カタリナさんもバルバドス側についているんですか!?」

 ルミナの問いかけに対して、食いしばり、辛い表情を見せるも何も言葉を発することはない。
 ルミナの言葉を振り切ろうとするように剣を激しく振り、ルミナに攻撃を畳みかけた。
 盾を器用に使い、カタリナの攻撃をパリィする。大きな隙を見せるがそこは戦いな慣れているカタリナである。カタリナはすぐにステップを踏んで後ろに下がり、態勢を整え、攻撃をまた仕掛けた。

「ルミナ! 大丈夫か!?」

「私は大丈夫です!」

 その時、ルミナの正面にノンナが現れる。

「遅い」

 ノンナはルミナの盾を蹴り上げ、態勢が崩れた瞬間にルミナの身体を蹴りつける。

「きゃあああああ!!!!」

 蹴りつけられたルミナは吹き飛ばされ、壁に打ち付けられてしまった。

「ルミナ!!」

「人の心配をしている場合か?」

 俺がよそ見をしている間にノンナは既に俺の懐に入っていた。
 そして、避ける間もなくノンナの拳がみぞおちに入る。身体が宙を舞い、俺はそのまま床に身体を打ち付けた。

「くぅ……な、何て速さと攻撃力だ」

 俺は腹を抑えたまま、自分に“治癒”を掛け、傷をいやす。

「おい、お前。手加滅したろ」

 ノンナは振り向き、カタリナへ言う。

「やる気あんのか?」

「……」

「私は別に良い。ただ、お前の身の保証はしないが」

 カタリナは剣を強く握る。確かに、カタリナはわざと攻撃を当てないように動いていたのは事実だった。しかし、ノンナにそれを見透かされてしまったことで、自分の行いをごまかすことができない状況になってしまった。
 本当は戦いたくない、使ろバルバドスには歯向かいたい。しかし、歯向かえばあの兵士やクレドのように簡単に殺される。
 カタリナの様子を見た後、ノンナはアスモディーの方を見る。アスモディーはただうなだれたまま突っ立っている。ノンナ果れた顔をして溜息を吐いた。

「邪魔だけはするな」

 その一言を残して、ノンナは目にも止まらぬ速さでソレーヌのもとへ近づき、がら空きのお腹に拳を突き刺す。

「ぐ……」

 ノンナの一撃によってソレーヌは一瞬にして気を失ってしまった。

「わぁ!? ソレーヌ!! しっかりするんだぞ!!」

 ソレーヌの頭の上にいたバトラが慌てて、ソレーヌの身体を揺らすが起き上がる気配はない。

「パトラ!! 逃げろ!!」

「え?」

 俺の言葉など、届かずにノンナの蹴りがパトラを襲う。
 蹴りつけられたバトラの帽子が舞い上がり、ソレーヌの胸元へと落ちる。
 パトラの小柄な身体は大きく飛ばされ、床へと転がる。パトラの頭から大量に出血しているのが見えた。急いで治療しなくてはパトラの命に関わってしまう。
 俺は立ち上がり、バトラへ近づこうとするがその間にまたしてもノンナが入り込み、俺の顔面を殴って、身体を後ろへ飛ばす。

「こいつ!」

 シュリンがノンナへ向けて魔法詠帽を始めた時、横から爆発が起こる。シュリンは爆発に巻き込まれ、身体が吹き飛ばされる。
 シュリンが顔を上げ、爆発の方向を見るとサラシエルとセインがいた。
 しかし、2人の顔は暗い表情をしており、サラシエルに関しては半泣きだった。

「あなた、たち……」

「ち、違うの……こんなこと……」

「……」

 セインは顔を伏せたまま、サラシエルに魔法威力上昇の援護をしていた。
 シュリンもやられた。となると残されたのはアルとイルだけだった。

「みんな!?みんなをよくも!!」

 アルは手をノンナの方へとむけると、ノンナの居た床の石が溶けるように変化する。地母神の力で、エントランスの石でできた床を砂へと変えたのだ。砂となった地面がノンナの足をからめとり、拘束する。
 その隙にイルはぬいぐるみを放り投げる。ぬいぐるみの身体にシャンデリアやランタンなどの装飾品がまとわりついて、人形になる。

「やっつけて!!」

 イルの言葉に従うようにノンナへ向けて石人形が拳を振る。

「甘い」

 しかし、ノンナは足が拘束されているのにも関わらず上半身だけで石人形の拳を避ける。
 そして、ノンナの右ストレートが石人形に直撃すると、身体は粉々に砕け、ぬいぐるみだけがその場に残った。

「私のぬいぐるみ……」

 イルはショックでその場にへたり込み、戦意を喪失してしまった。
 ノンナはめり込んだ足を力技で引き抜き、2人の元へとにじり寄る。
 アルはイルの前に立ち、腕を大きく広げてみせる。

「イルは私が守る!!」

「お姉ちゃん……」

 ノンナは慈悲もなくアルの元へと歩み寄っていく。
 フールはゆっくりと立ち上がろうとするが力が入らない。ダメージを受けすぎた為、自分に治癒を掛けなくては動くことはできなかった。
 一方で、カタリナは果然と立ち尽くしていた。
 ノンナは魔人六柱の中でも戦闘のスペシャリストであり、最強の強さを誇る実力の持ち主だ。彼女のその実力は、今、目の前の惨状が表している。
 カタリナは歯向かう恐怖と死に恐れ、そして命の恩人であるフール達を裏切りたくない気持ちに縛られ、身体が動かなかった。



 私は何のために騎士になったのだ? 秩序を……人を守る為ではないのか? でも、どうしても身体が動かない。どうしてだ?


 それは怖いからだ。お前の騎上道とは所詮そんなものだ。大きな権力に屈し、己と仲間を後牲にしたくないがために目の前で壊滅している命の恩人さえも手を差し伸べることなどできずに、ただただ怖がって突っ立っているだけの歪んだ騎士道に落ちたんだよお前は。


 辞めろ。


 死なんて恐れず、騎士道に従えば反旗も翻しただろう? すぐにノンナを止められただろう? でもお前はしなかった。それは権力、相手の実力におそれ、そして生を選んだのだ!


 辞めろ!


 お前の師である者が死んでから、お前の騎士道は既に歪んでいたんだ!!


 もう、もう、もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう辞めてくれぇえええええええええええええええええええぇぇ!!!!!!!!


 お前は、騎士失格だ。


 自分の内なる精神に敗れ、膝から崩れ落ちる。

「目障りだ。お前も、落ちろ」

 ノンナが挙をアルの身体へと振るう。

 アルは覚悟を決めて、目を閉じた。
 鈍い音が部屋中に響く。しかし、アルは身体に痛みを感じなかった。
 不思議に思いゆっくりと目を開けると、目の前に人が立っている。
 四肢のように黄色い髪と尻尾、後ろから見ても筋肉質なのが分かる。
 その後ろ姿を見たアルは一気に緊張が抜け、その場に倒れてしまった。
 カタリナが顔を挙げる。その時、カタリナは目の前で起きている光景に驚いた。

「てめぇ……いい加減にしろよ」

 ノンナの前に立ち、拳を受け止めたのはライナだった。
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