異世界召喚鍛冶師

蛇神

文字の大きさ
上 下
25 / 64
第一章 異世界召喚鍛冶師、爆誕!!

記憶

しおりを挟む
 太陽が西へ傾いていた。どうやら夕方のようだ。部活勧誘で汗を流しながら4年生たちが声を張り上げ、バチバチ火花を散らし張り合っている。門は待ち合わせ場所にピッタリなため、何人か寄りかかってスマホをいじっていた。

 私は眩しいこの景色に目を細めた。キラキラしていて皆青春を謳歌している。

 本当は今私はこの群衆に紛れ、日々を楽しんでいたんだろうな…と少し感傷的になってしまった。

 私は工学部に入って設計を学んでいた。確か、新入生の歓迎会があったはず。あれ、どうなったんだろうな…

「ほー…これがユキちゃんの世界…凄い…」

 キルさんは目をキラキラさせていた。キラキラの目のまま、キルさんは今の状況を説明してくれた。

「今私たちがいるのは、あなたの記憶が作り上げた現実に近いもの…だから、こうやって私達は第3者目線で行動できるのです」
「じゃぁ…記憶の中の私がここにいるってことですよね」

 そうです!とキルさんは頷いた。

「ユキちゃんを追ってユキちゃんが忘れた大切な記憶を見ていこう」

 魔術って凄いな~…こんなことも出来るんだ…

 私は懐かしい景色に浸りながらグルリと周りを見た。門の入口付近で女子男子の数人グループに目が止まった。

「あ…」

 私の目線に気づき、キルさんが目を細めた。

「あれは…ユキちゃんであってる??」

 そうだ…確かにあれは私だ。思い出した!!あの時の私は仲良くなったメンバー皆でボウリングに行くことになったんだ!!
 
それなら、あそこのやりとりの後…私は…

 メンバーと、楽しそうに笑いながら話している私は急に顔を青ざめて走っていってしまった。

「私、レポート提出してなくて、教授のところに行こうとしたんだ!!キルさん!!私をおってください!!」

 なるほど、僕だんだん読めてきたな~…

 私とキルさんは私のあとを追って走った。

 

 私…思い…出した…レポート提出しようとして、教授の研究室に行こうとしたら空いているはずのない講義室が空いていて…そして、気になった私はそこを覗いた…そしたら…

「なんだアイツは…??」

 キルさんが珍しくクネクネしないで、こわばった口調で問うてきた。

「あいつ…は…」

 ズキリと急に頭が痛くなった。

「っふぅ…!!」
「ユキちゃん!?」

 私はバタりと顔からいった。鼻に鈍い痛みを感じる。ガンガンと頭を内側から金槌で打たれているようだ。 

 私は朦朧とした意識の中で、1人講義室にいる私を見た。いや、1人じゃない…!?目が霞んでいるため、よく顔が見れない…が、そいつは私に手をかざして…

「あぁあっ…いったぃぃ!!あ、頭があぁ!!」

 頭痛がさらに酷くなった。キルさんが手を握っているのが分かるが、体で感じていた床の感触が分からない。自分の体と床との境目が分からない。

 無様に私は痛さにのたうち回ることしか出来なかった。

「一緒に本人も連れてくるのは流石に負荷がかかりすぎたか!?」

 




 何かが弾けた気がした。頭がキーンと痺れるのが分かる。





 あ…これ…私意識失う…

 私はだんだんフェードアウトしていく意識の中で私と謎の人を見た。

 私は驚いた。謎の人は…私の記憶に入っている私たちが見えないはずなのに…しっかり、私たちを見つめて…口の端をひん曲げて笑っていた。私はしっかりと目が合ったことがわかった途端…私の意識はブツリと消えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

元聖女だった少女は我が道を往く

春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。 彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。 「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。 その言葉は取り返しのつかない事態を招く。 でも、もうわたしには関係ない。 だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。 わたしが聖女となることもない。 ─── それは誓約だったから ☆これは聖女物ではありません ☆他社でも公開はじめました

処理中です...