21 / 64
第一章 異世界召喚鍛冶師、爆誕!!
アルの心中
しおりを挟む
俺がユキを助けたのはたまたまだ。パッと最初あった時、別に何の感情もなかった。最悪、目の前で死んでもなんも思わなかったと思う。ただ、魔法で妖精との関わりを学んでいたため、呪いや怨念が頭をよぎり面倒を避けるために助けたまでだ。
ユキは運がいい。あんな重症を負って助かるなんて奇跡に近い。キルが俺の家に居なかったら助からなかっただろう。俺がその日洞窟へと向かわなかったら死んでいただろう。
俺はユキと生活していくうちに確かにナルキスが言うように『アイツ』に似ていると思った。
でも、別に俺はアイツとユキを重ねてみていたつもりはなかった。けれども、俺は知らないうちに当てはめてユキでアイツを探していたのだろうか…。
ナルキスにユキが似ていると言われた瞬間、体じゅうに何か黒くてモヤモヤした汚いものが駆け巡ったのを感じた。
気づいたら…俺はユキを傷つけた。ニコニコ花を満開にさせたように明るく笑うあの子の笑顔を、俺は奪ったのだ。
「クソッ…!!」
ダン!!と俺は壁に拳を打ちつけた。拳がめり込み、ハタハタと血と小さな破片が混ざった薄く汚れた液体がツーと垂れた。
昔と変わらないな…と、自嘲ぎみに口の端を持ち上げ笑った。
昔から俺は黒く汚い感情に飲まれると、1人ここへ汚い感情を流しに来ていた。ここからの景色や風を受けると、心が昔から落ち着くのだ。
俺は見張りの台の端へと歩いて、手をかけた。ここからは良く街全体が見渡せるのだ。
「相変わらずだよ、この景色も…俺も…」
『アルはアルでいいんだよ!!』
昔聞いた懐かしい声が頭をよぎった。
もう、涙を流すほどの涙もとうの昔に乾ききってしまった。
俺は元の世界へ戻すとユキと約束した。果たしてその約束は最後まで責任をもって投げ出さず果たすことが出来るのだろうか。
俺はユキに大人の余裕な姿をずっと見せて落ち着かせようとした。それが正解だかは分からない。
『アイツ』に似ているからで片付けられて、俺のワガママに振り回されたあの時のユキの思いは分からない。いや、分かろうとしなかった。
俺の私情で関係の無いユキをまた傷つけてしまうかもしれない…
「俺は…いったいどうすれば…!!」
俺は歯を食いしばって、喉の奥から声を振り絞った。
その時、サラリと頬に優しい風が撫でた。
「アルさんはアルさんのままでいいと思うよ??」
ハッと声の方へ振り返った。
そこには戸惑いながら顔の脇の短い髪をクネクネ触りながら立つユキがいた。あと何故かヒューまで。
「なんか、よくアルさんのことは分からないけど…私はこの世界でアルさんに出会えてよかったって思ってる。この世界で挫けそうになった時…何度アルさんに救われたか…」
えーと、えーと、と自分の思いを言葉に必死にまとめようとするユキを見て…気づいたら俺は泣いていた。
それに気づいたユキはギョッとしてあたふたしていた。
「えっとー!ごめんなさい!!なんか変なこと言いました!?必死だったんで行った事覚えてないんですけど…ごめんなさい!!」
ワタワタと近づいてきたユキを私は抱き寄せた。
「ひゃぁ!?」とユキは固まった。
別にこれはユキに恋愛的な感情をもっているという訳では無い。ただ、俺はユキにもう大丈夫だということを伝えたかったのだ。感謝を伝えたかったのだ。
「ありがとう…ユキ…」
は…い…、とユキはドギマギとしていた。俺はいつの間にか笑っていた。
…本当に決してやましい気持ちはないからな!!
おい、そこ!ヒュー!!ニヤニヤするな~~!!!!
ユキは運がいい。あんな重症を負って助かるなんて奇跡に近い。キルが俺の家に居なかったら助からなかっただろう。俺がその日洞窟へと向かわなかったら死んでいただろう。
俺はユキと生活していくうちに確かにナルキスが言うように『アイツ』に似ていると思った。
でも、別に俺はアイツとユキを重ねてみていたつもりはなかった。けれども、俺は知らないうちに当てはめてユキでアイツを探していたのだろうか…。
ナルキスにユキが似ていると言われた瞬間、体じゅうに何か黒くてモヤモヤした汚いものが駆け巡ったのを感じた。
気づいたら…俺はユキを傷つけた。ニコニコ花を満開にさせたように明るく笑うあの子の笑顔を、俺は奪ったのだ。
「クソッ…!!」
ダン!!と俺は壁に拳を打ちつけた。拳がめり込み、ハタハタと血と小さな破片が混ざった薄く汚れた液体がツーと垂れた。
昔と変わらないな…と、自嘲ぎみに口の端を持ち上げ笑った。
昔から俺は黒く汚い感情に飲まれると、1人ここへ汚い感情を流しに来ていた。ここからの景色や風を受けると、心が昔から落ち着くのだ。
俺は見張りの台の端へと歩いて、手をかけた。ここからは良く街全体が見渡せるのだ。
「相変わらずだよ、この景色も…俺も…」
『アルはアルでいいんだよ!!』
昔聞いた懐かしい声が頭をよぎった。
もう、涙を流すほどの涙もとうの昔に乾ききってしまった。
俺は元の世界へ戻すとユキと約束した。果たしてその約束は最後まで責任をもって投げ出さず果たすことが出来るのだろうか。
俺はユキに大人の余裕な姿をずっと見せて落ち着かせようとした。それが正解だかは分からない。
『アイツ』に似ているからで片付けられて、俺のワガママに振り回されたあの時のユキの思いは分からない。いや、分かろうとしなかった。
俺の私情で関係の無いユキをまた傷つけてしまうかもしれない…
「俺は…いったいどうすれば…!!」
俺は歯を食いしばって、喉の奥から声を振り絞った。
その時、サラリと頬に優しい風が撫でた。
「アルさんはアルさんのままでいいと思うよ??」
ハッと声の方へ振り返った。
そこには戸惑いながら顔の脇の短い髪をクネクネ触りながら立つユキがいた。あと何故かヒューまで。
「なんか、よくアルさんのことは分からないけど…私はこの世界でアルさんに出会えてよかったって思ってる。この世界で挫けそうになった時…何度アルさんに救われたか…」
えーと、えーと、と自分の思いを言葉に必死にまとめようとするユキを見て…気づいたら俺は泣いていた。
それに気づいたユキはギョッとしてあたふたしていた。
「えっとー!ごめんなさい!!なんか変なこと言いました!?必死だったんで行った事覚えてないんですけど…ごめんなさい!!」
ワタワタと近づいてきたユキを私は抱き寄せた。
「ひゃぁ!?」とユキは固まった。
別にこれはユキに恋愛的な感情をもっているという訳では無い。ただ、俺はユキにもう大丈夫だということを伝えたかったのだ。感謝を伝えたかったのだ。
「ありがとう…ユキ…」
は…い…、とユキはドギマギとしていた。俺はいつの間にか笑っていた。
…本当に決してやましい気持ちはないからな!!
おい、そこ!ヒュー!!ニヤニヤするな~~!!!!
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる