異世界召喚鍛冶師

蛇神

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第一章 異世界召喚鍛冶師、爆誕!!

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 誰もいない講義室。私は真っ白なノートを広げただひたすらにシャーペンでぐちゃぐちゃミミズの線を書き綴っていた。なぜそうしているか分からない。でも、考えるのを拒否するかのように手が動き続ける。

 『天野崎 雪さん』

 私の名前を誰かが呼んだ。私は声がする方へ顔を向けた。

 顔を向けた先には、影のように真っ黒なヒトが黒板の前の机に腰掛けていた。

 ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ

 私はひたすらミミズを生産し続けた。影人間はそれでも構わないかというように、大きく頷いた。

『突然の無礼、ホントごめんよ?』

 随分馴れ馴れしい。イラつく喋り方だ。

『君には私達側の世界…君から見た異世界に召喚してもらったよ。』

 は?流石に私はミミズの生産を中止した。

『いやぁ、ねぇ?こちらのミスで貴方は座標がズレた所に召喚されてしまったわけなんですが… 』

 影人間は指?なようなものを絡めてサワサワした。ツッコミどころまんさいだが、話が先に進まないので私はぐっと堪えた。

『こちらの手違いで、貴方は先ほどのような怪我をしてしまいました。本当に申し訳ない。』

 急に敬語!?というか何?先ほどの?なんだろう…思い出そうとすると頭がズキズキして邪魔をした。

『まだ、貴方の召喚した座標を特定できていません…でも、安心してください!!ワタクシたちが全力で捜索します!!』

 はぁ、勝手に頑張ってください…

『この夢が覚めると、貴方は今この瞬間の出来事を忘れてしまいます。でも、安心してください!必ず見つけ出します!!』

 影人間は仰々しくブワッ影を飛ばしながらとお辞儀をした(折りたたんだようにしか見えないが…)

『では、また会える日まで…』

 影人間は笑った。顔は真っ黒で表情は全然見えないが、笑っていた。黒い顔の奥底で影人間は口を裂けさせ暗く黒く不気味に笑ってた。私は背筋に冷たくゾワッとするものが駆け上がった。

 霧のように影人間は消え、講義室もノートもシャーペンもすべてモヤモヤと霧になって消えた…。座っていた椅子もその下の床も消え、私は暗いくらい、地の底へ落ちていった…。

 私は落ちながら震えた。私は気づいてしまったのだ。影人間は人懐っこく見せているだけだと。影人間の暗い体の奥底にある、冷たく刺さるような残忍さを見つけ、感じてしまった。

 私は願った…

 この夢が覚めても影人間のあの底知れない恐ろしさを忘れないようにと…

 あの影人間に、見つからないようにと…









 そして私は目を覚ます。



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