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第三章 謎の暗殺者
覚悟
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「先程は、お恥ずかしい姿をお見せしてしまい大変申し訳ありませんでした」
あれから私は泣き疲れ、そのまま寝てしまったらしい。目が覚めたら、もう朝だった。
私は寝起きそのまま、キルさんの研究室へ足を運んだ。
「私、強くなります。もう魔獣にもマラハートにも負けない強い人間になります」
キルさんは私の謝罪と決意をいつものようにヘラヘラ笑いながら、あぁそうかい、と軽やかに受け止め、私の頭をポンポンと撫でた。
心が少し軽くなった気がした。
「よし、じゃあユキちゃん!ご飯を早く食べておいで!んでもって今日は忙しくなるぞ~!」
んー!眠いー!と両手を伸ばし大きなあくびをしながら、キルさんが言った。
「忙しく…?」
「昨日のことの報告もそうだけど不可解な点があってね、それについて君に協力してもらおうって話でさ」
不可解な点?と首を傾げるも、ほら早くご飯食べてきなさい!と追い出されてしまった。
うーん、何のことだろう…
不可解な点について考えると…、グリュリュリュ……
お腹がなった。
「難しいことはご飯のあとでいいや!」
私は優秀なメイドが作るご飯を想像しながら、ルンルンと食事が用意されている部屋へと足を運んだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
私は美味しい朝食を食べ終わると、これを着てくださいとハクシさんは綺麗に折りたたまれた白い服をよこした。
私はそれを広げてみた。
この国の上位の役職についてる人が来ているローブだった。キルさんは黒、リンさんは青、アルさんは赤を着ている。(アルさんは部屋に飾ってある)
「これ…は?」
私はハクシさんに尋ねた。
「国王がユキ様にとのことです。常にこれを着ていれば、そこら辺のやからにはまず狙われないとのことです」
いわゆるカモフラージュということだな…
フムフムと頷きながら生地を確認していると、急に甘い香りに包まれた。
抱きしめられたのだ、ハクシさんに
「…ど、どうしたの?」
私はハクシさんの肩に手を置く。小さく震えているのがわかる。
「ハクシさん…?」
泣いている。
私はアタフタと慌てたが、恐る恐る肩に置いていた手を背中にまわし、ポン、ポンと赤子をあやすように叩いた。
「無理…しないでください。あなたが城に運ばれたのを見た時、心臓が止まるかと思いました…わた、私は…何もすることが出来ません…どうかどうか、ご無理をなさらずに…」
震える声を振り絞って嗚咽混じりにハクシさんは嘆いた。私は、うん、うん、と頷くことしか出来なかった。
「大丈夫、私は強くなるし、まだ死にたくない。ダメだと思ったら逃げる。そうか、逃げればいいのか…じゃあ逃げる練習もしなきゃだな…」
私がそう言うとガバッと上体を起こした。
あぁ…綺麗だ。
長いまつげに涙がつき、キラキラ輝いていて、目もうるうると潤んでいて、そしてキッチリしているはずの髪が乱れていた。
しかし、そんなハクシさんはとても美しかった。
「私と約束してください。絶対に無茶だけはしないと…」
「わかった、約束する」
その言葉に満足したのか、ハクシさんは私の食べ終わった皿を荷台に移し、そそくさと部屋を出てしまった。
私は白いローブを手に持ったまま、フーと息を吐きながら頭をたれた。
ダメだなぁ、私…いろんな人を巻き込んでしまっている。
私は白いローブをぎゅっと抱きかかえた。
「弱い自分は今日でさよならだ」
昨日で決意を今日で覚悟を…
今の私に怖いものは無い。
あれから私は泣き疲れ、そのまま寝てしまったらしい。目が覚めたら、もう朝だった。
私は寝起きそのまま、キルさんの研究室へ足を運んだ。
「私、強くなります。もう魔獣にもマラハートにも負けない強い人間になります」
キルさんは私の謝罪と決意をいつものようにヘラヘラ笑いながら、あぁそうかい、と軽やかに受け止め、私の頭をポンポンと撫でた。
心が少し軽くなった気がした。
「よし、じゃあユキちゃん!ご飯を早く食べておいで!んでもって今日は忙しくなるぞ~!」
んー!眠いー!と両手を伸ばし大きなあくびをしながら、キルさんが言った。
「忙しく…?」
「昨日のことの報告もそうだけど不可解な点があってね、それについて君に協力してもらおうって話でさ」
不可解な点?と首を傾げるも、ほら早くご飯食べてきなさい!と追い出されてしまった。
うーん、何のことだろう…
不可解な点について考えると…、グリュリュリュ……
お腹がなった。
「難しいことはご飯のあとでいいや!」
私は優秀なメイドが作るご飯を想像しながら、ルンルンと食事が用意されている部屋へと足を運んだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
私は美味しい朝食を食べ終わると、これを着てくださいとハクシさんは綺麗に折りたたまれた白い服をよこした。
私はそれを広げてみた。
この国の上位の役職についてる人が来ているローブだった。キルさんは黒、リンさんは青、アルさんは赤を着ている。(アルさんは部屋に飾ってある)
「これ…は?」
私はハクシさんに尋ねた。
「国王がユキ様にとのことです。常にこれを着ていれば、そこら辺のやからにはまず狙われないとのことです」
いわゆるカモフラージュということだな…
フムフムと頷きながら生地を確認していると、急に甘い香りに包まれた。
抱きしめられたのだ、ハクシさんに
「…ど、どうしたの?」
私はハクシさんの肩に手を置く。小さく震えているのがわかる。
「ハクシさん…?」
泣いている。
私はアタフタと慌てたが、恐る恐る肩に置いていた手を背中にまわし、ポン、ポンと赤子をあやすように叩いた。
「無理…しないでください。あなたが城に運ばれたのを見た時、心臓が止まるかと思いました…わた、私は…何もすることが出来ません…どうかどうか、ご無理をなさらずに…」
震える声を振り絞って嗚咽混じりにハクシさんは嘆いた。私は、うん、うん、と頷くことしか出来なかった。
「大丈夫、私は強くなるし、まだ死にたくない。ダメだと思ったら逃げる。そうか、逃げればいいのか…じゃあ逃げる練習もしなきゃだな…」
私がそう言うとガバッと上体を起こした。
あぁ…綺麗だ。
長いまつげに涙がつき、キラキラ輝いていて、目もうるうると潤んでいて、そしてキッチリしているはずの髪が乱れていた。
しかし、そんなハクシさんはとても美しかった。
「私と約束してください。絶対に無茶だけはしないと…」
「わかった、約束する」
その言葉に満足したのか、ハクシさんは私の食べ終わった皿を荷台に移し、そそくさと部屋を出てしまった。
私は白いローブを手に持ったまま、フーと息を吐きながら頭をたれた。
ダメだなぁ、私…いろんな人を巻き込んでしまっている。
私は白いローブをぎゅっと抱きかかえた。
「弱い自分は今日でさよならだ」
昨日で決意を今日で覚悟を…
今の私に怖いものは無い。
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