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第三章 謎の暗殺者
強く強く
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城につくと、私は病室のような場所へと連れていかれた。そこにはキルさんがおり、クネクネとしていた。
「派手にやられたね~。ようこそキル病院へ」
「…その病院へ入ったら生きて出てこれなさそうな名前ですね」
そんなに口が聞けるなら問題ないね、とキルさんはツーンと言った。
私のツッコミに対して少し不満があるようだ。
「ユキちゃんは魔力が化け物だからね。しっかり治療すれば簡単に死なないから安心してね」
そう言うと、私を包んでいたスライムのようなブヨブヨした物体を手作業で取り除いていった。もちゃもちゃとキルさんは床へと落としていく。
「あぁ~…随分と肩の肉を持っていかれたね…。うまく治せるかな」
キルさんはツンツンと私の肩をつついた。ズクズク感じた痛みが増し、全身に電撃が走ったかのような激痛が駆け抜けた。
「うぐぅぅぅ……!!」
私は服を噛み、声を抑えた。
「安心して、綺麗に肉だけ持っていかれていて、骨は無事みたい」
涙で滲んだ視界を凝らしてキルさんを睨んだ。キルさんは私の視線を避けるかのように、クルリと後ろを向いてゴソゴソとなにか作業を始めた。これ絶対わざとだ…。私のツッコミがそんなに気に食わんかったか!!
…というかそれもそうだが、他にも何かある。
私はある疑問を口にした。
「…キルさんなんか怒ってます?」
私のこの言葉に彼の肩が少し反応するのを、私は見逃さなかった。背中が、少しこわばっているのがわかる。
「なんで黙るんですか、聞いてます?」
そう私が尋ねると、キルさんはクルリとこちらを向いてドカッと私が寝るベットの近くの椅子に腰掛けた。
ジィィィーといつものムカつく顔でなく真剣な怖い顔で見つめてきた。
あ…まつ毛長い…
ポケーとそう思っているとハァーと長いため息をキルさんがついた。
「あのさ、無茶だけはするなよホントに…。いくら力に恵まれていても、まだユキちゃんは経験が浅いんだ…。ナルキスは大切な人であっても容赦はない。だから、あんましアイツに流されるな」
私はビックリした。キルさんの口調がいつもと違うのはもちろんだが…
「…ごめんなさい」
ホロりと涙が頬を伝った。今更“死”の恐怖が全身を駆け巡った。何度も死を覚悟したつもりだったが、やはり怖かった。
キルさんが辛そうにこちらを見ている。胸が締め付けられた。こんなに心配してくれているとは思ってもいなかった。
「ご…めん…さ…」
フワリと優しく頭を撫でられた。
「アルに俺殺されちゃうからさ、怖かったら逃げていいんだよ?死んじゃったらおしまいだけど、生きていたらなんとかなるんだから」
部屋に嗚咽がこだました。
もっともっと強くならなきゃって思った。
「まぁ、死なない程度に頑張りなさいな」
強くなって、誰も不安にさせない、心配させない…
私は自分の未熟さを知り、そして新たに強くあろうと決意した。
「派手にやられたね~。ようこそキル病院へ」
「…その病院へ入ったら生きて出てこれなさそうな名前ですね」
そんなに口が聞けるなら問題ないね、とキルさんはツーンと言った。
私のツッコミに対して少し不満があるようだ。
「ユキちゃんは魔力が化け物だからね。しっかり治療すれば簡単に死なないから安心してね」
そう言うと、私を包んでいたスライムのようなブヨブヨした物体を手作業で取り除いていった。もちゃもちゃとキルさんは床へと落としていく。
「あぁ~…随分と肩の肉を持っていかれたね…。うまく治せるかな」
キルさんはツンツンと私の肩をつついた。ズクズク感じた痛みが増し、全身に電撃が走ったかのような激痛が駆け抜けた。
「うぐぅぅぅ……!!」
私は服を噛み、声を抑えた。
「安心して、綺麗に肉だけ持っていかれていて、骨は無事みたい」
涙で滲んだ視界を凝らしてキルさんを睨んだ。キルさんは私の視線を避けるかのように、クルリと後ろを向いてゴソゴソとなにか作業を始めた。これ絶対わざとだ…。私のツッコミがそんなに気に食わんかったか!!
…というかそれもそうだが、他にも何かある。
私はある疑問を口にした。
「…キルさんなんか怒ってます?」
私のこの言葉に彼の肩が少し反応するのを、私は見逃さなかった。背中が、少しこわばっているのがわかる。
「なんで黙るんですか、聞いてます?」
そう私が尋ねると、キルさんはクルリとこちらを向いてドカッと私が寝るベットの近くの椅子に腰掛けた。
ジィィィーといつものムカつく顔でなく真剣な怖い顔で見つめてきた。
あ…まつ毛長い…
ポケーとそう思っているとハァーと長いため息をキルさんがついた。
「あのさ、無茶だけはするなよホントに…。いくら力に恵まれていても、まだユキちゃんは経験が浅いんだ…。ナルキスは大切な人であっても容赦はない。だから、あんましアイツに流されるな」
私はビックリした。キルさんの口調がいつもと違うのはもちろんだが…
「…ごめんなさい」
ホロりと涙が頬を伝った。今更“死”の恐怖が全身を駆け巡った。何度も死を覚悟したつもりだったが、やはり怖かった。
キルさんが辛そうにこちらを見ている。胸が締め付けられた。こんなに心配してくれているとは思ってもいなかった。
「ご…めん…さ…」
フワリと優しく頭を撫でられた。
「アルに俺殺されちゃうからさ、怖かったら逃げていいんだよ?死んじゃったらおしまいだけど、生きていたらなんとかなるんだから」
部屋に嗚咽がこだました。
もっともっと強くならなきゃって思った。
「まぁ、死なない程度に頑張りなさいな」
強くなって、誰も不安にさせない、心配させない…
私は自分の未熟さを知り、そして新たに強くあろうと決意した。
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