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12歳《中等部》
100 番外編《愛》
しおりを挟むもうすぐネヴィルが中等部に入学する歳。だから僕ら兄弟の仲の良さを見せつけるためにみんなでお出かけ。父様は義母様と家にいるって。あの二人仲良いのかな。よく分かんない。義母様は初めの頃と違って父様に愛想振りまかなくなったもん。
いつだったか…。
テオ様を連れ出そうとした頃から父様に愛想をつかしたように見える。
いつかテオ様の祖父母にも会ってみたい。力がないなりに沢山のことをテオ様に教えて守ろうとしてた。いい人達だと思う。
ネヴィルの孤児院はどうだろう。みんなガラ悪そうなイメージしかないな。ネヴィルがガラ悪いし。地頭がいいのと人を見る観察眼があるのと。何より努力家で負けず嫌いだからなんとか貴族としての所作をモノにしてる。だけどまぁたまに出る素の柄が悪い。
ルディは悪ぶってるだけで一つ一つの所作が綺麗だけど、ネヴィルは逆だ。なんとか取り繕ってるけど一つ一つが荒いんだよね。まぁそこも魅力の一つだろう。
親しくしてる服飾屋さん。正直男性があまり通わないせいか女性が目立つ。横にいるのは面倒くささを取り繕った男か楽しそうなメイド。
だろうなぁ。とは思うよ。女性と違って男性の服なんて対して変わらないし。
「ネヴィル、裾を合わせてもらってきな。少しならオシャレも許されるし見ておいで。」
「はい!兄様!」
零れるような愛らしい笑顔を振りまいてネヴィルが店員に連れられて試着室に入っていく。
作り笑いも上手くなったなぁ。本当に外側だけ見たら可愛らしい。心の中では悪態をつきまくってるんだろうけど。
「僕らも服を仕立てようか?」
「沢山ありますよ。」
「持ってて損はないよ。あぁ。でもまだ身長も伸びるだろうしもう少し後でもいいかもね。」
「そうですね。」
テオ様は物欲ないなぁ。イケメンだし着飾ったらもっとかっこよくなるのになぁ。
聖者でも目指してるんだろうか。
今どきの騎士だって処罰が厳しいから守ってるだけでテオ様くらい自分を律してる人見たことない。
にしても…ここは暇だな。テオ様が着せ替え人形にならないなら楽しみもないし。ドレスもオシャレも興味ない。
「こういうとき、妹とか姉とかがいたら楽しいだろうね。」
「女性のドレスはいつ見ても煌びやかですからね。そう言えばまた流行りが変わったらしいですよ。」
「それはまた…。女性も大変だ。」
なんでそんなことに興味がなさそうなテオ様が知ってるんだろう。
「俺にはオシャレやドレスの何がいいのかよく分かりませんが、俺にとっての騎士の正装と思えば力が入ってしまうのは理解できます。」
「そういうもの?女性には女性の大変さがあるんだろうね。義母様なんて餓死しちゃうんじゃないかって心配になるくらい食事量調節してるし。」
よく分かんないなぁ。テオ様は何着ても似合うし何しててもかっこいいもの。だから自分の服装なんて気にしたことない。たしかにTPOとか高位貴族としてとかは弁えるけどそれくらいかな。
義母様ようにカロリーの低い食事考案してあげようかな。それが高タンパク質のやつとか…。でも義母様からの信用ないから疑われて終わりかも。タンパク質なら騎士目指してるテオ様にとってもいいものだし考えるだけ考えるのもありかもね。
「ねぇ、このドレスのコンセプトってなに?」
近くに控えてた店の子に聞く。
なんか桃色のドレス。宝石もつけまくってて目が痛い。来たばかりの義母様といい勝負だ。
少し覗き込んだショートカットの店員が微笑んだ。
「愛、ですね。」
愛?このギラギラが?
「宝石は変えることはできますが愛という石言葉を含んだもののみとなっています。」
「へぇ。愛ねぇ。」
結婚式のお色直しにでも着るのだろうか。重そうだなぁ。ドレスも向けられる感情も。
「シルヴェスター公爵様には理解されないようですね。」
「愛なんて難しいじゃない。形も決まってることもないからね。テオは愛ってなんだと思う?」
テオ様の愛かぁ。ゲームなら少し重かったな。クラウスとかま術士の子の方が激重で怖かった。クラウスは本気で道徳と倫理を暗記してる。愛とか分かってない。だから主人公を監禁したり殺したりしてるんだよね。見ててやっばいやつって思ってたし。こんな可愛いテオ様がいて愛が分からないなんて本気で頭おかしいんだと思う。
「愛ですか?」
テオ様はいつも真面目だから真剣に考えてくれる。可愛い。
「包み込んでくれるような…。いつでも味方でいてくれるような感じですかね?あまり分からないです。」
可愛い。何それ。ないはずの母性が湧いてきちゃう。可愛いねぇ。
なに?テオ様愛されなかったの?それも可愛い。
「兄上はどう思いますか?」
ポッポと頬を赤くしてテオ様が話しかけてくれた。可愛い。愛らしい。超可愛い。
でも愛か。
前世の両親見たいな感じなぁ。僕真感謝してるし今の父母がクソでも気にならないくらいは好き。愛してもらった自信もある。
でも…僕が愛していると言えば推しのテオ様だ。
ストーカー気質なのもあいまって兄弟じゃなかったら捕まってる自信ある。元気なこの体も悪い。
そもそも生まれ変わってまでテオ様に会いたかった僕だよ。そんな僕が持ってる愛なんて決まってる。
「そうだねぇ。執着じゃないのかな。」
「…執着…。」
驚いたような顔をして店員が小さく呟いた。
「僕はそう思うよ。そのドレスもよく表してる。色々と…重そうだ。」
僕が持ってる愛なんてそのくらいだ。
テオ様の愛は可愛かったなぁ。
ゲームではそんな包み込むような愛じゃなかったけど。それでも純粋なテオ様は可愛い。
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