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12歳《中等部》
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しおりを挟む今僕が持ってる魔獣から作った服や布を広げてシモンが選んでる。儲けになるし好きにしてもらっていいけど…僕の服は引っ張りださなくていいと思う。
なにしたいんだろ。
「クーディ。私このマントが欲しい。同じ性能のもの。」
まぁいいよ。でもそれ、魔法防御のマントだから自分の皮膚に触れたら魔力落ちるけどいいのかな。
「いいけど僕の服荒らさないでよ。ちゃんと試作品の布は渡したでしょ。」
「形は見て見ないと分からないからね。」
また僕のジャケットを引っ張り出した。本当に…。それは特に魔法かけてないよ。
「…はぁ。色は白?」
「うん。お茶会で着るから早くね。」
無茶言うな。
そもそも倉庫の肥やしになってるやつ持ってきたら怒るくせに。はぁ。機能は変わらないんだから古くてもいいと思うけどなぁ。
「時間かかるから無理。」
「作ってるの回してもらっていいよ。もちろん売ってもらうのは新品ね。」
「はぁ。」
「お茶会の日はクーディが白で私が黒のマントを使おう。装飾品も逆。」
「…もう好きにしなよ。」
反論するのも疲れる。そんなに僕の婚約者って見せびらかさなきゃいけないほど命狙われてるのかな。
僕もシモンも今まで婚約者ってことをバラしたことはなかった。シモンは王になる障害になるから。僕はどうせ婚約破棄になるなら面倒な噂は広ませたくなかったから。
本当に何があったんだか。
「兄上…。」
僕のそばで黙って見てたテオ様が僕の心配をするように囁きかけてくれた。
可愛い。もうこれだけで僕は幸せになれる。
「シモン、僕あまり黒の装飾品ないから欲しいのあったら言って。テオ、気分転換に付き合って。」
仕方ない。シモンと出かけ時用の白の宝石でも買いに行こうか。どうせ婚約破棄になるし無駄使いは好まないけど…やらなくてシモンに愚痴愚痴言われるのは面倒くさい。要らなくなれば義母様か売ればいいしそうしようか。
それともルディと手合わせしに皇宮に行こうか。ルディも暇じゃないだろうけど。
「テオは宝石店と皇宮どっちが好き?」
「兄上、宝石店に行きましょう。ルディ様に迷惑をかけてはいけません。」
なんていい子なんだろう。ルディの用事なんて無視すればいいだけなのに…。良い子すぎて心配になる。
「途中で冒険者ギルドとカフェにでもよろうか。」
「はい。兄上。」
可愛いなぁ。
あ。そうだ。
シモンに聞かないといけないことがあったんだった。
「シモン、毒消しと致命傷を一撃防ぐ魔法具どっちがいい?」
アレでも僕の婚約者だからね。なにかプレゼントくらいは送るよ。今は一緒に暮らしてるわけだしね。
「私以外が着けると着けた人が死ぬ魔法具。」
またとんでもないものを…。はぁ。できなくはないけどさぁ。
「無茶言わないで。」
「それが持ってる剣に魔法を付与した鍛冶屋ならできるよ。」
テオ様の剣を指さした。
なんで知ってるの。テオ様の敵が触ったら自動的に刺すように設定してあるのに…。その魔法印を作るのめっちゃ大変だったんだから。
…もしかしてテオ様はシモンのこと味方扱いしてるの?こんな胡散臭いのに?大丈夫?
「…いつ見たの。」
「見せてもらったの。即答だったよ。」
本当にテオ様はいい子なんだから。
「テオ、行くよ。」
「は、はいっ!兄上!」
▽
▽
「テオ、シモンにあまり心を許しちゃダメだよ。いくら友好国の皇子でも敵になることもある。」
あまりテオ様を悪くは言いたくない。そこもテオ様の良いところだもん。なくなったら僕が嫌だ。それならテオ様がテオ様らしくいられなくしたシモンを殺す。
「申し訳ありません。兄上。」
謝らないで。本当に可愛いテオ様。
めんどうなことになった。できなくはない。テオ様に剣に掘るのにどれだけ練習したと思ってるの。余裕だよ。だけどそのまま外に出すのは後々面倒だ。また別の簡単な印を施そうか。
「今後気をつけてね。それにしても…面倒くさいことになっちゃったなぁ。」
面倒だなぁ。僕にもやること沢山あるのに。テオ様のためならなんでもするけどシモンのためとかやる気出ない。
「持ち主と他人の判定は簡単なんだけどね…。バレない毒か。」
「判定の方が難しくは無いですか?」
「んー?いや、簡単だよ。テオの剣に施してる方が難しいし、複雑だよ。」
「そんな凄いものなんですか?」
「今の僕がやれること全部詰め込んだ最高傑作だからね。そりゃあすごいよ。」
なんか剣を外し始めたテオ様。そっと僕に差し出してきた。
いや。返されても困るんだけど。
それにテオ様専用というか…剣そのものに主人をシルヴェスターって設定して印を掘ったからテオ様に使って欲しい。それに剣技使える人用に自己修復とか魔力通すとか機能つけたからテオ様にしか使いこなせないよ。
「来年はなにが欲しい?」
来年は何あげようかなぁ。剣は年単位で作ったやつだから数年はこれ以上のものはあげられない。
「兄上、これは返します。」
「いらないよ。僕には僕に合った剣があるからね。」
テオ様の剣の練習台になったやつが沢山ある。これ以上持っても使わないもん。
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