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12歳《中等部》
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しおりを挟む「あんたらを慕って、平民を気にかける孤児のふりすりゃあいいんだよな?」
口調が…いや。こっちが素なのかも。この屋敷じゃ僕に監視されてるの気づいてたのかな。
「うん。」
「あんたらは俺のこと気に入ってる振りできるの?」
別にネヴィルのことは嫌ってない。テオ様を好きすぎるだけ。テオ様のためならネヴィルは捧げられるってだけ。
「僕は気に入ってるよ?僕の弟だもん。」
「うそ。気に入ってる家族殺そうとしたりしないよ。」
「そう?気に入ってるから引き離そうとしたのかも。」
「…。ラージャも殺すのか?」
睨んでくる僕よりしっかりした弟。
愛を知らない子供は歪みやすいと聞いたことがあるけどこの子大丈夫なのかな。
「随分気に入ったみたいだね。しないよ。もちろん、言いつけ破ったから面倒な仕事は渡したけどラージャなら大丈夫だよ。」
まぁ死ぬかもしれないけど~。さすがに獣人の使用人と聖皇国の皇子様とじゃ皇子様をとるよ。
僕の所有物を壊したってことで弱みも握れるし。
生きて帰ってきたらネヴィルのお目付け役そのまま続けて貰えるし。
どっちに転んでも悪くない。
「聖皇国の第3皇子をよく見て真似すればいいよ。あの子は猫かぶりのプロだから。ただ、腹黒いから気をつけて。」
「クラウス兄様とどっちが腹黒い?」
僕は腹黒くないよ。
テオ様、頷かないで。腹黒くないの。ゲームのクラウスの真似してるだけだから。やめて。
「そりゃあ向こうだよ。国民も家族も欺いて末子が王になろうとしてるんだ。普通にルディよりタチ悪いよ。」
ルディなら負けたら諦めるだろうけどアレは反乱か内戦起こして王位を取ろうとするだろう。それくらいタチが悪い。
ただまぁ。参考にするくらいならいい勉強材料でしょ。
それとだ。あまり言いたくないけど言わなきゃバラされる僕の弱み。
どうせバレるしなぁ。ゲームでもバレてたし。
「あと、縛り付きの僕の婚約者。仲良くしてね。」
ゲームじゃルディと違ってどう転んでもあの子は教皇になってた。僕と結婚することは絶対にないって言い切れる。
シモン・ヨアヒム・ヴァイゲル第3皇子。僕の婚約者(仮)。
わかってるよ。貴族として結婚は必須。できるならテオ様のために才能も力もある貴族の女性が好ましい。母様みたいな。
テオ様の子供が跡を継いでくれるなら結婚しないけど…長子の僕が結婚しないとテオ様が結婚しないだろうしなぁ。
そういうのも貴族のマナー。テオ様は気にするもん。
はぁ。テオ様の子供は見たい。でもテオ様の奥さまは絶対見たくない。結婚式で発狂しそう。
現にテオ様と僕宛ての釣書は死ぬほど届いてテオ様の目に触れないように処理してる。まだテオ様に婚約なんて早いもん。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてカップを持ち上げたまま固まってるテオ様。
うん。ビックリするよね。僕もテオ様に昔からの婚約者がいるってい割れたらその反応するよ。
「…え…。」
「じゃあテオ兄様には?」
作らせるわけないじゃん。何言ってるの、ネヴィル。
「いないよ。テオは年頃になったら自分で決めたらいい。僕の婚約は母様と聖皇国の皇帝陛下の間で結ばれた条約みたいなのだから。相手が王になったらこの婚約はなかったことになるんだ。きっとシモンは王になるし、気にするだけ無駄だよ。」
やっと動き始めたテオ様がココアを飲みもせずに戻した。
「聖皇国が他国に人を嫁がせるなど珍しいですね。」
「シルヴェスターとの繋がりは国にとってもいいことだからね。それに、聖職者の使う魔法は特殊だからいくら聖皇国の皇子の血が入っても開花させることは難しいよ。」
「教会からの試練を乗り越えて、教皇様から許しを貰うんですよね。」
「そうだよ。そこから祈りと感謝を途絶えさせたら魔力を失うからね。聖職者も大変だ。」
僕なら無理。なんで祈らなきゃ魔力が消えるのか意味わかんないし、教皇陛下に許されたら魔力が貰えるのかも意味分からない。むしろどういう仕組みしてるのかしりたいくらい。
そういうゲームの仕組みって言われたら納得するしかないけど…理不尽だよね。
「回復魔法って便利なんだよね。聖魔法でしか扱えないし。僕も祈ったら使えるようになるかな。」
まぁ便利なものは便利。魔法薬で代わりはできるけど精度が違う。あのレベルの魔法薬を開発するのは錬金術師としての夢だよ。
「アンタが誠心誠意乗るなんて無理だろ。じゃあ俺部屋に帰る。」
酷いこと言うだけ言って僕の新しい家族は部屋に戻るらしい。
まぁ僕はテオ様といられるならネヴィルが帰ろうがいようがどっちでもいいけど。
「そう?」
「用事終わっただろ。猫かぶったらクラウス兄様からの庇護があるなら文句ない。ちゃんと護ってよ。クラウス兄様♡」
可愛くウインクしたけど…この子、猫かぶり慣れてるな。自分の顔の使い所わかってる子だ。
今まで僕らの前じゃムスッてしてけど僕らに猫かぶる必要ないって判断しただけか。
そういうところはシルヴェスターの血筋だな。
「うん。多少のわがままも許すよ。ネヴィルもちゃんとシルヴェスターに貢献してね。」
ニヤって笑って出てった面白い弟。
いいじゃん。気が強くて才能があって頭がいいだけの子だと思ってたけど面白いじゃん。
ある程度までは護衛と僕の錬金術具付きで好き勝手するの許してあげよう。ただ攻略対象とはあって欲しくないからそこは気をつけないとね。
「端々で僕らって兄弟だなぁって思うね。」
「全員どこも似てませんよ?」
「頑固で気が強いところとか。」
テオ様の呆れた視線を受けながら紅茶で喉を潤した。
シモンも攻略者のひとりだけど…ネヴィル殺されたりしないよね…。
ラージャよりネヴィルの方が心配になってきた。
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