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12歳《中等部》

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学校に行ったらシルヴェスターに擦寄る貴族たちに揉みくちゃにされた。テオ様もこんな感じだったのかなぁ。
学校に行って勉強して話すだけなのにこんなに疲れるもの?しんど。
田舎に行ってテオ様と原っぱを馬で走ってた方が疲れない。


しかも今日のメインは学校に行くことじゃない。ラージャと話をすることだ。

帰ってきてすぐにアルに連れてくるように言いつけたけど…これが終わったら少し寝よ。
はぁ。


コンコンと少し高い位置を叩かれる。アルがラージャを連れてきたんだろう。

「クラウス様。ラージャを連れてきました。」

「入れて。」

サッと必要な書類を集めてソファに座る。
ラージャは顔色が悪い。僕が腹立ててラージャの同族に一斉攻撃でも仕掛けるとでも思ってるんだろうか。できなくはないけどラージャには働いてもらわないといけないからしないよ。
ラージャの同族の国と隣接してる南の国は攻めたいらしいけど。ダメだって何回いっても手紙が届く。そんなことより僕のために香辛料を育てて欲しい。


「まぁそんな顔しないで座ってよ。アル、ココアをお願い。」


ラージャは以外に甘いものが好きなんだよね。いろんなものあげて1番反応が良かった。

静かに座るのにちゃんと視線は僕に向いてる。強気な子だね。

「ネヴィルの説得見事だったよ。仲良くもなったみたいだね。」


なんとも言えない顔。怒られると思った?責められると?
まぁそうしようかとも思ったけど意外にネヴィルの心を掴んでるんだよね。
昨日の夜遅くにネヴィルが僕の部屋に来てラージャを怒らないで欲しいって頼み込んできた。予想外のいい結果。褒めないわけがない。


「ラージャ。僕との取引覚えてる?」

「ネヴィルを命にかけても守り、ネヴィルと仲良くなること。代わりに俺達を虐げるあの国への復讐してくれる。」

うん。まぁ正解。

「うん。そうだね。ちゃんと守れてる。それで?今回のいいつけは?」

「ネヴィルを逃がさないこと。」

分かってるじゃん。分かってるのに破ったの?意味がわからないんだけど。

「そそのかす人がいたら?」

「殺せ。」

守れてないのに約束覚えてるんだ。
腹たってきたな。犬でも守れるのに。

「守れた?」

「…誘ったのはネヴィルだ。手を取ったのは向こう。言いつけには背いてない。アイツらはネヴィルを唆してない。」

言い訳よりも拙い減らず口。
僕が言いたかったのは逃がすなってことだから間違っては無い…。だから本気で怒れないんだけど、これからもこうやって好き勝手されたら困る。
僕なら許してくれるって思われても困る。
テオ様なら別だよ。なにしても許しちゃう。


「減らず口を叩ける立場なの?はぁ。まぁいいよ。ネヴィルと仲良くなった。それだけでお釣りは来る。」

ネヴィルが気軽に話せる人が近くにいる。いいことだよ。
息が詰まるところに押し込められて、慣れないことを押し付けられるなんて病んじゃうよ。
外から兄姉を呼ぶのと毎日顔合わせる人で気軽に相談できるのと天と地の差がある。

「でもね。言いつけを守れない子には躾が必要なの。犬にでもそうするでしょ?」

だから躾は大事。
好き勝手してネヴィルを危険な目に合わせたくない。そんなことしてテオ様の命の危険に繋がったら僕が僕を許せない。

それに聖皇国の第3皇子が僕の友人で手紙を出したら速攻で聖職者を派遣してくれる約束してくれた。
あの子は聖職者のトップ層にいる子なのに善意で動くことはない。案の定1ヶ月シルヴェスターの屋敷に置かせてって言う手紙付き。

今度は自分の国で何やらかしたんだか。

あの村のせいで断れないんだよねぇ。貴族として領民は助けないといけない。ままならないよ。

「昨日僕の友人から連絡が来た。聖職者の派遣をしてくれるらしい。その人たちの手助けを頼んだよ。」


「はぁ!?死ねってかよ!?」

口悪っ。
この国の言葉はアルが教えたからどこでその言葉使い覚えたんだろ。あまり外には出してないはずなんだけど。

「僕の魔法で護ってる。奴隷は僕の所有物。下手を打たなければ大丈夫だよ。それにこれくらいじゃなきゃ躾になんないでしょ。ネヴィルに感謝するんだね。」

唖然とした顔。まぁ本気で殺すつもりはない。少しくらい緊張感のある生活もいいでしょ。

はぁ。やっぱりアルの入れるお茶は美味しい。






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