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12歳《中等部》
84騎士side
しおりを挟むたまに覗きに来てはつまらなさそうに見て去ってく我らが主。気が乗った時や人懐っこい騎士が気づいて騎士の礼をした時に手を振り返す程度。それも笑ってるのにつまらなそうな目で。
そんな主が違う反応を見せるのはテオ様がいる時だけ。
その時だけ幸せそうに目を細めて見てる。それも長々とテオ様が視線に気づくまで。
そんな主が俺たちのことをどう思っているかなんて考えなくてもわかる。魔獣の餌にするためだ。
ちゃんと聞かされてる。ここに来る前に「故郷を守るために騎士にならないか?」って誘われたから。
よくよく聞けば近くの村の変な病気は全部魔獣のせいらしい。「さっさとその魔獣を殺せ。」と言えばクラウス・フォン・シルヴェスターはニコニコと「なんで?」と返してきた。
人の命をなんだと思っている。
貴族から見たら平民なんて草より価値がないんだろう。だから平民を集めて魔獣を倒そうとしてる。
それに逆らえない俺らも俺らだだがな。
そしてその日。
魔獣を倒す日。
主が負けたせいで着いてきたテオ様。ありがたいやらありがたくないやら。
主の機嫌がいいところはありがたい。ただテオ様の方が規律やらなんやらうるさい。少しでも半端なことしたら魔法が飛んでくる。主ほど威力はないとはいえ、殺す気満々だ。主の愚痴すら許されない。
なにより嫌なのが1番の魔法の使い手の主がテオ様しか見ないこと。そんなの俺らがいくら束になって魔獣にかかっても肉壁になるくらいしかできない。せめて戦力として考えてくれるなら防御魔法とか使ってくれただろうに。
作戦だって作戦じゃない。俺たちを盾にテオ様に殺させるってだけの作戦。テオ様のことしか考えてないことが丸見え。
洞窟に入る前には俺らにはかけない保護魔法をテオ様にかける。しかも神級。俺たちはなにを見せられてるんだか。
案の定戦いの場に置いても主はテオ様を守ってばかり。
気がついた時にふと魔法をかけるくらい。あとは生き返らせるためにかけるだけ。
生き帰った瞬間に目にするのはさっき殺されたラミアだ。その恐怖。「あ。死んだ。」って生き返る度に思うんだ。だから逃げ出したいのに後ろにはそのラミアより怖い我らが主。逃げ出したら生き返らせてくれない。それどころかあの面倒くさそうな目で見ながら殺してくるに違いない。それならまだラミアに殺されて生き返る方がマシだ。
必死にこっちはやってるのにテオ様が下がって主になにかを伝える。そして神妙そうに伝えるテオ様と違って主は少し微笑んで楽しそうに目を歪めた。あぁ。ろくでもないこと思いついたんだろう。
《プロテクション》
「全員下がって。血を取り込まられたらラミアはお前たちの魔法を覚えるよ。気をつけて。」
魔法と一緒にそう叫んで前に出てくる主。この人計画も何も無視して前に出るらしい。俺らに逃げろと言ってくれるのはありがたいが最後まで面倒見て欲しい。
前に出た主。俺らは魔法師の防御魔法でなんとか下がる。団長の俺は最後に回る。
怪我人から先に。そう命令した。後ろではラミアの叫び声と静かな主の魔力だけを感じる。
俺は俺の仕事を。そう念じながら指示を出し、怪我人達の隊が魔法師の前に来た時に吹き飛んだ。
後ろを見たらラミアの魔法がこっちに飛んできたらしい。主の防御魔法ならなんでもないのに魔法師の魔法は容易く吹っ飛んだ。魔法師たちは無事なようだがもう魔法は打てないだろう。カタカタと震えている。
「魔獣にバレないように戻るぞ!!」
そう命令して壁伝いに戻る。
ゆっくり。ゆっくりと確実に進んで行った。
半分くらい進んだところで主の声が洞窟に響いた。
《アクティース》
多分みんな察した。あぁ死んだ。
あの人が俺らの命を見てるわけがない。きっと必死の撤退も気づいてない。
なんにも分からないくらい洞窟の中、足元の地面が、伝っていた壁が、自分の体が崩れ去っていく世界。
主はじっとラミアだけを見てた。
俺らには視線すらよこさずに俺たちは死んだ。
次に生き返った時も主はラミアだけを見てた。
テオ様と主だけが残ったが何があったのから知らない。ただ最後にテオ様がラミアを燃やしてた。
その最後に主に殺された部隊は「主が呼んでいる。」と言ったら虫みたいに逃げてった。追いかけるなどのお達しだ。俺は逃げられない。仮にも団長。ほかの兵士を守る義務がある。何より西の家族は大事だ。逃げられない。
「逃げたいやつはさっさと逃げろ。」
そう言い残して俺はクラウス・フォン・シルヴェスターの部屋に向かう。
執事のアルフレートはなんだか少し窶れていた。
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