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12歳《中等部》
79 ○○side
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《アルフレートside》
この屋敷を守るために張られたクラウス様作成の結界。
その結界をこの屋敷の主がいない時に緩めるという決断をされた時は使用人としてではなく育ての親として殴ってやろうかと思った。この屋敷はシルヴェスターの象徴。自分の母親が眠っている場所でもある。それなのに危険に晒す?怒って当然だ。
けれどよくよく話を聞いてみれば新しく来た弟と獣人のラージャを試すためだと。
「この程度に気づけないようならネヴィルに期待はしない。ただの弟として好きなことをして生きてもらうよ。ラージャも逃げるネヴィルの兄弟を殺せないなら信用に値しない。」そう仰せられた。仕方なく頷きはしたが…外から仕掛けられたら終わりだろうに。
相変わらず突拍子もないことを思いつく主だ。
それともクラウス様にとってはこの屋敷も使用人も血の繋がった父親ですら興味はないのかもしれない。
ちゃんと仕事も終わらせ、あとから届く予定だった資料は全部自分が帰ってくるまで各領主代理の手元に置くように言われていた。
興味があるのは仕事と趣味だけか。クラウス様らしい。
研究所にしてる地下だけには厳重な結界と防御魔法という名の反撃魔法を付与されて出ていかれた。
そっと窓からクラウス様が弱くした結界の辺りを覗くとネヴィル様と雇った冒険者たちが群がっていた。
今のところはクラウス様の予測通りらしい。上手くいくといいが。
《ネヴィルside》
大丈夫。大丈夫だ。
兄ちゃんがくれた魔法具を握りしめて見送る。バレないように。いつも通りにしないと。
その時視線を感じて見上げた2階にいたアルフレートと目が合った。いつもの顔じゃなくて真顔だった。その顔にクラウス兄様の面影を見た気がして何度か瞬きをしたが、その時にはもうアルフレートはいなかった。
大丈夫。バレてない。バレたら絶対アルフレートなにかいってくる。
今日。決行の日。
屋敷の外で待機してくれてる兄ちゃんを待たせないようにしないと。急いで今まで集めてた金目のものを袋に詰めてバレないように窓から庭に出た。幻術の魔法具だってちゃんと準備した。
後ろからの気配もない。
問題がないことを確認してあの場所に歩を進める。少し遠いけど大丈夫。
孤児院にいた時の方がもっと走り回ってた。
姉ちゃんが緩めてくれた結界に触れて慎重に解いていく。教えてくれたから大丈夫。できる。
思うよりもするすると解けるクラウスの結界。姉ちゃんが「お手本通りの結界ね。やりやすいけど…気味が悪い。」と言ってた。罠かと思ったけどなにも言われない。今しかない。
結界を解ききった時向こう側に俺の名前を呼ぶ兄ちゃんと姉ちゃん達。伸ばしてくれた手を握り返そうとした時、声をかけられた。
「そこを出たら誘拐犯としてお前の兄弟を殺なきゃなんねぇ。」
その言葉に手を引っ込めてしまった。兄ちゃんたちは後ろでこっちに来いって叫んでるけど迷惑はかけられない。バレないこと前提の作戦だった。バレたら意味がない。
「まだ誰にも言ってない。結界だってただの綻びだって言える。外に出るな。」
「そんな心配してくれんなら逃がしてくれよ。」
「…俺にも家族がいる。家族を解放するためならお前だって殺せる。」
そう言ってラージャが四つん這いになった。
もしかしてコイツ…獣人か?
奴隷の獣人がそうやって逃げ出してるのを見たことがある。奴隷商のやつに殺されてたけど。
獣人なら兄ちゃんたちの体術系は意味をなさない。姉ちゃんの魔法だって詠唱する時間がかかる。勝てる気がしない。準備もきっと足りてない。
こんなの予想外だ。
戦闘態勢のラージャがため息をついて犬のように身体を震わせた。
「お前を見てると俺を見てる見てぇてやってらんねぇよ。だから逃げるな。俺はお前の家族を殺したくねぇ。」
コイツも家族を人質にされるかなんかされてるのか…。
クラウスならやりかねないだろうし。なんならここの使用人全員弱み握られてんじゃねでのかよ。
まだ俺の名前を呼んでくれてる兄ちゃん達。姉ちゃんから習った簡単な防音魔法を張る。
「なんでそこまで言ってくれんの。」
「俺の家族を助けるのにクラウスの信用が必要だからお前を使う。」
「…分かった。なら契約しよう。」
ラージャが少し眉を動かした。
「俺もお前も上手く使いあおう。」
「残るのか?」
「うん。残る。」
防音魔法を解いてずっと俺の名前を呼んでくれてる兄ちゃんと姉ちゃんに伝える。
「そっちに行けない。」
「そんなやつ俺らがどうにかしてやるから!!」
「クラウスにバレた。兄ちゃんと姉ちゃんには迷惑がかからないようにする。お願いがから逃げて。」
「ネヴィル!!」
「ごめんっ!」
魔法をかけ直す。姉ちゃんやクラウス程の技量はない。拙い結界魔法。それでも姉ちゃんは解いてくれない。見限られたかな…。
本当にごめん。
《アルフレートside》
ネヴィル様は合格。ラージャはどうだろう。アレはクラウス様の真似だ。外に出なかったネヴィル様を説得した。合格点と言えば合格点。でも、誘拐未遂犯を逃がした。クラウス様のお心次第か。
メラニーには内側から魔法具での撮影を頼んでる。私がすることはあの冒険者たちを捕らえること。
ネヴィル様に見つかって、クラウス様がネヴィル様からの信頼を無くすわけには行かないから屋敷の周りから少し逃がしたところで捕まえないとな。
…クラウス様が帰ってくるまでどこに入れておこうか。
この屋敷を守るために張られたクラウス様作成の結界。
その結界をこの屋敷の主がいない時に緩めるという決断をされた時は使用人としてではなく育ての親として殴ってやろうかと思った。この屋敷はシルヴェスターの象徴。自分の母親が眠っている場所でもある。それなのに危険に晒す?怒って当然だ。
けれどよくよく話を聞いてみれば新しく来た弟と獣人のラージャを試すためだと。
「この程度に気づけないようならネヴィルに期待はしない。ただの弟として好きなことをして生きてもらうよ。ラージャも逃げるネヴィルの兄弟を殺せないなら信用に値しない。」そう仰せられた。仕方なく頷きはしたが…外から仕掛けられたら終わりだろうに。
相変わらず突拍子もないことを思いつく主だ。
それともクラウス様にとってはこの屋敷も使用人も血の繋がった父親ですら興味はないのかもしれない。
ちゃんと仕事も終わらせ、あとから届く予定だった資料は全部自分が帰ってくるまで各領主代理の手元に置くように言われていた。
興味があるのは仕事と趣味だけか。クラウス様らしい。
研究所にしてる地下だけには厳重な結界と防御魔法という名の反撃魔法を付与されて出ていかれた。
そっと窓からクラウス様が弱くした結界の辺りを覗くとネヴィル様と雇った冒険者たちが群がっていた。
今のところはクラウス様の予測通りらしい。上手くいくといいが。
《ネヴィルside》
大丈夫。大丈夫だ。
兄ちゃんがくれた魔法具を握りしめて見送る。バレないように。いつも通りにしないと。
その時視線を感じて見上げた2階にいたアルフレートと目が合った。いつもの顔じゃなくて真顔だった。その顔にクラウス兄様の面影を見た気がして何度か瞬きをしたが、その時にはもうアルフレートはいなかった。
大丈夫。バレてない。バレたら絶対アルフレートなにかいってくる。
今日。決行の日。
屋敷の外で待機してくれてる兄ちゃんを待たせないようにしないと。急いで今まで集めてた金目のものを袋に詰めてバレないように窓から庭に出た。幻術の魔法具だってちゃんと準備した。
後ろからの気配もない。
問題がないことを確認してあの場所に歩を進める。少し遠いけど大丈夫。
孤児院にいた時の方がもっと走り回ってた。
姉ちゃんが緩めてくれた結界に触れて慎重に解いていく。教えてくれたから大丈夫。できる。
思うよりもするすると解けるクラウスの結界。姉ちゃんが「お手本通りの結界ね。やりやすいけど…気味が悪い。」と言ってた。罠かと思ったけどなにも言われない。今しかない。
結界を解ききった時向こう側に俺の名前を呼ぶ兄ちゃんと姉ちゃん達。伸ばしてくれた手を握り返そうとした時、声をかけられた。
「そこを出たら誘拐犯としてお前の兄弟を殺なきゃなんねぇ。」
その言葉に手を引っ込めてしまった。兄ちゃんたちは後ろでこっちに来いって叫んでるけど迷惑はかけられない。バレないこと前提の作戦だった。バレたら意味がない。
「まだ誰にも言ってない。結界だってただの綻びだって言える。外に出るな。」
「そんな心配してくれんなら逃がしてくれよ。」
「…俺にも家族がいる。家族を解放するためならお前だって殺せる。」
そう言ってラージャが四つん這いになった。
もしかしてコイツ…獣人か?
奴隷の獣人がそうやって逃げ出してるのを見たことがある。奴隷商のやつに殺されてたけど。
獣人なら兄ちゃんたちの体術系は意味をなさない。姉ちゃんの魔法だって詠唱する時間がかかる。勝てる気がしない。準備もきっと足りてない。
こんなの予想外だ。
戦闘態勢のラージャがため息をついて犬のように身体を震わせた。
「お前を見てると俺を見てる見てぇてやってらんねぇよ。だから逃げるな。俺はお前の家族を殺したくねぇ。」
コイツも家族を人質にされるかなんかされてるのか…。
クラウスならやりかねないだろうし。なんならここの使用人全員弱み握られてんじゃねでのかよ。
まだ俺の名前を呼んでくれてる兄ちゃん達。姉ちゃんから習った簡単な防音魔法を張る。
「なんでそこまで言ってくれんの。」
「俺の家族を助けるのにクラウスの信用が必要だからお前を使う。」
「…分かった。なら契約しよう。」
ラージャが少し眉を動かした。
「俺もお前も上手く使いあおう。」
「残るのか?」
「うん。残る。」
防音魔法を解いてずっと俺の名前を呼んでくれてる兄ちゃんと姉ちゃんに伝える。
「そっちに行けない。」
「そんなやつ俺らがどうにかしてやるから!!」
「クラウスにバレた。兄ちゃんと姉ちゃんには迷惑がかからないようにする。お願いがから逃げて。」
「ネヴィル!!」
「ごめんっ!」
魔法をかけ直す。姉ちゃんやクラウス程の技量はない。拙い結界魔法。それでも姉ちゃんは解いてくれない。見限られたかな…。
本当にごめん。
《アルフレートside》
ネヴィル様は合格。ラージャはどうだろう。アレはクラウス様の真似だ。外に出なかったネヴィル様を説得した。合格点と言えば合格点。でも、誘拐未遂犯を逃がした。クラウス様のお心次第か。
メラニーには内側から魔法具での撮影を頼んでる。私がすることはあの冒険者たちを捕らえること。
ネヴィル様に見つかって、クラウス様がネヴィル様からの信頼を無くすわけには行かないから屋敷の周りから少し逃がしたところで捕まえないとな。
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