推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

文字の大きさ
上 下
183 / 212
12歳《中等部》

79 ○○side

しおりを挟む
《アルフレートside》

この屋敷を守るために張られたクラウス様作成の結界。
その結界をこの屋敷の主がいない時に緩めるという決断をされた時は使用人としてではなく育ての親として殴ってやろうかと思った。この屋敷はシルヴェスターの象徴。自分の母親が眠っている場所でもある。それなのに危険に晒す?怒って当然だ。

けれどよくよく話を聞いてみれば新しく来た弟と獣人のラージャを試すためだと。

「この程度に気づけないようならネヴィルに期待はしない。ただの弟として好きなことをして生きてもらうよ。ラージャも逃げるネヴィルの兄弟を殺せないなら信用に値しない。」そう仰せられた。仕方なく頷きはしたが…外から仕掛けられたら終わりだろうに。


相変わらず突拍子もないことを思いつく主だ。
それともクラウス様にとってはこの屋敷も使用人も血の繋がった父親ですら興味はないのかもしれない。
ちゃんと仕事も終わらせ、あとから届く予定だった資料は全部自分が帰ってくるまで各領主代理の手元に置くように言われていた。
興味があるのは仕事と趣味だけか。クラウス様らしい。
研究所にしてる地下だけには厳重な結界と防御魔法という名の反撃魔法を付与されて出ていかれた。



そっと窓からクラウス様が弱くした結界の辺りを覗くとネヴィル様と雇った冒険者たちが群がっていた。
今のところはクラウス様の予測通りらしい。上手くいくといいが。




《ネヴィルside》

大丈夫。大丈夫だ。

兄ちゃんがくれた魔法具を握りしめて見送る。バレないように。いつも通りにしないと。

その時視線を感じて見上げた2階にいたアルフレートと目が合った。いつもの顔じゃなくて真顔だった。その顔にクラウス兄様の面影を見た気がして何度か瞬きをしたが、その時にはもうアルフレートはいなかった。

大丈夫。バレてない。バレたら絶対アルフレートなにかいってくる。






今日。決行の日。
屋敷の外で待機してくれてる兄ちゃんを待たせないようにしないと。急いで今まで集めてた金目のものを袋に詰めてバレないように窓から庭に出た。幻術の魔法具だってちゃんと準備した。

後ろからの気配もない。

問題がないことを確認してあの場所に歩を進める。少し遠いけど大丈夫。
孤児院にいた時の方がもっと走り回ってた。


姉ちゃんが緩めてくれた結界に触れて慎重に解いていく。教えてくれたから大丈夫。できる。
思うよりもするすると解けるクラウスの結界。姉ちゃんが「お手本通りの結界ね。やりやすいけど…気味が悪い。」と言ってた。罠かと思ったけどなにも言われない。今しかない。

結界を解ききった時向こう側に俺の名前を呼ぶ兄ちゃんと姉ちゃん達。伸ばしてくれた手を握り返そうとした時、声をかけられた。


「そこを出たら誘拐犯としてお前の兄弟を殺なきゃなんねぇ。」


その言葉に手を引っ込めてしまった。兄ちゃんたちは後ろでこっちに来いって叫んでるけど迷惑はかけられない。バレないこと前提の作戦だった。バレたら意味がない。


「まだ誰にも言ってない。結界だってただの綻びだって言える。外に出るな。」


「そんな心配してくれんなら逃がしてくれよ。」

「…俺にも家族がいる。家族を解放するためならお前だって殺せる。」

そう言ってラージャが四つん這いになった。

もしかしてコイツ…獣人か?
奴隷の獣人がそうやって逃げ出してるのを見たことがある。奴隷商のやつに殺されてたけど。

獣人なら兄ちゃんたちの体術系は意味をなさない。姉ちゃんの魔法だって詠唱する時間がかかる。勝てる気がしない。準備もきっと足りてない。
こんなの予想外だ。

戦闘態勢のラージャがため息をついて犬のように身体を震わせた。


「お前を見てると俺を見てる見てぇてやってらんねぇよ。だから逃げるな。俺はお前の家族を殺したくねぇ。」


コイツも家族を人質にされるかなんかされてるのか…。
クラウスならやりかねないだろうし。なんならここの使用人全員弱み握られてんじゃねでのかよ。

まだ俺の名前を呼んでくれてる兄ちゃん達。姉ちゃんから習った簡単な防音魔法を張る。

「なんでそこまで言ってくれんの。」

「俺の家族を助けるのにクラウスの信用が必要だからお前を使う。」

「…分かった。なら契約しよう。」

ラージャが少し眉を動かした。

「俺もお前も上手く使いあおう。」

「残るのか?」

「うん。残る。」

防音魔法を解いてずっと俺の名前を呼んでくれてる兄ちゃんと姉ちゃんに伝える。

「そっちに行けない。」

「そんなやつ俺らがどうにかしてやるから!!」

「クラウスにバレた。兄ちゃんと姉ちゃんには迷惑がかからないようにする。お願いがから逃げて。」

「ネヴィル!!」

「ごめんっ!」


魔法をかけ直す。姉ちゃんやクラウス程の技量はない。拙い結界魔法。それでも姉ちゃんは解いてくれない。見限られたかな…。


本当にごめん。





《アルフレートside》

ネヴィル様は合格。ラージャはどうだろう。アレはクラウス様の真似だ。外に出なかったネヴィル様を説得した。合格点と言えば合格点。でも、誘拐未遂犯を逃がした。クラウス様のお心次第か。

メラニーには内側から魔法具での撮影を頼んでる。私がすることはあの冒険者たちを捕らえること。

ネヴィル様に見つかって、クラウス様がネヴィル様からの信頼を無くすわけには行かないから屋敷の周りから少し逃がしたところで捕まえないとな。


…クラウス様が帰ってくるまでどこに入れておこうか。





しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

胸キュンシチュの相手はおれじゃないだろ?

一ノ瀬麻紀
BL
今まで好きな人どころか、女の子にも興味をしめさなかった幼馴染の東雲律 (しののめりつ)から、恋愛相談を受けた月島湊 (つきしま みなと)と弟の月島湧 (つきしまゆう) 湊が提案したのは「少女漫画みたいな胸キュンシチュで、あの子のハートをGETしちゃおう作戦!」 なのに、なぜか律は湊の前にばかり現れる。 そして湊のまわりに起こるのは、湊の提案した「胸キュンシチュエーション」 え?ちょっとまって?実践する相手、間違ってないか? 戸惑う湊に打ち明けられた真実とは……。 DKの青春BL✨️ 2万弱の短編です。よろしくお願いします。 ノベマさん、エブリスタさんにも投稿しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...