上 下
181 / 211
12歳《中等部》

77 ルディside

しおりを挟む

「殿下。シルヴェスター公爵が出かけたのことです。あと1週間は帰ってこないとの報告も上がりました。」

やっとか。
あいつ、新しい弟に合わせてくれないからな。俺から会いに行ってやんよ。
どんな性格してんだろうな。クラウスに似て生意気か?それともテオに似てクソ真面目か?

でもまぁ。あいつが勘づいて戻ってこようとしても遅いくらいの距離は稼ぎたい。そのくらいあいつの弟に興味はあるし。使えるやつなら俺の傘下に引き入れてぇし。


「じゃあ3日後だな。厨房に甘い菓子でも準備させとけ。」

「はっ!」


魔力は水しか持ってなさそうだったな。孤児だとは聞いていたが生意気なのかそれともビビって話せないか。どっちだろうな。ビビられるくらいならクラウスくらい生意気な方が好みだ。







静々と頭を下げるアルフレート。こいつ、クラウスの言うことしか聞かねぇからな。俺の事だってどう思ってんだか。絶対にクラウスより下に見てることは確実だ。

「第1皇子殿下、申し訳ございません。クラウス様は不在でございます。」

ほらな。

「三男に会いに来た。いるだろ?」

「…ネヴィル様はまだ殿下に見せられるほどのマナーを扱えません。」

「構わねぇ。今日はプライベートだ。」

使用人も含めてこの家はマナーだけは完璧だからな。
三男だけできねぇならそりゃあ目立つわ。

「クラウス様がいらっしゃる時でも「俺に出直せって言ってんのか?クラウスは俺の幼なじみで腹心だから許してんだ。お前は何様だ。アルフレート。」

「……失礼致しました。」


本当に面倒な奴らだな。表情1つ変えずに帰れと言ってくる。そこまで隠されたら知りたくなるもんだろ?

どんなやつなんだか。


アルフレートは顔を上げてやっと素直に案内してくれる。すれ違うメイドたちも俺の顔を見るなり頭を下げ端による。ほんと人まで一流とかすげぇの。



明るく、拾い部屋に通されて「直ぐにお呼び致します。」と言ってアルフレートが出ていった。その後、間を置かずに入ってお茶の準備を始めるメイドたち。紅茶を入れてるのはクラウスがアルフレートの次に自慢してくるメラニーだ。アルフレートとと並ぶくらい紅茶を入れるのが上手いらしい。

こいつのは初めてだからお手並み拝見だな。アルフレートは間違いなく美味い。

「これ、皇宮の料理人に作らせた。お茶請けに使ってくれ。」

「ありがとうございます。殿下。」

とはいえ、テオの手掛けてるチョコレートとか言う方が美味いがな。














「お待たせ致しました。第1皇子殿下。」

シルヴェスターの面影が全くない三男。
適性も水魔法だけなんだろう。

「名前は?」

「ネヴィル・フォン・シルヴェスターと申します。」

なんとか笑おうとしてんだろう。アルフレートにでも言われたか?
ヘッタクソな笑い方だな。おい。

「1人信用できる使用人を選んで座れ。」

「…ラージャ、残ってくれ。」

「はい。」


ラージャ?そんなやつクラウスから聞いたことがない。いくらクラウスでも信用してねぇやつを弟の使用人にしないだろ。
でもいくら見ても見覚えがない。珍しい銀色の髪と目。どんな魔力だよ。見たことねぇぞ。

まぁいい。今日はクラウスの弟に逢いに来たんだからな。


「クラウスとテオに虐められてねぇか?あいつら真面目で堅物だからなぁ。」

「良くしてもらっています。」

綺麗に座るし、俺が椅子を指してから座った。最低限のマナーは教えこんでんじゃねぇか。孤児だって言うからどんなもんだと思っていたが…へぇ。


「そんで?お前なにしてぇの?このまま公爵家に厄介になるつもりか?」

お。めっちゃ不機嫌になった。やっぱこいつはあいつらと比べて顔に出やすいな。

「俺になにができると言うんですか。」

「まぁ相手はクラウスとテオだ。この屋敷で言うなら逃げるのは無理だろうな。」

こいつ、逃げようとでもしてんのか?まぁクラウスもテオもいねぇ。丁度いいだろうな。
手助けしてやるか?
帰ってきたらクラウスはブチギレるだろうな。最近暇してたし丁度いいか。あいつ負けたし、久しぶりに手合わせしてもいいかもな。

「手伝ってやろうか?」

「いりません。」

「方法でもあんのか?」

「クラウス兄様の友人で貴族の王である貴方を信用するわけがないだ……です。」

「あっそう。じゃあいいわ。頑張れよ~。クラウスは怖ぇぞ。」


言わねぇけど、下手したらこいつごと消されるだろうな。闇魔法も持ってねぇ。テオって言う優秀なスペアだっている。こいつがいていいことなんてない。

嫁ぎ先決めるのも面倒だし。特に家同期の絆なんてシルヴェスターには関係ない。闇魔法持ってないなら駒としての意味もねぇ。
クラウスにとってシルヴェスターにとって生かす意味がない。

俺は優しいから本人には言わねぇけどな。

「お前は殺されねぇだろうが…。手助けしたやつは殺されるだろうな。」

「うるせぇ。でも今アイツらはいねぇ。やるなら今だ。」

「アイツらの腹心はいるけどな。」

「じゃあいつやれって言うんですか。」

「だから俺が助けてやろうかって聞いてんだろ?」

「いらねぇ。」


ふぅん。面白ぇの。
安易に強者に助けを求めないのも。自分を過信してるところも。

クラウスは自分の実力を理解してあの態度だか…。こいつはただの過信。

失敗した時が見ものだな。


「今日は面白かった。また会おうぜ。面白けりゃいつでも手を貸してやるよ。じゃあな。クラウスによろしく言っといてくれ。」

やっぱりアイツらの弟だ。頭は悪くないらしいな。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました。 おまけのお話を更新したりします。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

処理中です...