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12歳《中等部》
76 テオside
しおりを挟む兄上が真っ黒な空間から美しい刀身の剣を引っ張り出した。色んな紋様のようなものが付与されている。俺のもあるがそれよりもっと多い。
ラミアからの蛇のしっぽの攻撃を背面飛びで避けてしっぽを伝ってラミアの体部分まで走る。そしてなにか剣を光らせて首ではなく心臓のある部分を貫く。
ラミアの致命傷ではなかったのか、そのままラミアが魔法を展開する。
《グレーター・プロテクション》
兄上が防御魔法を張ったおかげでラミアの周りだけで魔法は暴発した。殺した?
いや。ラミアは無傷。兄上の戦い方を覚えたのか?
ラミアのしっぽが蠢いて兄上に叩きつけられそうになる。兄上は影魔法で避けてしっぽを切り裂いた。直ぐに回復する。
このラミア…どこかで聖職者を喰ったのか?
兄上も気づいたのか輪切りのようにできるだけ多く切り飛ばして、ぶつ切られた部位を視認できないほどに風魔法で切り刻んでいく。聖職者でも断たれた部位がなければくっつかない。生やすができるのは刻魔法だけだ。
これでラミアが増えたら目も当てられないな。さすがに皇族を食ったということはないと思いたい…いや皇族がいなくなったら大事だ。ないはずだ。
足場をなくしたラミアが地面に倒れた。
今だ。集中しろ。兄上が俺に託してくれる。自力で剣技を出せるようにしろ。この場を逃したら兄上に信頼されなくなってしまう。
内臓から魔力が雑巾のように絞り出される感覚。ここまではできる。ここからだ。
兄上が信用してくれている。今できなければいつやっても同じだ。
兄上がラミアの前に立って魔力を貯め始めた。一時的な拘束魔法も使っているんだろう。
俺の魔力まで兄上の闇魔法に反応して引き寄せられる。精巧で精密な魔法を撃つものだ。本当に尊敬する。あの日、俺は試合には勝った。兄上の首を落とした。それでも師範たちにどうだったか聞けば皆口を揃えてこう言った。
《クラウス様の勝ちでした。》
どう見ても兄上の勝ち。それでも俺が勝てたのは兄上が優しかったから。それだけだ。
本当の意味で俺は兄上に勝てたわけじゃない。
《アクティース》
兄上の精錬な声が洞窟に響きわたる。俺もそれに合わせて走り始めた。
バチバチと兄上のまわりの地面や壁といった兄上以外の全てが消えていく。俺は同じ闇魔法で防ぐごとと兄上の神級の防御魔法のおかげで守られてる。ここでも兄上に守られるんだ。立つ瀬がない。
ラミアの体に張られた防御魔法が1枚1枚と砕け散る。叫び声とも何かの言語とも聞こえる音がラミアから発せられる。
兄上は役目を終えたかのように俺とすれ違うように下がった。
内臓が絞られるような痛みと共に剣を振るう。
兄上に信用してもらうために。
兄上に信頼してもらうために。
兄上の役に立つと認めてもらうために。
兄上の横に並んでもいいと言ってもらうために。
兄上に愛されるために。
剣を降るう。
綺麗な黄金が剣を纏っている。剣技が俺の思いどおりに発動できた証拠だ。
あんなに苦戦したのにケーキでも切るように首を切れた。これも全部兄上のおかげだ。
気が抜けてへたりこんらでしまった俺。その肩を叩かれてやっと勝ったと実感が湧いた。
「テオ、よくやった。さすが僕の弟だ。」
ニコニコといつも通りに微笑む兄上。少し煤けているが美しさは微塵も損なわれていない。
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