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12歳《中等部》

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やっっっと着いた~!!

いくらおしりが痛くないようにしても関節は固まるし、どこ見ても森だし。飽きるものは飽きる。僕もテオ様もペラペラ話すタイプでもないし。テオ様見てたら2日終わったってかんじ。


「…兄上、ここの空気は魔力が濃いですね。」

「そうだね。まずはこの空気に慣れなきゃね。」

息吸うのすら大変なんだけど。ここの村人よく生きてるな。生まれてからこんな感じなら慣れちゃうのかな。

「北の領民は魔獣の魔力に数百年かけて徐々に慣れていったと言うけれど…。ここって僕の知る限り10数年でコレなんだよね。そりゃあ不調も出るよ。」


しかも北の領民はここで育った作物食べても不調を出さない。すっごいよね。行ってみたいとは思ってたけど…土地にたった瞬間倒れたりしないかな。

「魔法で対処できれば良いのですが…。聖魔法くらいですか。」

「そうだね。上級水魔法になるけど…ここまで来たら意味ないな。聖職者の友人はいるけどあの子対価ないと来てくれなさそうだしなぁ。」

「魔獣を倒したあとが厄介ですね。」

全くだよ。命の心配より後始末の方が気にかかる。僕が死ねば全部テオ様がやるんでしょ?ダメだよ。そんなの。テオ様の自由な時間が無くなっちゃう。かと言って父様に任せたら今より酷くなるのは明白だ。
僕が生き残って後始末するのが最善。ただこんな面倒なことしたくない。でもテオ様のためならしなきゃいけない。

「ジレンマだよね。」

うん?という顔で首を傾げるテオ様。
なんにもわかってなさそう。可愛いな。


「とにかく今日は休もうか。僕は少し見回りしてくるからテオは休んでな。」

「俺も行きます!」

「そう?じゃあお散歩がてらお話しようか。」

なんて可愛いんだろう。こんな何も無い田舎。空気も悪い。それなのに着いてきてくれるテオ様。
推しがいい子すぎて泣きそう。





「クラウス様。明日の作戦の最終確認をよろしいでしょうか。」

テオ様とゆっくりしてたのに…むぅ。空気読めない子だね。

「作戦という程でもないけどね。」

テオ様の前だから微笑んでテオ様から1番離れた椅子を勧める。この子は座らなかったけど。座っていいのにね。


「相手が分からなければ対策のたてようもありません。」

「とにかく僕が魔法でサポートする。死んでも死ねると思わないでね。あとはテオは常に前線。君らは代わりばんこで下がって毒消しと回復薬をがぶ飲みしながらテオの補助。で、魔獣の首落として勝利。」

「相変わらずどこの原始時代の民族かと思うほど力任せですね。」

僕もそう思う。
魔法でゴリ押し。僕の魔力が切れたら終わり。それまでは人海戦術。死ぬまで魔獣に向かってもらう。それが今の作戦。ほんと野蛮だよね。


「それしかないしね。テオがいなきゃ両方とも僕の予定だしだいぶ楽になったよ。魔法も複数の魔法使うから味方にも当たるかも。すぐに生き返らせるからそこは安心してね。」

「故郷のためです。皆わかっていますから、ご安心ください。」


「まぁ頑張ろうね。」

死んでも死ねないか。
辛いだろうなぁ。僕が死んだら終わりだから僕は死ねないけど。みんな大変だ。テオ様に殺された時は一瞬で痛いとか怖いとかなかった。「あ。死んだな。」って感じ。

「最終無理ってなったらみんなを見捨てて僕も前線に出る。その時は死ぬこと覚悟してね。」

「…はい。」


いい子。物分りのいい子は好きだよ。

小さな返事だけを残して去っていった私兵団団長の足音と魔力が消えた時にテオに話しかける。


「テオ、剣技を思い通りに使えるようになった?」

「申し訳ありません。兄上。感情や集中力が高まった時にはできるのですが、一瞬で終わってしまいます。」

「そう。一撃は出せるくらい?」

「はい。」

ならいいか。

「ならその一撃にかけるしかないね。テオ、できるだけ1箇所を攻撃して。僕はそれに合わせるよ。」

「どんな魔獣なんでしょうか。案外毒を吐く小さい魔獣だったりして。」

…有り得る。
なんでそんなことに気づかなかったんだろ。強大な魔獣とばかり信じ込んでた。 


「それいいね。魔法で一網打尽だよ。確かにね。ずっとドラゴンみたいなのを想像してたけど…案外耐久力はなかったりしてね。」

真顔になってたからか心配そうにテオ様が覗き込んでくる。

「やはり有り得ませんか?」

「いや。有り得るよ。ドラゴンみたいな大物がいるよりも有り得る。」

なんで気が付かなかったんだろ。
ゲームの記憶に頼りすぎた?僕の悪い所だな。
こういう時に頭が固い。咄嗟の判断ができないどころか念頭にすら上がってなかった。

テオ様がいてくれてよかった。

そうだよね。

耐久力も攻撃力も高いドラゴンに加えて毒付与できるタイプみたいなのがホイホイいたら困るよね。さすがにゲームのクラウスとテオ様でも勝てないよ。

確かこの時にテオ様が剣技を覚えたんだよね。それで、クラウスは剣術の大会には出なくなった。

なら剣技をもう扱えるテオ様がいるなら大丈夫?

いや。ダメだな。
やっぱりゲームを元に考えちゃう。
もっと事実と希望を切り替えないと。わかってることは少ないんだから用心に越したことはない。



切り替えてこ。

でもゲームでは被害が大きかったって言ってたから私兵たちは死ぬかもな。
対策をもう少し考えないといけないね。







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